インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

堅調な動きをみせる豪ドル相場の背景とは

~RBAのタカ派傾斜、労働市場の堅調さ確認、ハト派に傾くRBNZとの違いも影響している~

西濵 徹

要旨
  • 足元の金融市場では豪ドル相場が堅調な動きをみせる。RBA(オーストラリア準備銀行)は2月会合で利上げを決定し、今後も追加利上げを排除しない姿勢を示した。議事要旨でも、物価目標達成への懸念や引き締め不足によるインフレ持続リスクを強調するなど、総じて「タカ派」姿勢を示したことが後押ししている。

  • 1月の失業率は4.1%と低水準を維持し、正規雇用が全体を下支えする動きが確認された。幅広い地域で雇用改善の動きが続いており、労働参加率も高止まりしたほか、労働時間も伸びるなど労働需給のひっ迫が意識される動きがみられる。RBAによる追加利上げ観測の強まりも豪ドルの支援材料となっている。

  • 豪ドルとNZドルはオセアニア通貨と一括りにされる傾向があるが、利上げに慎重なニュージーランド(RBNZ)との政策スタンスの差も、相対的に豪ドルが買われやすい背景にある。対米ドルでは金利差が、対円ではドル円相場の影響を受けるものの、当面はRBAのタカ派姿勢により堅調な推移が見込まれる。

このところの金融市場においては、豪ドル相場が堅調な動きをみせている。オーストラリア準備銀行(RBA)が、2月3日に開催した定例会合において全会一致で利上げを決定したことに加え、先行きの政策運営を巡って追加利上げを排除しない姿勢を示したことがある(注1)。RBAのブロック総裁も、会合後に開催した記者会見において、政策運営の方向性に対する明言を避ける一方、物価の高止まりに対する強い警戒感を示したうえで、データを重視する考えを示した。その後に公表された議事要旨でも、「政策対応なしでは物価が過度に長期にわたって目標を持続的に上回るとの懸念が強まったとの見解で一致した」として、物価に対するリスクの高まりを警戒している様子がうかがえた。一方、先行きの政策運営について「不確実性を理由に、政策金利の特定の経路について高い確信を持つことは不可能との見方で一致した」として、現時点において方向感を示すことは避けた。とはいえ、物価動向について「加速の一部は一時的要因による可能性は高いが、加速そのものが広範に起こるなかで引き締めを行わなければ持続化する可能性がある」との見解を示すなど、タカ派姿勢に傾いていることは間違いない。その上、労働市場が堅調な動きをみせていることを受けて「労働市場に対する下振れリスクは後退している」との見方を示すなど、雇用環境の動向に注意する必要性が高まっている。

図表
図表

こうしたなか、1月の失業率(季調済)は4.1%と前月(4.1%)から2ヶ月連続の横ばいとなるなど、引き続き堅調に推移していることが確認されている。就業者数は前月比+1.8万人と前月(同+6.9万人)から2ヶ月連続で拡大しており、非正規雇用に調整圧力が掛かる動きがみられるものの、正規雇用の拡大が雇用全体を下支えしている。労働市場の堅調さを受けて労働力人口も拡大が続いているうえ、労働参加率も66.7%と引き続き高水準で推移するとともに、労働時間もわずかに伸びるなど労働需給はひっ迫感を強めている。地域別では、これまで雇用改善の動きをけん引してきた最大都市シドニーを擁するニュー・サウス・ウェールズ州で底入れの動きに一服感が出ている。しかし、第2の都市メルボルンを擁するヴィクトリア州や、第3の都市ブリスベンを擁するクイーンズランド州のほか、資源関連産業が集中する西オーストラリア州で堅調な動きが確認されるなど、雇用改善の動きが広がりをみせている。金融市場においては、早ければ5月の定例会合での追加利上げを織り込む動きがみられるが、ファンダメンタルズはそうした流れを後押しすると見込まれる。

図表
図表

このように、RBAによる追加利上げを織り込む流れが豪ドル相場の堅調さを後押ししているとみられる。豪ドルを巡っては、ニュージーランドのNZドルと合わせて「オセアニア通貨」と一括りにされる傾向がある。しかし、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は2月18日に開催した定例会合で政策金利を据え置くとともに、先行きの政策運営について当面は緩和的であり続ける必要があるとの認識で一致したとして、しばらく現行水準での様子見を図る可能性を示唆した(注2)。RBNZのブレマン総裁は、会合後に開催した記者会見において、年内の利上げの可能性に言及する一方、政策委員の一致した見解ではないとの見方を示した。金融市場においては、RBNZが2026年内にも利上げに動くとの見方が広がりをみせていたものの、足元の雇用環境は回復途上であることが確認されており、前述のような動きをみせるオーストラリアと対照的な状況にある。NZドル相場に対する見方に修正の動きが広がりをみせていることも、相対的に豪ドルが強含みやすい環境につながっている。米ドルを巡っては、FRB(米連邦準備制度理事会)の政策運営に対する不透明感が残り、当面の豪ドルの対米ドル相場は金利差が意識されやすい展開が見込まれる。一方、日本円に対しては米ドル/日本円相場の動きに左右されると見込まれるものの、RBAのタカ派姿勢が意識されるなかで堅調な動きが続く可能性は高まっている。

図表
図表

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ