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2024.01.26
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南ア中銀は4会合連続で金利据え置き、当面は「様子見姿勢」を継続の模様
~ランド相場は内生的な動意の乏しいなか、先行きは政局が混乱要因となる可能性に要注意~
西濵 徹
- 要旨
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- 南ア中銀は25日の定例会合で政策金利を4会合連続で8.25%に据え置く決定を行った。このところの同国経済は慢性的な電力不足や物流インフラの機能不全が足かせとなる状況が続く。他方、一昨年来の商品高や米ドル高を受けて上振れしたインフレは、これらの動きが一巡したことで頭打ちに転じている。よって、中銀は昨年7月に利上げ局面の休止に動くとともに、その後は様子見姿勢を維持している。足下のインフレは中銀目標の範囲内で推移しているが、ランド安による輸入インフレの懸念もくすぶるなか、中銀のハニャホ総裁はインフレが目標の中央値へ低下する明確なトレンドはみえないとして慎重姿勢を維持した。少なくとも向こう半年は様子見姿勢を維持するとみられるが、年内に実施される次期総選挙では与党ANCが議席を大きく減らすとともに、その後の政局を巡る動きがランド相場を揺さぶる可能性に要注意である。
南アフリカ準備銀行(中銀)は25日に開催した定例会合において、政策金利を4会合連続で8.25%に据え置く決定を行っている。足下の同国経済を巡っては、慢性的な電力不足による計画停電の実施に加えて物流インフラの機能不全状態が長期化していることも重なり、幅広い経済活動が制約されることで景気の足を引っ張るなど頭打ちが意識される状況が続いている(注1)。他方、一昨年来の商品高や国際金融市場における米ドル高を受けた通貨ランド安も重なり、インフレは大きく上振れして一時は13年ぶりの高水準となる事態に直面したため、中銀は物価と為替の安定を目的とする断続利上げを余儀なくされた。なお、昨年は商品高や米ドル高の動きが一巡するとともに、インフレも頭打ちの動きを強めたため、中銀は昨年7月に1年半に及んだ利上げ局面の休止に舵を切るなど姿勢を変化させた。ただし、その後は商品高や米ドル高の動きが再燃するなどインフレ懸念がくすぶったことに加え、今年は遅くとも8月中旬までに次期総選挙を実施する必要があり、残すところ半年強となるなど『政治の季節』が近付くなかで歳出増圧力が強まることによる財政悪化も警戒されることから、中銀は金利を据え置く姿勢を維持してきた。足下のインフレ率は中銀目標(3~6%)の範囲内で推移する展開が続いているほか、食料品とエネルギーを除いたコアインフレ率も共に目標域で推移するなど比較的落ち着いた動きをみせている。ただし、足下においては断続的な計画停電の実施や物流インフラの機能不全状態が続いていることを受けてサービス物価に押し上げ圧力が掛かりやすい展開が続いているなか、こうした動きを反映して頭打ちしてきたコアインフレ率が底打ちの動きをみせるなどインフレ圧力がくすぶる状況が続いている。さらに、ランド相場を巡っては、上述のように実体経済は力強さを欠く推移が続いていることに加え、主力の輸出財である商品市況は世界経済の減速懸念の高まりを反映して上値が抑えられる展開が続くなど内生的な動意の乏しい環境が続いているほか、足下では米ドル高の動きが再燃していることを反映して昨年来の安値圏が意識される展開が続くなど輸入インフレ圧力が高まりやすい状況にある。こうしたことも中銀が政策金利の据え置き維持による様子見姿勢を図っている一因になっているとみられる。会合後に公表された声明文においても、足下の物価動向について「インフレ目標への回帰に向けたペースは鈍い」との見方を示すとともに、「国内・外双方の要因の影響を受けやすいことに注意する必要がある」との認識を示している。会合後に記者会見に臨んだ同行のハニャホ総裁も、物価動向について「インフレが目標の中央値(4.5%)に向かって低下することを示す明確なトレンドはみられない」と述べるとともに、公表されたインフレ見通しでも目標の中央値に収束するのは7-9月以降との見方が示されるなど、インフレ鈍化の動きが明確になるまで様子見姿勢を維持する可能性を示唆している。こうした状況を勘案すれば、中銀は少なくとも向こう半年程度は様子見姿勢を維持すると予想される。ただし、ここ数年ラマポーザ政権を支える与党ANC(アフリカ民族会議)の支持率が低下する動きがみられ、2021年の統一地方選挙では初めて同党の得票率が初めて50%を下回る事態となったほか(注2)、その後も世論調査でも支持率が50%を下回る推移が続くなど議会において半数を下回る議席に留まる可能性があるほか、その後の政局を巡る動きがランド相場を揺さぶる可能性にも注意が必要と言える。


注1 2023年12月7日付レポート「南アフリカ経済は需給双方で下振れして再びマイナス成長に陥る」
注2 2021年11月8日付レポート「南アフリカ統一地方選、与党ANCは得票率半数割れの厳しい結果に」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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