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2024.02.13
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メキシコ中銀、金利維持もガイダンス修正で先行きの利下げに含み
~景気の頭打ちが意識されるなかで中銀の意識に変化、ペソ相場を取り巻く環境が変化する可能性も~
西濵 徹
- 要旨
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- メキシコ中銀は8日の定例会合で政策金利を7会合連続で11.25%に据え置いた。昨年の同国ではインフレが鈍化したため、同行は将来的な利下げの布石を打つ動きをみせる一方で慎重姿勢を維持してきた。足下では食料品など生活必需品を中心とするインフレ再燃の動きがみられるが、中銀はフォワードガイダンスを修正して先行きの利下げに含みを持たせる姿勢をみせた。この背景には、足下の景気が頭打ちの様相を強めるなかで中銀が景気に配慮せざるを得なくなっていることが考えられる。ペソ相場はインフレ鈍化による実質金利のプラス幅拡大などを追い風に堅調な動きをみせてきたが、先行きは大統領選に向けた政局の動き、米大統領選を巡る状況などでペソ相場を巡る環境が変化する可能性に注意が必要である。
メキシコ中銀は8日に開催した定例会合で政策金利を7会合連続で11.25%に据え置く決定を行っている。昨年以降の中南米諸国においては、インフレ鈍化を理由に利下げに動く流れが広がりをみせる一方、同行は政策金利を据え置く姿勢を維持する対照的な動きをみせている。なお、同国においても一昨年末を境にインフレは鈍化傾向を強めており、中銀は昨年末にかけて将来的な利下げに向けた『布石』を打つ動きをみせるなど態度を軟化させる兆候をみせた(注1)。しかし、その後も中銀は政策金利を据え置いた上で、先行きの政策運営に関するフォワードガイダンスを巡って『しばらくの間』政策金利を現状水準に維持する必要性を示すなど、慎重姿勢を窺わせる動きをみせた(注2)。事実、足下のインフレ率は前年に鈍化の動きを強めた反動で底打ちに転じており、エルニーニョ現象をはじめとする異常気象が頻発していることを理由に食料品をはじめとする生活必需品を中心にインフレの動きが再燃するなど、インフレ収束は道半ばの状況にある。こうした状況ながら、中銀は政策金利を据え置いた上で、会合後に公表した声明文では足下のインフレが反転していることに関連して「インフレ見通しは短期的に若干上方修正されたが、来年半ばまでに目標域に収束すると見込まれる」との見通しを示した上で、先行きの政策運営に関するフォワードガイダンスについて「インフレを目標域に持続的に収束させるべく、政策金利を現行水準に維持する」として、前回会合において示した『しばらくの間』との文言を削除するなど先行きの政策の方向性を修正する考えを示している。その上で、「次回以降の会合においては入手可能な情報に応じて政策金利の調整の可能性を検討する」として利下げを選択肢に入れる可能性に含みを持たせる考えをみせている。なお、同国経済は財輸出の約8割、GDPの約4%に相当する移民送金を米国が占めるなど米国経済への依存度が極めて高いなか、物価高と金利高の共存状態が長期化するなど景気の足を引っ張る材料にも拘らず、米国経済の堅調さに加え、米中摩擦やデリスキング(リスク低減)を目的とするサプライチェーンの見直し、ニアショアリングを反映した対内直接投資の活発化も景気を下支えしてきた。しかし、昨年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率+0.33%とプラス成長を維持するも、足下の景気は頭打ちが意識される動きをみせており、これまで中銀は積極的に物価抑制に注力する姿勢をみせてきたものの、いよいよ景気に配慮せざるを得なくなっている可能性がある。こうした状況を勘案すれば、メキシコ中銀も周辺国同様にインフレ鈍化を受けて利下げに舵を切る可能性が高まっていると判断出来る。昨年来の通貨ペソ相場を巡っては、インフレ鈍化にも拘らず中銀が政策金利を維持するなど慎重な政策運営を堅持し続けてきたことを受けて、実質金利(政策金利-インフレ)のプラス幅が拡大するなど投資妙味が向上していることを反映して堅調な推移をみせる一方、ペソ高による輸出競争力の低下やペソ建で換算した移民送金の目減りを警戒した当局が為替ヘッジプログラムの段階的縮小を公表するなどの動きをみせた。その後も比較的堅調な推移をみせている一方、先行きの利下げが意識されることで上値が抑えられる可能性があるとともに、大統領選に向けた政局の動きのほか(注3)、隣国の米大統領選の行方も同様にペソ相場の行方に影響を与える可能性はくすぶる。その意味では、当面は同国経済を巡る動きに加え、ペソ相場を取り巻く環境に大きな変化が生じ得ることに留意する必要があると捉えられる。
注1 2023年11月13日付レポート「メキシコ中銀、5回連続で金利据え置きも、将来的な利下げの「布石」か」
注2 1月16日付レポート「メキシコ中銀は6会合連続で金利据え置き、利下げには依然慎重姿勢」
注3 2月7日付レポート「メキシコ大統領が改憲案提出、選挙への「追い風」にしたいとの思惑か」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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