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2024.12.05
新興国経済
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南アフリカ経済
為替
南ア景気にブレーキ、ランド相場を取り巻く環境はどうなる
~7-9月はマイナス成長も内需には堅調さ、景気もランド相場も外部環境次第の様相が続く可能性~
西濵 徹
- 要旨
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- 南ア経済を巡っては、長らく電力不足に加えて物価高と金利高の共存などが内需の足かせとなるなかで景気は勢いを欠く推移が続いた。一昨年半ばを境にインフレは頭打ちに転じたほか、3月末以降は計画停電も発生しないなど最悪期を過ぎるとともに、総選挙後に懸念された政治的混乱も回避されている。他方、大干ばつの影響が懸念されるなか、7-9月の実質GDP成長率は前期比年率▲1.38%とマイナス成長に転じた。ただし、インフレ鈍化などを追い風に内需は堅調な一方、外需低迷や干ばつに伴う農林漁業関連の生産下振れなど、外部要因が景気の足を引っ張っている。先行きはインフレ鈍化に加え、中銀も利下げに動くなど内需を巡る状況は改善が見込まれる一方、外部環境に揺さぶられる展開が続くなど景気は勢いを欠く展開が続く可能性は残る。金価格の上昇を追い風にランド相場は底堅く推移したが、米ドル高再燃に伴う金価格の調整などが重石となるなか、先行きも外部環境に揺さぶられる展開が続くものと予想される。
ここ数年の南アフリカ経済を巡っては、慢性的な電力不足が幅広い経済活動の足かせとなる展開が続くとともに、物価高と金利高の共存に加え、雇用環境の厳しさも重なる形で家計消費をはじめとする内需の重石となるほか、世界経済を巡る不透明感が外需の足を引っ張るなど、他の新興国と比べて景気は勢いを欠く推移が続いてきた。なお、一昨年半ばにインフレは一時13年ぶりの水準となるも、その後は商品高の一巡を追い風に頭打ちの動きを強めるとともに、昨年半ば以降は中銀(準備銀行)が定めるインフレ目標の域内で推移しており、家計部門を取り巻く環境は改善している。さらに、上述したように慢性的な電力不足が景気の足かせとなってきたものの、3月末以降は計画停電を回避する展開が続いているほか、計画『外』停電も減少するなど、電力を巡る最悪期は過ぎつつある。なお、5月に実施された議会下院(国民議会)総選挙では、1994年の民主化から一貫して政権与党の座にあるANC(アフリカ民族会議)が初めて半数を下回る議席に留まる惨敗を喫するも、その後に他党との連立によりラマポーザ政権は3期目入りを果たすなど、政治的混乱に陥る事態は回避されている。他方、今年のアフリカはエルニーニョ現象による大干ばつが直撃しており、同国においても農林漁業関連を中心に生産活動に悪影響が出るとともに、生鮮食料品を中心とする食料インフレ圧力が強まる動きがみられる。こうした状況を反映して、このところの景気は一進一退の様相をみせるも全体としては力強さを欠く推移をみせてきたなか、7-9月の実質GDP成長率は前期比年率▲1.38%と前期(同+1.38%)から4四半期ぶりのマイナス成長となるなどブレーキが掛かるとともに、中期的な基調を示す前年同期比ベースでも+0.31%と前期(同+0.32%)からわずかに伸びが鈍化するなど頭打ちしている。需要項目別では、インフレ鈍化による実質購買力の押し上げに加え、雇用環境に改善の動きがみられるほか、9月に開始された年金制度改革に伴い退職前に基金の一部を引き出すことが可能になっていることも重なり、家計消費は堅調な動きをみせている。また、長きに亘って低迷が続いた固定資本投資も拡大に転じており、企業部門による設備投資の動きに底打ち感が出るなど、内需を巡る動きに堅調さがうかがえる。一方、輸出の2割程度を占めるEU(欧州連合)景気が減速している上、輸出の1割強を占める中国(含、香港・マカオ)景気を巡る不透明感の高まりのほか、国内における運輸インフラの機能不全が続いていることも重なり、輸出は3四半期連続で減少するとともに、減少ペースも加速するなど景気を下押ししている。こうした動きを反映して、分野ごとの生産動向もサービス業の生産は底堅く推移しているほか、電力供給を巡る懸念が後退していることも追い風に製造業や鉱業部門の生産も拡大するなど、生産活動を下支えしている様子がうかがえる。ただし、上述した大干ばつの影響が深刻化していることを反映して、農林漁業関連の生産は2四半期連続で減少するとともに、そのペースも加速するなど景気の足を引っ張る一因となっている。こうしたことから、足下の景気はマイナス成長に転じるなどブレーキが掛かったものの、その要因は外需の下振れ、異常気象といった外部要因に拠るところが大きく、内需を取り巻く環境は改善していることに鑑みれば過度に悲観的にみる必要はないと捉えられる。さらに、足下のインフレは一段と下振れしていることを受けて、中銀は9月、11月と立て続けに利下げに動いているほか(注1)、上述のように足下の景気にブレーキが掛かる動きが確認されたことにより、先行きも緩和サイクルを継続させるなど内需を押し上げる方向に舵を切る可能性も考えられる。とはいえ、外部環境に左右されやすい環境が続くことに加え、先行きの世界経済は米国のトランプ次期政権による通商政策など不透明要因が山積しており、経済成長の勢いを増す状況にはなりにくい展開が続くと予想される。他方、通貨ランドは金をはじめとする商品市況の堅調さを追い風に底堅い動きをみせてきたものの、米大統領選でのトランプ氏勝利を受けた米ドル高の再燃により、足下では一転して頭打ちの動きをみせており、そのことが相場の重石となる展開となっている。さらに、足下の景気にブレーキが掛かる動きも下押し圧力を増幅させていると見込まれるほか、先行きについても外部環境に左右されやすい展開が続くことは避けられないであろう。



注1 11月22日付レポート「南ア中銀は2会合連続利下げも、外部環境を警戒して慎重姿勢崩さず」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

