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2023.07.04
新興国経済
原油
ロシア経済
産油国経済
国際的課題・国際問題
サウジとロシアは自主減産により「同じ夢」をみることが出来るか
~8月はOPECプラス全体で日量約518万バレル減産予定も、価格は方向感の乏しい展開が続くか~
西濵 徹
- 要旨
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世界経済の減速が意識されて国際原油価格は頭打ちするなか、昨年末以降に主要産油国の枠組であるOPECプラスは価格維持を目的に協調減産に動くとともに、サウジとロシアは追加的に自主減産に動いてきた。一連の取り組みにより今月はOPECプラス全体で日量約466万バレルの減産が実施されるため、北半球が夏場の需要拡大が見込まれるなかで価格が押し上げられると期待されたが、現実には世界経済の減速懸念を受けて上値の重い展開が続く。こうしたなか、サウジは7月限定とした日量100万バレルの自主減産を8月末まで1ヶ月延長し、ロシアも8月限定で日量50万バレルの自主減産に動くことを明らかにした。両国は原油価格の低迷が財政悪化に直結するなかで価格下支えに向けた姿勢を一段と強化した格好である。これにより、8月にはOPECプラス全体で日量約518万バレルの減産が実施される見通しだが、先進国景気は頭打ちの様相を強めるなかで当面の原油価格は方向感の乏しい展開が続くと見込まれる。
世界経済を巡っては、コロナ禍からの景気回復をけん引した欧米など主要国が物価高と金利高の共存が長期化するなかで頭打ちの様相を強めるとともに、ゼロコロナ終了による景気回復が期待された中国も息切れの様相を強めており、全体的に減速が懸念される状況にある。他方、昨年来の国際原油価格はウクライナ情勢の悪化により供給懸念が高まる一方、コロナ禍からの世界経済の回復を受けた需要拡大を受けた需給ひっ迫が意識されて一時的に大きく上振れしたものの、その後は世界経済の減速懸念が高まるなかで一転して頭打ちの動きを強めた。こうした事態を受けて、主要産油国の枠組であるOPECプラスは昨年11月から世界需要の2%に相当する日量200万バレル規模の協調減産に動く方針を決定するなど、原油価格の安定を図る動きをみせた(注1)。こうした対応にも拘らず、世界経済の減速懸念が一段と強まるなかで国際原油価格は頭打ちする展開が続いたため、OPEC内で最も産油量が多いサウジアラビアが今年5月から年末まで日量50万バレルの自主減産に動くとともに、OPECプラス全体としても日量約116万バレルの自主減産に動くことを決定した。さらに、OPECプラスのなかではロシアが今年3月から日量50万バレル規模の自主減産に動いており、OPECプラスの決定に伴い世界需要の3.7%に相当する日量約366万バレル規模の減産が行われた格好となる(注2)。しかし、その後も主要産油国の意図に反して国際原油価格は頭打ちの様相を強めており、サウジアラビアなど一部の産油国にとって財政均衡水準を下回る推移が続いたため、先月開催されたOPECプラスの閣僚級会合では現状の協調減産の枠組を来年末まで1年延長するとともに、サウジアラビアは7月限定で追加的に日量100万バレルの自主減産を行うなど、価格下支えに向けて一段と供給を抑制する方針を決定した(注3)。さらに、サウジアラビアなどが5月から実施している自主減産(日量約116万バレル)とロシアが3月から実施している日量50万バレル相当の自主減産も来年末まで継続するとされた。一連の決定に伴い、今月に限ればOPECプラス全体で世界需要の約4.5%に相当する日量約466万バレルが減産されることとなり、北半球における夏場の需要拡大が見込まれるなかで需給のひっ迫感が急速に強まることが懸念された。とはいえ、現実には産油国の意図に反して国際原油価格は中国経済の息切れが意識されるなど需要回復が期待しにくい状況が続くなかで上値の重い展開が続いている。こうしたことから、サウジアラビアは今月限定で実施した日量100万バレルの自主減産を来月末まで1ヶ月延長する方針を明らかにするとともに、原油相場の動向如何では8月以降も延長される可能性に言及するなど、財政均衡水準(1バレル=80.7ドル)を大きく下回る推移が続くなかで価格下支えに向けた姿勢を一段と強める考えを明らかにしている。さらに、サウジアラビアによる発表の直後にはロシアも8月限定で追加的に日量50万バレルの自主減産を実施するとして、国際原油価格の低迷に加えて、欧米などによるロシア産原油への価格上限設定も重なりロシア産原油の上値が抑えられるなかで一段の減産に動く方針を明らかにしている。そして、両国以外にもアルジェリアが来月限定で日量2万バレル規模の追加減産を実施する方針を発表しており、今年4月に決定した日量4.8万バレルの協調減産に上乗せされる格好となる。これにより来月はOPECプラス全体で世界需要の5%強に及ぶ日量約518万バレルが減産されるなど需給ひっ迫に繋がり得る一方、足下の世界経済は先進国を中心に頭打ちの動きを一段と強めるなど需要が弱含む懸念もくすぶるなか、当面の原油価格は方向感の乏しい展開が続くと見込まれる。


注1 2022年10月6日付レポート「OPECプラス、2022年11月からは日量200万バレルの協調減産を決定」
注2 4月3日付レポート「OPECプラスが予想外の追加減産決定、価格下支えの動きを強める」
注3 6月5日付レポート「OPECプラス、2024年末まで1年間の協調減産の枠組維持を決定」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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