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2023.08.04
新興国経済
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メキシコ経済
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メキシコ、景気底入れが続く一方で「強過ぎるペソ」の弊害も顕在化
~移民送金は頭打ち、ペソ高による目減りも懸念されるなか、中銀の動きはペソ相場の動きを左右~
西濵 徹
- 要旨
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- メキシコ経済は米国との連動性が極めて高く、一昨年来のインフレ昂進や中銀による断続利上げによる物価高と金利高の共存長期化にも拘らず、景気は底入れしてきた。商品高の一巡に加え、実質金利のプラス幅拡大を追い風にしたペソ高も重なり、インフレは大きく鈍化している。結果、外需や移民送金の堅調さ、インフレ鈍化による実質購買力の押し上げも重なり、景気は底入れが続いている。ただし、米国景気の頭打ちを受けて移民送金も頭打ちするなか、ペソ高がペソ建換算で目減りさせており、インフレ圧力がくすぶるなかで内需の足かせとなる懸念が高まっている。足下ではインフレ鈍化を理由に中南米で利下げの動きが広がるなか、中銀内には年末までに利下げに動く可能性を示唆する動きもみられる。実質金利のプラス幅拡大を理由に強含んできたペソ相場については、その環境が変化する可能性に注意が必要と言える。
メキシコ経済を巡っては、財輸出の約8割に加え、GDPの約4%に上る移民送金の大宗を米国からの流入が占めるなど、経済構造面で米国の影響を受けやすい特徴がある。さらに、ここ数年の米中摩擦の激化やコロナ禍、ウクライナ情勢の悪化も追い風に、米国に関連する製造業は生産拠点をアジアから米国周辺に移す『ニアショアリング』動きをみせており、なかでもメキシコは米国と地続きの上、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)も追い風に投資流入が活発化している。他方、同国では商品高による生活必需品を中心とする物価高に加え、コロナ禍を受けた通貨ペソ安、その後も国際金融市場における米ドル高がペソ安を通じた輸入インフレを招いてインフレ率が加速する事態に見舞われた。結果、中銀は物価抑制を目的に一昨年6月に利上げに動くとともに、その後も物価と為替の安定を目的に米FRB(連邦準備制度理事会)と足並みを揃える形で断続、且つ大幅利上げを実施してきた。こうした状況にも拘らず、昨年はインフレ率が一時22年弱ぶりの水準に大きく上振れするなど、物価高と金利高が共存して景気に冷や水を浴びせることが懸念された。しかし、上述のように米国経済への依存度の高さに加え、米国経済の堅調さも重なり、外需をけん引役に景気は底入れの動きを強めるなどコロナ禍の克服が進んでいる。そして、昨年9月を境にインフレ率は頭打ちするとともに、その後は商品高の一巡や米ドル高の一服に加え、中銀によるタカ派姿勢の堅持も追い風にペソ相場は強含みするなど輸入インフレが後退したことも重なり、足下のインフレ率は頭打ちの動きを強めている。よって、中銀はインフレ鈍化を好感して今年5月に約2年に及んだ利上げ局面を終了させており(注1)、翌6月の定例会合でも政策金利を据え置くとともに『長期に亘って』引き締め姿勢を維持する可能性を示すなど、改めて『タカ派』姿勢を強調する考えをみせている。インフレ鈍化を受けて実質金利(政策金利-インフレ率)はプラス幅が拡大するなど投資妙味が拡大しており、ペソ相場は一段と強含む動きをみせて一時7年半ぶりの高水準となるなど、輸入インフレ圧力の後退を通じたインフレ鈍化を促すことが期待される。このように、外需は米国向けを中心に底堅く推移している上、米国経済の堅調さを追い風に移民送金の流入が続くなか、インフレ鈍化による実質購買力の押し上げも重なり、4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+3.68%と前期(同+4.15%)からペースこそ鈍化するも7四半期連続のプラス成長で推移しており、景気の底入れが続いている。なお、インフレ率は頭打ちの動きを強めるも中銀の定めるインフレ目標を上回っている上、雇用改善に伴う賃金インフレも影響してコアインフレ率はインフレ率を上回る伸びが続くなど、インフレ収束にはほど遠い状況にある。こうしたことは中銀が現行の引き締め姿勢を長期に亘って維持する姿勢を示す一因になっている一方、足下の米国経済は頭打ちの様相を強めており、移民送金も同様に頭打ちするなか、ペソ高はペソ建で換算した移民送金を『目減り』させるなど家計消費をはじめとする内需の足かせとなることが懸念される。こうしたなか、中南米においてはインフレ鈍化を受けて、4月と先月にウルグアイが、先月にはチリ(注2)、今月に入って以降もブラジル(注3)が相次いで利下げを実施するなど、一転して『利下げドミノ』とも呼べる動きが広がりをみせている。中銀内では、政策委員のひとりであるヒース理事がインタビュー記事のなかで、仮に米FRBが追加利上げを実施した場合においても中銀は追随には消極的との見方を示すとともに、最良のシナリオに基づけば年末までに小幅利下げに動く可能性に含みを持たせるなど、幾分『ハト派』姿勢に傾いている様子もうかがえる。その意味では、これまでは実質金利のプラス幅拡大の動きや、中銀のタカ派姿勢を追い風にペソ相場は堅調な動きをみせてきたものの、上述のようにその弊害も顕在化するなかで状況が変化する可能性に留意する必要があろう。




注1 5月19日付レポート「メキシコ中銀、インフレ鈍化を好感して約2年に及んだ利上げ局面の終了を決定」
注2 8月1日付レポート「チリ中銀、インフレ鈍化を理由に「積極的」な利下げに舵を切る」
注3 8月3日付レポート「ブラジル中銀は一転してハト派姿勢を強める形で3年ぶりの利下げ実施」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

