インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

南ア中銀は2会合連続利下げも、外部環境を警戒して慎重姿勢崩さず

~ランド相場は他の新興国通貨に比べて底堅いが、外部環境次第の展開が続くことは避けられず~

西濵 徹

要旨
  • 南ア中銀は21日の定例会合において2会合連続で政策金利を25bp引き下げ7.75%とする決定を行った。足下のインフレは頭打ちの動きを強めており、10月は前年比+2.8%と中銀目標の下限を下回るなど落ち着きを取り戻している。他方、国際金融市場では米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて米ドル高圧力が強まるなか、ランド相場を取り巻く環境は厳しさを増している。しかし、他の新興国通貨に比べて底堅く、金価格の高止まりのほか、電力供給を巡る最悪期を過ぎていることが影響している可能性がある。とはいえ、景気は他の新興国と比べて力強さを欠くなか、中銀は物価を巡るリスクや外部環境を警戒して慎重姿勢を維持しており、漸進的な金融緩和を続ける可能性が高く、ランド相場も外部環境次第の展開が続こう。

南アフリカ準備銀行(中銀)は、21日に開催した定例の金融政策委員会において政策金利(レポ金利)を25bp引き下げて7.75%とする決定を行った。同行は9月の前回会合においてコロナ禍後初の利下げに舵を切っており(注1)、今回は2会合連続利下げに動くなど『ハト派』姿勢に傾斜している様子がうかがえる。ここ数年の同国においては、コロナ禍一巡による経済活動の正常化や商品高、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨ランド安に伴う輸入インフレに加え、慢性的な電力不足をはじめとするインフラの機能不全も物価の押し上げ要因となる展開が続いてきた。よって、インフレ率は一昨年半ばに一時13年ぶりの水準に昂進したものの、中銀は物価と為替の安定を目的とする累計325bpの利上げに動くとともに、商品高の動きが一巡したことも重なり、その後は頭打ちに転じてきた。さらに、昨年半ば以降のインフレ率は一時的に加速に転じる動きがみられるも、中銀が定めるインフレ目標(3~6%)の範囲内で推移するとともに、年明け以降は頭打ちの動きを強めている。なお、米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げ実施を受けた米ドル安に加え、世界経済を巡る不透明感の高まりが金価格を押し上げていることも重なりランド相場は底入れの動きを強めたことも輸入インフレ圧力を緩和させてきた。さらに、足下の国際金融市場では、米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて米ドル高が強まる動きがみられ、ランド相場の底入れの動きに一服感が出ているものの、他の新興国通貨に比べて調整の度合いは小幅に留まり、金価格が最高値を更新する動きをみせていることが影響している可能性がある。結果、直近10月のインフレ率は前年比+2.8%と中銀目標の下限を下回る伸びとなるとともに、コアインフレ率も同+3.9%と目標域内で推移している。なお、かつての南アフリカは世界最大の金生産国であったものの、減少傾向が続くなかで昨年の生産量は最盛期の10分の1程度に留まるとともに、中国をはじめとする多くの国に抜かれるなど世界の金生産における存在感は極めて低くなっている。さらに、足下では輸出に占める鉱物資源を巡っては、プラチナ(白金)や鉄鉱石などの割合が金を上回っており、これらの市況は芳しくない動きをみせるなかで足下の輸出額は前年を下回る伸びに留まるなど外需を取り巻く環境は厳しさを増している。一方、ここ数年の南アフリカ経済を巡っては、慢性的な電力不足による計画停電の頻発が経済活動の足かせとなってきたものの、今年3月末以降は計画停電が実施されない状況にあるほか、計画『外』停電も減少するなど最悪期を過ぎつつある。こうした状況を受けて、足下のランド相場が他の新興国通貨と比較して底堅い動きをみせる一因となっている可能性はあるものの、些か理解に苦しむのが実情である。こうしたなか、中銀は会合後に公表した声明文では、世界経済について「厳しさが増している」との認識を示す一方、同国経済について「インフレ鈍化や年金制度改革などを追い風に回復が見込まれる」との見方を示した上で、「2027年には経済成長率が+2%程度まで底入れが進む」と野見通しを示している。また、物価動向については「足下では下振れしているが、先行きは電力料金引き上げの影響で上振れが見込まれるも、インフレ率は目標域の中央値近傍での推移が見込まれる」としている。会合後に記者会見に臨んだ同行のハニャホ総裁は、今回の決定について「全会一致であった」とした上で、「利下げ実施はインフレ目標実現と整合的であることで合意したものの、リスクの見通しを踏まえると慎重なアプローチが必要との見解で一致している」として小幅利下げを志向する姿勢を示した上で、「世界的な金利上昇リスクがくすぶるなか、足下のランド安は国際金融市場の変化の影響を示唆している」と外部環境を注視する考えを示している。足下の景気を巡っても好悪双方の材料が混在する展開が続いているほか、景気そのものも他の新興国と比較して力強さを欠く動きをみせているほか、外貨準備高をはじめとする経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)も脆弱であることを勘案すれば、中銀は慎重な姿勢を維持せざるを得ず、ランド相場も外部環境次第の動きをみせると予想される。

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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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