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4月英国消費者物価

~BOEの利下げ開始判断を難しくする物価上振れ~

田中 理

要旨
  • 22日に発表された4月の英国の消費者物価は前年比+2.3%と前月の同+3.2%から大幅に上昇率が鈍化したが、BOEの想定(同+2.1%)を上振れし、利下げ開始時期の判断を難しくする。内訳は、4月からの家庭向けエネルギー料金の上限引き下げを反映し、エネルギー価格(前月:同▲12.7%→今月:同▲16.7%)の下落率が再拡大したことに加えて、大幅な上昇が続いてきた食料品価格(同+4.0%→同+2.9%)、昨年3月中旬のたばこ価格の引き上げ(引き上げがフルに反映されたのは翌4月)が一服したアルコール飲料・たばこ価格(同+12.1%→同+8.1%)、変動が大きいエネルギー・食料・アルコール飲料・たばこを除いたコア物価(同+4.2%→同+3.9%)が揃って上昇率が鈍化した。コア物価の3%台は2021年10月以来となる。
  • 昨年4月に値上げが行われたエネルギー料金、電話料金、たばこ価格などの反動減に支えられ、今月の消費者物価は上昇率が大幅に鈍化し、2%の物価安定達成も視野に入ってきた。コア物価の内訳をみると、衣料・履物(同+4.0%→同+3.7%)や家財道具(同▲0.9%→同▲1.0%)など、沈静化が進んできた費目もあるが、娯楽サービス(同+5.1%→同+7.1%)や宿泊(同+6.0%→同+7.1%)など上昇率が加速する費目もあり、サービス価格(同+6.0%→同+5.9%)を中心に高止まりが続いている。14日に発表された5月の労働統計でも、労働需給がやや緩和した一方で、賃金は前年比6%台での高止まりが確認された。
  • こうしたサービス価格の高止まりを反映し、インフレ率は5月の金融政策委員会(MPC)時点の想定を上振れしている。4月のMPCでは、利下げを主張する政策委員が2名に増え、中期的な物価見通しが2026年半ば以降に2%の物価目標を下回る形に下方修正され、ベイリー総裁が6月の利下げ開始を排除しなかったため、早期利下げ開始観測が高まった。だが、今回の物価上振れはそれを打ち消す内容で、物価の予想以上の粘着性の高さが示された。6月MPCでの利下げ開始を判断する材料が揃わず、利下げ開始は8月以降にずれ込む公算が大きい。

図表を含めた詳細についてはPDFファイルをご覧ください。

田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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