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2022.04.05
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米国がロシアのデフォルト回避に向けた動きの「壁」に
~ロシア政府はデフォルト回避の取り組みを進めるも、米国政府が「切り札」を行使~
西濵 徹
- 要旨
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- 国際金融市場では、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとする欧米諸国などの経済制裁によりロシアがデフォルトに陥ることが警戒されてきた。ただし、ロシア政府は先月のドル建国債の元利償還を円滑に履行してきた。さらに、額面が大きい今月4日の期日到来分についても事前に7割強をルーブル建で買い取り、残りをドル建で支払う旨を公表するなど懸念が後退してきた。しかし、4日に米財務省は同日付でコルレス銀行に取引を許可しない旨を明らかにするなど、一転デフォルトに陥る懸念が高まっている。足下のルーブル相場はデフォルト懸念の後退に加え、ロシア政府が輸出決済でのルーブル利用なども影響してウクライナ侵攻前の水準に回復しているが、流動性が低下するなかでデフォルトを機に状況が一変する可能性はくすぶる。
国際金融市場では、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、欧米諸国などがロシアに対する経済制裁を強化しており、ロシア中銀も制裁対象とされたことで外貨の資金繰りが悪化することで、ロシア政府がデフォルト(債務不履行)に陥ることが懸念されてきた。ロシア政府はデフォルト回避を目的に、ロシア政府及び企業による同国向けの経済制裁を発動した「非友好国」向けの債務の支払いを、一時的に『ロシア中銀が定めた為替レートに相当するルーブル建』で行う大統領令の発令に動いた。しかし、ドル建で発行された国債の利払いをロシア中銀の『言い値』によるルーブル建で行うことそのものがデフォルト事案に該当すると見込まれることから、その行方が注目された。先月16日に期日を迎えたドル建国債の利払い(1.17億ドル)については、ロシア政府が1日遅れながらドル建で履行した旨が確認されている(注1)。また、先月31日に期日を迎えた契約上ルーブル建による支払いオプションが認められていないドル建国債の元利払い(4.47億ドル)についても、ロシア政府がドル建で履行した旨が確認されるなど、外貨の資金繰りが懸念される状況ながら問題は回避されている。他方、今月4日には20億ドルのドル建国債の元本償還が予定されたなか、ロシア政府は先月末にその72.4%に当たる14.5億ドル分をルーブル建(1,244億ルーブル)で買い戻すとともに、残りの5.5億ドル分についてドル建で履行する方針を明らかにしていた。年内のロシア国債の元利償還スケジュールを巡っては、今月4日の元利払いの水準が突出していたため、これを乗り切る目途が立ったことでロシアが当面デフォルトに陥る可能性が大きく後退したとみられた。しかし、米財務省は4日、ロシア政府によるコルレス銀行(中継銀行)である米金融機関を通じたドル建国債の元利払いを同日から許可しない旨を明らかにしており、一転してデフォルトに陥る可能性が高まっている。なお、米財務省は先月、米国人及び法人によるロシア財務省、中銀、政府系ファンドが発行した債券及び株式に関連する利子、配当、償還金の受け取りに伴う金融取引を5月25日まで承認したものの、ウクライナ情勢が一段と悪化していることを受けて対応を一変させたと捉えられる。ロシアがデフォルトに陥ることによる直接的な影響については、国際金融市場におけるロシア国債の規模の小ささを勘案すれば限定的と見込まれるものの、ロシア向け債権を抱える欧州系を中心とする外資系金融機関は損失リスクを抱えることは避けられそうにない(注2)。足下のルーブル相場を巡っては、上述のようにロシア政府がデフォルト懸念を回避する動きを続けていることに加え、ロシア政府が非友好国に対する天然ガス輸出に対する決済をルーブル建で求める方針を示したほか、その後も天然ガス以外の輸出決済をすべてルーブル建で求めるなど、ルーブル相場の安定を目指す取り組みを強化していることもあり、ウクライナ侵攻直前の水準に戻す動きがみられる。欧米諸国などによる経済制裁強化の影響で外資系金融機関によるルーブル取引が急激に縮小するなどルーブルの流動性は低下していることを勘案すれば、上述のようにデフォルト懸念が再燃していることを受けて状況が一変する可能性はくすぶると捉えられよう。

注1 3月22日付レポート「ロシアのデフォルト懸念は一旦峠越えも、引き続きその影響に要注意」
注2 3月11日付レポート「いよいよ迫りつつあるロシアのデフォルトと「その後」」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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