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2026.02.04
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米・トランプ氏とコロンビア・ペトロ氏が初会談、関係改善は進むか
~雪解けに期待の一方、インフレ再燃で政府と中銀に対立懸念、政治動向も見通しが立ちにくい~
西濵 徹
- 要旨
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- コロンビアのペトロ大統領は3日、対立が続いてきた米国のトランプ大統領と初の直接会談を行った。両国は不法移民の送還、麻薬対策、関税・制裁などを巡って緊張関係にあり、一時は軍事行動の警告やビザ撤回にまで発展した。しかし、直近では電話会談でトランプ氏がホワイトハウスに招待するなど関係改善の兆しもみられていた。今回の会談は非公開ではあったものの、友好的な雰囲気が示されるとともに、麻薬密売対策での協力や地域外交への関与など、緊張緩和に向けた具体的な提案がなされたとみられる。
- 最大の輸出相手である米国との関係改善は、同国向け貿易を通じてコロンビア経済に好影響をもたらすと期待される。高インフレと高金利で低迷していた経済は、金融緩和と内需回復を背景に足元で改善が進んでいる。同国では今年5月に大統領選が予定されるが、政権関係者の不祥事が相次ぎ、ペトロ政権の支持率は低迷している。世論は左右に二極化しており、政治の先行きに対する不透明感が強まっている。
- 政権は景気浮揚を狙い中銀に利下げを求めてきたが、中銀は1月会合でインフレ圧力や外部リスクを理由に利上げを決定した。最低賃金の大幅引き上げなども物価上昇要因として懸念される。ペソ相場は米ドル安を背景に底堅く推移したが、今後は米国との関係改善と中銀の信認が下支え要因となる一方、為替や外部環境の変動リスクは残る。中銀には物価と為替の両面を意識した難しい政策運営が求められる。
コロンビアのペトロ大統領は3日、米国のトランプ大統領と初めて直接会談を行った。両者を巡っては、過去に度々イデオロギーの違いを理由とする対立が表面化してきたため、今回の初会談が緊張緩和を促す試金石になると目されていた。トランプ氏は就任直後の2025年1月、同国による不法移民の送還受け入れ拒否を理由に、追加関税や制裁を課す方針を示すなどディール(取引)を仕掛けた(注1)。ペトロ氏は当初、米国に対する報復措置に動く考えを示したものの、その後に送還者の受け入れに同意するとともに、米国は追加関税や制裁の発動を見送ったことで事態はいったん鎮静化した。しかし、トランプ米政権が麻薬対策を強化するなか、2025年9月には国際麻薬対策協定に基づく義務を遵守できなかった国に、ベネズエラと同国などを指定した。また、国連総会への出席を目的とする訪米に際して、米国の麻薬対策などを批判したペトロ氏に対し、米国政府は同氏へのビザ(査証)の撤回を表明するなど対立が再び先鋭化した。その後も、トランプ氏は2025年10月に同国を「違法麻薬組織のリーダー」と批判したうえで、関税引き上げと財政支援の停止を表明した。そして、トランプ氏は2026年1月にもコロンビア政府に対する軍事行動を警告する一方、ペトロ氏は米国のベネズエラへの軍事行動を非難したうえで、対抗措置を示唆するなど反発し、さらなる関係悪化が懸念された。その一方、直後にトランプ氏はペトロ氏との電話会談で麻薬問題に関する協議を行うとともに、ペトロ氏をホワイトハウスに招待したことを明らかにし、関係改善に向けた糸口を探る動きもみられた。なお、会談そのものは非公開で行われたものの、会談後にペトロ氏は自身のSNSに両者が笑顔で握手する写真を投稿し、友好的に会談が行われたことが示された。ペトロ氏は、コロンビア国外に居住する麻薬密売人情報を米国に提供し、逮捕への協力を求めるとともに、隣国エクアドルとの外交対立の仲介を依頼したことを明らかにしている。そして、麻薬密売対策としてベネズエラ軍との合同作戦を提案したほか、ベネズエラ産ガスの輸出を巡って米国に協力する方針も伝えたとされる。こうしたことから、両国の緊張関係は緩和に向かうことが期待される。
両国関係が改善に向かうことは、コロンビアにとって米国は輸出の約3割を占めるなど最大の輸出相手であることに鑑みれば、経済にも良い影響を与えると見込まれる。ここ数年の同国経済を巡っては、インフレと金融市場における通貨安への懸念に直面するなか、中銀の金融引き締めに伴う金利高も重なり、2023年(+0.7%)、2024年(+1.6%)と2年連続の低い伸びにとどまるなど厳しい状況に直面してきた。さらに、トランプ関税の動向は、前述のように輸出全体の3割を占める対米輸出の足かせとなることが懸念された。しかし、一時は20年以上ぶりの高水準となったインフレ率は2023年初めを境に鈍化に転じるとともに、2025年も一段と鈍化してきた。こうした動きを受けて、中銀は2023年12月にコロナ禍後初の利下げに動くとともに、その後も小休止を挟みつつ、2025年5月まで累計400bpの利下げを実施するなど金融緩和を進めてきた。物価高と金利高の共存という景気の足かせとなる要因が解消していることも追い風に、2025年7-9月の実質GDP成長率は前期比年率+5.04%とプラス成長で推移しており、中期的な基調を示す前年同期比も+3.6%と丸3年ぶりの高い伸びとなるなど、足元の景気は改善が進んでいる。なお、コロンビアでは今年5月に大統領選が予定されているが、現行憲法ではペトロ氏は再選に向けた出馬ができない。こうしたなか、2025年6月には大統領選への出馬が取り沙汰された野党有力候補が選挙活動中に銃撃され、後に死亡した。さらに、ペトロ氏の側近が相次ぐ金銭スキャンダルを理由に辞任したほか、ペトロ氏の息子も様々な容疑を理由に逮捕されるなど、政権支持率は低下している。結果、世論調査においては、左派と右派の両極が支持を集めるなど国民の分断が深刻化しており、見通しが立たない状況が続いている。

したがって、ペトロ政権や政権を支える左派陣営は、景気浮揚により事態打開を図る姿勢をみせた。具体的には、ペトロ氏を中心に政権幹部は相次いで中銀に対してさらなる利下げを要求するなど、その独立性が懸念される動きをみせてきた。こうしたなか、中銀は1月30日に開催した定例会合において、政策金利を100bp引き上げて10.25%とする決定を行った。中銀による利上げは2023年5月以来であり、前述のように2023年12月に始まった利下げ局面は一巡した格好である。会合後に公表した声明文では、7人の政策委員のうち4名が100bpの利上げ、2名が50bpの利上げ、残り1名が据え置きを主張するなど、意見が分かれたことを明らかにしている。2025年12月のインフレ率は前年比+5.1%と2024年12月(同+5.2%)をわずかに下回る伸びとなったものの、依然として中銀目標(3±1%)の上限を上回る推移が続いている。その上で、コアインフレ率は前年比+5.0%と前月(同+4.8%)からわずかに加速するなど、鈍化してきた流れに変化の兆しが出ていることを指摘している。さらに、先行きの物価を巡って外部環境に関する不確実性の高さを指摘し、具体的に貿易摩擦の激化や米国による移民政策、地政学リスク、同国のソブリンリスクに対する認識を理由に挙げた。また、ペトロ政権は今年の最低賃金を22.7%と大幅に引き上げており、こうした動きも物価上昇を招くことが懸念される。この決定に対して、アビラ財務相は「全面的に反対する」と表明するなど政権との対立が深まる動きがみられる。2025年以降の通貨ペソの対ドル相場を巡っては、度重なる米国との関係悪化にもかかわらず、米ドル安が意識される局面が続いたことを追い風にペソ高基調で推移してきた。先行きについては、米国との関係改善に加え、中銀の独立性を重視した政策運営が下支え役となることが期待される一方、米ドル相場の行方に左右される可能性は残る。したがって、中銀にとっては物価抑制に加え、為替動向を睨みながらの政策運営を迫られることも予想される。


注1 2025年1月27日付レポート「南米コロンビアに「トランプ関税砲」、移民問題を契機に報復合戦へ」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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