OPECプラス、12月も現状維持(日量40万バレルの協調減産縮小)を決定

~OPECプラス内では慎重論が台頭の模様、需給ひっ迫懸念から国際原油価格は一段高の可能性も~

西濵 徹

要旨
  • 足下の世界経済は先進国を中心に回復が続く一方、新興国に下押し圧力が掛かるなかで全体的に頭打ちの様相を強める動きがみられる。他方、新型コロナウイルスの感染動向は当面の最悪期を過ぎつつある。こうしたなか、国際金融市場では米FRBのテーパリング実施も引き続き「カネ余り」の状況が続き、OPECプラスの慎重姿勢による需給ひっ迫懸念を反映して国際原油価格は一段と上昇の動きを強める展開が続いた。
  • OPECプラス内では国際原油価格の上昇を背景に意見対立が表面化したが、8月以降の相場調整を受けて9月以降は結束が固まる動きがみられた。10月会合でも米バイデン政権による増産要求圧力にも拘らず慎重姿勢が維持され、4日の閣僚級会合でも月ごとの40万バレルの協調減産縮小(増産)の従来姿勢の維持を決定した。感染再拡大リスクへの意識に加え、過去の原油価格の上昇局面における米国でのシェール・オイルを巡る動き、世界的な化石燃料関連投資の先細り懸念を警戒しているとみられる。足下の原油市況は頭打ちしているものの、需給ひっ迫が見込まれるなかで一段の上値を追う可能性がある一方、世界的なインフレ懸念など景気に冷や水を浴びせる懸念もあり、外部環境に左右されやすい展開が続くであろう。

足下の世界経済を巡っては、欧米など主要国がワクチン接種を追い風に経済活動の正常化が進むとともに、感染力の強い変異株による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大の中心地となったアジア新興国でも感染動向が頭打ちして経済活動の再開に舵が切られるなど景気回復を促す動きがみられる一方、世界経済のけん引役となってきた中国景気が『政策の失敗』を理由に踊り場状態となるなど不透明感がくすぶる(注1)。年明け直後にかけての世界経済は先進国を中心とする企業マインドの改善の動きがけん引してきたものの、足下では一転して頭打ちするなど勢いに陰りがみられる動きが出ているほか、新興国の企業マインドも緩やかに頭打ちの動きを強めており、全般的に世界経済の回復に下押し圧力が掛かる動きがみられる。他方、昨年来の世界経済にとって最大のリスク要因となってきた新型コロナウイルスの感染動向については、8月末にかけて新規感染者数が再拡大したほか、感染拡大の中心地となったアジア新興国を中心に行動制限が再強化される動きが広がり、足下の世界経済に下押し圧力が強まる一因になってきた。しかし、足下においては新規感染者数が頭打ちしているほか、感染動向の改善も追い風に死亡者数の拡大ペースも鈍化するなど、直近における感染動向の最悪期は過ぎていると捉えられる。こうしたなか、昨年来の国際金融市場は全世界的な金融緩和を追い風に『カネ余り』の様相を強めてきたが、新興国を中心に金融引き締めの動きが広がりをみせている上、米FRB(連邦準備制度理事会)も量的緩和政策の縮小を決定しており、新型コロナ禍を理由にした緩和政策からの正常化に向けた動きは着実に前進している。ただし、米FRBは量的緩和政策の規模は縮小しているものの、依然としてバランスシート規模の拡大は続くなど引き締め政策に転じている訳ではないほか、他の先進国中銀は引き続き量的緩和政策を維持するなどカネ余りの状況が変化する状況とはなっていない。こうしたことを受けて、世界経済は引き続き緩やかな回復を続けることで世界的な原油需要の拡大が期待される一方、OPEC(石油輸出国機構)加盟国とロシアなど一部の非OPEC加盟国の枠組(OPECプラス)が昨年来実施している協調減産を巡っては、10月の閣僚会合において今月も月ごとに日量40万バレルの協調減産縮小(増産)という慎重姿勢を維持したため(注2)、需給ひっ迫が意識される形で足下の国際原油価格は上昇傾向を強めてきた。

図表
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なお、年明け以降のOPECプラスの枠内においては、世界経済の回復による需要増を反映して国際原油価格が底入れしたことを受けて、協調減産の継続に伴う逸失利益を理由に増産を求める動きがみられるなど意見対立が表面化し、7月の閣僚級会合は一旦中止されるなど枠組の破たんが意識される動きがみられた(注3)。その後は増産を主張したUAE(アラブ首長国連邦)が譲歩したことで早期に枠組の修復が図られたものの(注4)、新型コロナウイルスの感染再拡大により世界経済を巡る不透明感が高まったことを受けて国際原油価格に下押し圧力が掛かり、増産を主張していたUAEの財政均衡水準を一時下回る事態となったことを受けて、9月の閣僚級会合においては慎重姿勢を維持することで枠内の結束が固まる動きがみられた(注5)。さらに、上述のように10月の閣僚級会合においても慎重姿勢が維持されたことでその後の国際原油価格は一段と上値を追うとともに、先月末にはWTIが一時1バレル=85.41ドルと7年ぶりの高水準となる動きをみせたため、米バイデン政権はOPECプラスの中心的存在であるサウジアラビアに対して増産を要請するなどの動きを強めてきた。しかし、4日に開催されたOPECプラスの閣僚級会合では、12月についても7月会合で合意された月ごとの日量40万バレルの協調減産縮小(増産)という方針を維持することが決定されるとともに、会合後に公表された声明文でも「生産調整計画を再確認した」と示された。なお、上述のように足下では世界的な新型コロナウイルスの感染動向は改善に向かう動きがみられるものの、OPECプラスの一角であるロシアでは感染拡大が続いているほか(注6)、欧米など主要国において変異株による感染再拡大リスクがくすぶるなかで今後の再拡大を警戒して大幅増産に対して消極的になっている模様である。さらに、過去の国際原油価格の上昇局面においては米国でシェール・オイルの増産の動きが加速してOPECプラスによる協調減産の効果が相殺される動きがみられたことから、米バイデン政権はシェール・オイルに後ろ向きの姿勢をみせているものの、その『圧力』が影響しにくくなっているとみられる。また、先月末から英グラスゴーで開催中のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会合)においては、石炭火力発電の廃止が議決されるなど化石燃料に対する圧力が強まるなか、将来的な原油及び天然ガス関連投資の先細りが懸念されており、産油国の立場から増産による短期的利益を追い求めることへの慎重姿勢が強まっている可能性も考えられる。なお、足下の国際原油価格はサウジアラビアによる増産観測をきっかけに調整する動きをみせているものの、閣僚級会合において従来の慎重姿勢の維持が決定されたほか、感染動向の改善が進むなかで世界経済の緩やかな回復が期待されるなど需給のひっ迫が意識されやすい環境は続いており、当面は一段の上値を試す可能性も考えられる。ただし、このところの国際原油価格の急上昇により世界的にインフレ圧力が強まるなど景気回復の動きに冷や水を浴びせる懸念もくすぶるなか、当面の国際原油価格は引き続き感染動向や世界経済の行方、国際金融市場を巡る環境などに左右されやすい状況が続くと予想される。

図表
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以 上

西濵 徹

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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