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2026.02.06
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メキシコ中銀は13会合ぶりの利下げ局面休止、一進一退が続くか
~インフレの目標回帰時期は2027年半ばに後ズレ、ペソ相場は外部環境に左右される展開が続く~
西濵 徹
- 要旨
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- メキシコ中銀は5日に開催した定例会合で政策金利を7.00%に据え置いた。中銀は2024年3月以降に断続的な利下げを実施してきたが、足元ではコアインフレが目標上限を上回り、最低賃金引き上げによるインフレ圧力も残る。前回会合で利下げ局面の一時休止を示唆しており、今回の決定は想定通りであった。
- 断続的な利下げの背景には、トランプ関税による対米依存度の高いメキシコ経済への悪影響懸念があった。しかし、2025年10-12月のGDP成長率は前期比年率+3.19%と予想外のプラスとなり、内需の堅調さを示す内容となった。こうした景気の底堅さも、利下げ局面を休止する判断を後押ししたとみられる。
- 声明文では、インフレ見通しの上方修正や不確実性の高まりを踏まえ、利下げ局面の一時停止が適切と判断したと説明した。インフレは当面上振れし、目標中央値への収束時期は2027年半ばに後ずれすると見込んでいる。全体的にタカ派寄りの姿勢を示したが、今回の決定は利下げ終了でなく一時休止と見込まれる。
- 金融市場では、次期FRB議長人事を巡る不透明感が払拭されたことで米ドル安の動きが修正されており、先行きの不透明感が意識され、ペソ高基調にも足元で陰りがみられる。今後は米ドル相場の動向に加え、メキシコ経済の不透明感やUSMCA再交渉など外部環境に左右されやすい展開が続くと見込まれる。
メキシコ銀行(中央銀行)は、2月5日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利を7.00%に据え置くことを決定した。メキシコではここ数年、インフレ率が中銀目標(3±1%)の上限を大きく上回る推移が続いた。しかし、2023年以降のインフレは鈍化の動きを強めたため、中銀は2024年3月にコロナ禍一巡後初の利下げに踏み切った。その後、中銀はインフレの再加速を理由に利下げをいったん休止したものの、インフレが再び鈍化に転じたため、2024年8月に利下げを再開したうえ、利下げ幅を調整しつつ2025年12月まで12会合連続の利下げを実施してきた。結果、2024年3月以降の利下げ局面における利下げ幅は累計425bpに達しており、着実に金融緩和を進めてきた。しかし、2025年12月のインフレ率は前年同月比+3.69%と中銀目標の域内にとどまる一方、コアインフレ率は同+4.33%と目標の上限を上回る水準で推移している。シェインバウム政権は1月から最低賃金を13%引き上げており、インフレ圧力がくすぶる展開が見込まれる。こうした事情を踏まえ、中銀は2025年12月の前回会合で利下げを実施する一方、フォワードガイダンスの修正に加え、インフレ見通しを上方修正するなど、利下げ局面の休止を示唆した(注1)。したがって、今回の決定は前回会合で示された通りの結果になったと捉えられる。

中銀が断続的な利下げを実施してきた背景には、いわゆるトランプ関税がメキシコ経済に悪影響を与えるとの懸念が影響している。メキシコと米国は陸続きの隣国であるうえ、メキシコの輸出に占める対米比率は8割を上回り、名目GDP比で約3割に達するなど経済面での結びつきが強い。こうしたなか、トランプ米政権はメキシコに対して高関税を課す方針を示すなど圧力を掛けた。しかし、シェインバウム政権は米国に従属しない戦略を維持する一方、報復措置を自重しつつ米国との関係悪化を回避する対応を取った。結果、米国は個別財に対する追加関税に加え、メキシコからの輸入品に25%の追加関税を課したものの、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に準拠する財を対象外とすることで合意した。また、米国は第3国を経由して米国に輸出される「迂回輸出」を警戒するなか、同国政府は1月から同国と貿易協定を締結していない国からの輸入品に最大50%の追加関税を課している。このように、メキシコが米国の意向に沿った動きをみせていることも、トランプ氏がメキシコに対して融和的な姿勢を維持する一因になっていると考えられる。こうしたなか、企業マインドは悪化するなど景気の足かせとなることが懸念された。しかし、2025年10-12月の実質GDP成長率(速報値)はサービス業がけん引役となって前期比年率+3.19%と予想外のプラス成長となり、内需の強さを示唆する動きが確認されている。こうした事情も、利下げ局面を休止する判断を後押ししたと考えられる。

会合後に公表した声明文では、今回の決定は「全会一致」としたうえで、「インフレ見通しの修正に加え、年初から実施されている財政運営変更の影響、通貨ペソ相場の動向、景気動向を巡る不透明感などの影響を勘案すれば、この機会に利下げ局面を一時停止することが適切と判断した」としている。その上で、世界経済について「貿易摩擦が続くなかで一段と勢いを欠いている」としつつ、「地政学リスクを伴う貿易摩擦の激化が物価や経済活動、金融市場のボラティリティに影響を与えることが懸念される」との認識を示している。一方、同国経済について「足元の景気は拡大しているものの、不確実性の高さと貿易摩擦の懸念は引き続き下振れリスクをもたらす」との見方を示す。また、物価見通しについて「当面は上振れが見込まれる」としたうえで、「インフレ率、コアインフレ率ともに目標中央値(3%)に収束する時期は2027年半ばに後ズレする」として、インフレ見通しを大幅に修正している。上振れリスクに「①コアインフレの上昇継続、②コスト上昇圧力、③ペソ安、④地政学リスクや貿易政策の混乱、⑤異常気象」を、下振れリスクに「①景気減速、②コスト転嫁圧力の低下、③ペソ高」を挙げるも、依然としてリスクは上向きに傾いているとした。先行きの政策運営について「物価を巡るあらゆる要因を考慮に入れて、追加的な金利調整を評価する」と前回会合でのガイダンス修正を踏襲した。全体としてのトーンはタカ派に傾いているものの、今回の決定は利下げ局面の終了ではなく、一時休止を示唆しているものと考えられ、当面は一時休止と再開を繰り返す展開が続くと予想される。

金融市場においては、次期FRB(米連邦準備理事会)議長人事を巡って先行きの政策運営に対する不透明感が意識された米ドル安圧力を強めた流れに見直しの動きがみられる。結果、米ドル安に加え、実質金利(政策金利-インフレ率)のプラス幅の大きさという投資妙味の高さを追い風に、通貨ペソの対ドル相場は堅調に推移してきたものの、足元ではその勢いに陰りが出ている。先行きについては、米ドル相場の動向に左右される展開が続くと見込まれるうえ、メキシコ経済を巡る不透明感、今年予定されるUSMCAの再交渉の動向など、外部環境に左右されやすいことに注意する必要がある(注2)。

注1 2025年12月19日付レポート「メキシコ中銀は12回連続利下げも、ガイダンス修正で利下げ休止か」
注2 1月21日付レポート「好調な動きをみせるメキシコ・ペソに死角はないか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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