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2023.09.20
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ロシア中銀、戦時中もインフレ、ルーブル安に対抗して3回連続の利上げ
~中銀は一段の利上げを示唆も、政府内で批判も強まるなど政策の「板挟み」感が強まる展開も~
西濵 徹
- 要旨
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- 15日、ロシア中銀は定例会合で政策金利を100bp引き上げ13.00%とするなど、3会合連続の利上げを決定した。同行はインフレが再燃し、ルーブル安に歯止めが掛からない状況に対応して7月に1年強ぶりの利上げ、先月には緊急で大幅利上げに動いた。その後は自主減産による原油相場の底入れにも拘らず、ルーブル相場は連動性を強める人民元に対して実需面で弱含む展開が続き、対ドルでも弱含むなどルーブル安に歯止めが掛からない状況が続く。さらに、政府のバラ撒き政策や労働力不足を理由にインフレが再燃する一方、景気の堅調さが示唆される動きが続くなどインフレ懸念が高まるなかで追加利上げに追い込まれた。中銀はインフレ抑制へ一段の利上げも辞さない考えを示す一方、政府内では戦争推進派が中銀の利上げを批判する動きもみられ、政策運営を巡り「板挟み」の状態が続くことは避けられないであろう。
15日、ロシア銀行(中銀)は定例会合を開催して主要政策金利を100bp引き上げて13.00%とする決定を行った。同行は7月の定例会合において、インフレ圧力が強まっていることに加え、国際金融市場におけるルーブル安の動きに歯止めが掛からない状況が続いていることに対応して、『戦時中』にも拘らず1年強ぶりとなる利上げに動くなど金融引き締めに舵を切った(注1)。しかし、その後はロシアとサウジアラビアなど主要産油国による自主減産決定を受け、同国産の原油価格は欧米などによる上限(1バレル=60ドル)を上回る推移が続くなど原油関連収入は底入れしており、金銭面ではウクライナ戦争を巡る継戦能力は高まっていると判断出来る。なお、同国の通貨ルーブルはいわゆる『産油国通貨』の代表格とされ、ウクライナ戦争前においては原油価格の動向に連動する傾向がみられたものの、欧米などの経済制裁の影響に伴いグローバルな金融機関などは取引を停止させるなどそうした動きが生じにくくなっている。他方、欧米などの経済制裁ではロシアの金融機関がSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除されるなか、その後は迂回貿易や並行貿易を通じて中国との連動性が高まり、中国人民銀行によるCIPS(人民元建国際銀行間決済システム)への接続の動きが広がっていることを受け、ルーブル相場を巡っては人民元との連動性が高まっている。ただし、迂回貿易や並行貿易の拡大に加え、中国以外の国々との貿易決済に際しても人民元などルーブル以外の通貨が用いられるなど、実需面でルーブル取引が回避されているほか、ウクライナ戦争が長期化するなかで富裕層や中間層などが資金逃避の動きを活発化させており、「人民元>ルーブル」の構図が生じている。そして、足下の国際金融市場においては米FRB(連邦準備制度理事会)による追加利上げが意識される一方、中国景気の不透明感を理由に中国人民銀行は金融緩和に舵を切るなど金融政策の方向性の違いが明確になり、「米ドル>人民元」となりやすくなっている。結果、ルーブル相場を巡っては「米ドル>人民元>ルーブル」という力関係が生じることでルーブル安に歯止めが掛からない状況が続いており、中銀はルーブル安阻止に向けて先月に緊急で大幅利上げに動く事態に追い込まれた(注2)。その後もロシアとサウジが自主減産を年末まで延長する方針を示したことも追い風に、同国産の原油価格は一段と上振れするなど原油関連収入は押し上げられている。こうした状況にも拘らず、その後もルーブル相場は上値の重い展開が続いており、ルーブル安に歯止めが掛からず輸入インフレ圧力が高まりやすくなっている。なお、昨年前半に欧米などによる経済制裁やルーブル相場の混乱も追い風に大きく上振れしたインフレ率はその後頭打ちの動きを強めたものの、ウクライナ戦争が長期化するなかで政府は国民の不満を抑えるべく様々なバラ撒き政策に動くなどインフレ圧力が高まりやすくなっている。さらに、戦争の長期化により労働力不足が深刻化するなかで賃金上昇圧力が強まる動きもみられるなか、足下のインフレ率は底打ちに転じるとともに中銀目標を上回る水準となるなどインフレが顕在化している。他方、政府によるバラ撒き政策に加え、迂回貿易や並行貿易により物資不足の解消が図られていることも追い風に、足下の企業マインドは堅調に推移するなど景気の底入れが示唆されており、結果的にインフレ圧力が高まりやすい状況にある。こうしたことから、中銀は3会合連続の利上げ実施を決定するとともに、会合後に公表した声明文では先行きの金融政策について「来年にインフレ率が目標に回帰し、目標近傍で安定するには引き締め状況が長期間維持される必要がある」との見方を示すとともに、「インフレを巡る様々なリスクに対応すべく一段の利上げの必要性を検討する予定である」との考えを示している。また、会合後に記者会見に臨んだ同行のナビウリナ総裁も「インフレリスクの顕在化に伴い利上げを決定し、インフレが持続的に鈍化すると確信するまでかなりの長期間に亘って政策金利を高水準に維持する」との考えを示すとともに、今回の会合について「据え置きと一段の利上げも検討された」としつつ「来年末までにインフレ率を4%に低下させる目標実現には利上げが必要と判断した」とするなどタカ派姿勢を示した格好である。同行のテクノクラートは慎重な判断を下していることを改めて示した格好である一方、政府内では右派を中心とする戦争推進派が台頭する動きがみられ、戦時中の利上げ実施を巡って中銀は批判の矢面に立たされるなか、政策運営を巡る『板挟み』状態が続くことは避けられないであろう。




注1 7月24日付レポート「ロシア中銀、戦争中にも拘らずインフレを警戒して大幅利上げを決断」
注2 8月16日付レポート「ロシア中銀、止まらぬルーブル安に堪らず緊急大幅利上げを決定」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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