Side Mirror(2024年5月号)

佐久間 啓

日銀は3月19日の金融政策決定会合で「長短金利操作付き量的質的金融緩和」の枠組み、マイナス金利政策はその役割を果たしたとして、オーバーシュート型コミットメントの終了、マイナス金利解除、日銀当座預金への0.1%の付利、YCC撤廃、ETFやJ-Reitの買入終了等を決定。今後の金融市場調節は「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促す」とした。

2月に日経平均株価がようやく1989年の高値を更新し、時代が動き出したことを実感させてくれた。そうした動きに続いて2013年4月の黒田日銀総裁の“物価安定の目標(+2%)を2年で実現、そのためマネタリーベースを2年で2倍に拡大”するとした「量的・質的金融緩和」導入から11年、遂に金融政策も“普通の金融政策”に転換したことでより一層時代の変化を感じている。

今後の金融政策は、多くの中央銀行のように足元の経済動向からリスクバランスを評価し、短期金利を操作する“普通の金融政策”に移行していくはずだ。これまで日銀は「2%の物価安定の目標」の実現が見通せるまで「量的・質的金融緩和」を続けることを繰り返し発信していたことから、市場参加者の間では“物価安定の目標実現という閾値を超えなければ金融政策の変更はないし、簡単に目標実現はできない。どうせ政策に影響ないなら物価以外の経済指標は丹念に見る必要ないか…”と足元のこまごまとした経済(指標データ)の動きにあまり関心が向かない、無頓着になっている傾向も感じられたが、これからはそうはいかなくなる。

金融政策が普通に戻るのであれば、市場参加者の意識も変わる必要がありそうだ。植田総裁からも「データ次第」という発言が聞かれるようになるかもしれない。これからは多くの経済統計に、今以上に関心を向ける必要があるだろう。そもそも足元の動きに無頓着だと、その積み重ねである大きな流れに気付くのが遅れるリスクがあるので猶更だ。急に焦ったり不安にならないためにも“今”を確実に理解していきたい。

(佐久間 啓)

佐久間 啓


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