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2022.05.06
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OPECプラス、2022年6月も小幅増産維持で欧米と距離を置く姿勢
~米上院はNOPEC法案を可決、圧力を強める一方で米国への不信感が高まる可能性に要注意~
西濵 徹
- 要旨
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- 国際金融市場では、世界経済の回復が続くなかでウクライナ情勢の悪化による欧米諸国などの対ロ制裁強化も影響して国際商品市況は上振れしている。他方、OPECプラスは協調減産の小幅縮小を続けており、需給ひっ迫が意識されるなか、米国は増産に向けた圧力を強めるも「のれんに腕押し」の展開が続いている。足下では中国の景気減速懸念のほか、主要国中銀のタカ派傾斜が世界経済に冷や水を浴びせる懸念がくすぶる一方、OPEC加盟国は合意を順守出来ない展開が続くなど供給不足も続く。こうしたなか、OPECプラスは5日の閣僚級会合で6月も日量43.2万バレルの協調減産縮小という現状維持を決定した。欧米と距離を置く姿勢を維持し、ロシアとの対立回避が影響したとみられる。他方、米国では上院がNOPEC法案を可決しており、仮に成立すればOPECへの圧力を強めると見込まれる一方、中東の対米不信感が増幅する可能性もある。当面の原油価格は上下双方の材料が交錯するなかでこう着した展開が続くと予想される。
このところの国際金融市場においては、欧米など主要国を中心とする世界経済の回復を追い風に需要の底入れが続いている上、ウクライナ情勢の悪化を受けて欧米諸国などはロシアに対する経済制裁を一段と強化しており、供給不安を警戒する形で原油をはじめとする国際商品市況の上振れを招いている。こうした状況の一方、一昨年来のコロナ禍に際してロシアを含む主要産油国(OPECプラス)は過去最大規模の協調減産を実施した後、昨年からは減産幅の段階的縮小に動いてきたものの、需給ひっ迫が意識されるなかでも段階的縮小を維持してきた。なお、米国をはじめとする原油の主要消費国は戦略原油備蓄の放出に動いたほか、米国はOPECプラスの一員であるサウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)に対して増産を求めるなど圧力を強める動きをみせてきた。しかし、両国の増産余力は乏しいことに加え、仮に増産投資に応じた場合にも『無駄撃ち』となるリスクを警戒する向きがくすぶる上、ここ数年は中東諸国の間に米国に対する不信感が高まっているほか、OPECプラス自体が全会一致を前提としていることも影響して『のれんに腕押し』の状況が続いてきた(注1)。他方、足下においては中国当局が拘泥するゼロ・コロナ戦略の影響で中国景気の減速懸念が意識されているほか(注2)、幅広い国際商品市況の上振れを受けて米FRB(連邦準備制度理事会)など主要国中銀が軒並みタカ派傾斜を強めるなか、底入れが続く景気に冷や水を浴びせる懸念も高まっている。このように需給双方の材料が影響する形で国際原油価格は一進一退の動きをみせているものの、足下ではEU(欧州連合)がロシア産原油の輸入禁止に動くなどロシア経済との切り離しの動きを強めていることも影響して引き続き高止まりしている。さらに、4月のOPEC(石油輸出国機構)加盟国による産油量はサウジアラビアなど主要国が増産させる一方、リビアやナイジェリアなどの生産低迷を受けて全体としてOPECプラスで合意した増産幅に達しない状況が続いている。こうしたなか、5日にOPECプラスは6月の協調減産枠について協議する閣僚級会合を開催し、日量43.2万バレルの協調減産縮小とする今月の縮小枠を維持するなど(注3)、引き続き小幅なものに留める決定を行った。会合後に公表された声明文では、足下の国際原油価格の動きについて「市場のファンダメンタルズについては均衡が示唆される」とする一方、「地政学的な要因やコロナ禍が影響を与えることに留意した」とするなど、引き続きウクライナ情勢の悪化に伴う供給減少懸念に距離を置く姿勢を示している。さらに、報道によると閣僚級会合は15分足らずと過去最短で終了するなど、欧米諸国などによるロシアに対する経済制裁などについてはまったく議論が行われなかった模様であり、ロシアとの対立を避けたいとの思惑も影響していると考えられる。他方、米国では議会上院においてNOPEC(石油生産輸出カルテル禁止)法案の審議が行われ、5日に賛成多数で可決されており、仮に同法が成立すれば米司法長官がOPECやその加盟国を連邦裁判所に提訴することが可能となるほか、OPECプラスに加わるロシアなども提訴対象とすることが可能となる。米国はあらゆる手段を通じてOPECプラスに対する圧力を強めることも予想される一方、そうなればOPECプラスの国々が態度を硬化させる可能性が高まるほか、中東諸国で広がる米国への不信感が大きく増幅されるリスクもはらんでいる。当面の国際原油価格は上下双方に影響を与える材料が交錯するなかで、引き続き一喜一憂する展開によりこう着状態が続く可能性が高いと予想される。

注1 3月14日付レポート「OPECプラスは米国の増産要請に応えるだろうか」
注2 5月2日付レポート「中国当局はゼロ・コロナで経済を「生け贄」に何を得るのか」
注3 4月1日付レポート「OPECプラスは欧米諸国などと距離を置く姿勢を一段と明確に」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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