Side Mirror(2023年6月号)

佐久間 啓

5月、米国はFOMCで25bpの利上げ決定、FFターゲットレートは2022年2月の0.25%から2006年以来となる5.25%へ上昇。ECBも理事会で25bpの利上げ決定、ただしこちらは前回の50bpからペース減速。政策金利は2022年6月の0%から2007年以来の3.75%となった。急速な引締め転換から1年、利上げの累積効果が経済活動に色濃く出てくるタイミングを迎えている。

欧米債券市場では2022年後半から所謂“逆イールド”状態となり2023年には不況入りか?と騒がれた。米国での過去の事実を見ても逆イールドになるとその後ほぼ間違いなくリセッションになっている。

米国トレジャリー市場は基軸通貨国の国債市場であり、多様な目的を持った多くの投資家が参加しており、世界で最も合理的で最も流動性の高い市場と言われる。その市場が発するサインに間違いはないという意見は根強い。一方、株式市場ではもう少し楽観的な見方が多いような気がする。企業業績にはそれほどの落ち込みは見られず、雇用市場も減速しているもののインフレの低下もあり今回はリセッションだとしても非常にマイルド。2022年の安値を下回るような株価下落は考えられない…という意見が多いようだ。

債券運用担当と株式運用担当、昔から同じ“経済”を見ながら見る角度が違うのかなかなか意見が合わないこともあった。中には意見が違うだけで“あいつは○○村の人だから…”と陰口を叩く者までいた。見方の違いは“債券”と“株式”という有価証券の本質的な部分や、取引慣行等によって生まれてきたものだろう。債券市場は必ず深刻なリセッションが来ると言っているわけではなく、株式市場もソフトランディングだから株価下落がないと言っているわけでもない。マーケットに参加しながら自分と意見が違うというだけで叩くなんてことをしたら具の骨頂だ。

佐久間 啓


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佐久間 啓

さくま ひろし

経済調査部 研究理事
担当: 金融市場全般

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