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2021.07.19
アジア経済
新型コロナ(経済)
インドネシア経済
インドネシアの感染悪化は日本経済にとって「対岸の火事」ではない
~ワクチン接種の遅れもあり事態収束は見通せず、輸出や企業業績への悪影響は必至~
西濵 徹
- 要旨
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- インドネシアでは変異株による感染拡大の「第3波」が顕在化しており、政府は今月初めに緊急措置の発動による行動制限の再強化に動いた。ただし、政府は景気への悪影響を懸念して都市封鎖には及び腰であり、足下では人の移動に下押し圧力が掛かるも、新規陽性者数は急拡大して医療ひっ迫が顕在化している。ワクチン接種も大きく遅れるなか、人口規模の大きさや地理的な問題を勘案すれば事態収束に時間を要する可能性がある。足下では同国のほかASEAN主要国が感染拡大の中心地となるなか、多数の日本企業が進出する同国の感染動向は日本経済や企業業績に悪影響を与えることは必至であり、対岸の火事ではない。
インドネシアでは、周辺国において感染力の強い変異株による感染再拡大の動きが広がるなか、先月以降に感染が再拡大する『第3波』の動きが顕在化したことを受けて、ジョコ・ウィドド大統領は今月初めから人口の多いジャワ島と観光地であるバリ島を対象に『緊急措置』の発動に踏み切るなど強力な行動制限に舵を切る動きをみせた(注1)。なお、同国における昨年来の新型コロナウイルス対策を巡っては、中央政府レベルでは景気への悪影響を警戒して都市封鎖(ロックダウン)など強力な感染対策に『及び腰』の姿勢がみられる一方、地方政府レベルでは行動制限による事実上の都市封鎖が実施されるといったちぐはぐな対応が採られてきた経緯がある。こうしたことから、政権は今回の緊急措置の発動に際してもこれまで同様に『感染対策と経済の両立』といった方針を堅持しており、行動制限を課す一方で公共交通機関は乗車人数を制限しつつ運航を継続するなど、人の移動への影響を極小化する対応が採られている。なお、先月初めにかけて底入れの動きを強めてきた人の移動については、その後の感染再拡大や政府による緊急措置の発動も影響して一転下押し圧力が掛かっており、行動抑制の面では一定の効果を挙げていると捉えることが出来る一方、インドネシアにとっては家計消費など内需が経済成長のけん引役となってきたことを勘案すれば、景気に急ブレーキが掛かることは避けられない。政府による緊急宣言の発令は新型コロナウイルスの感染拡大の一因とされる人の移動を抑制させるなど一定の効果を挙げているとみられるものの、その後の新規陽性者数は急拡大しており、足下では1日当たりの新規陽性者数が5万人を上回る水準となるなど、同国は世界的にみても感染拡大の中心地となっている。さらに、感染の急拡大を受けて医療インフラに急激に圧力が掛かるなか、感染拡大の中心地である首都ジャカルタなどのみならず、元々医療インフラが脆弱な地方部においても感染が急拡大することによる医療ひっ迫が顕在化しており、死亡者数も拡大傾向を強めている。また、先月以降は同国を含むASEAN(東南アジア諸国連合)諸国が感染拡大の中心地の一角となってきたが(注2)、今月18日時点における人口100万人当たりの1日当たりの新規陽性者数(7日移動平均)はマレーシアが353人、インドネシアは185人、タイは145人とASEAN主要国の感染動向はこの1ヶ月ほどの間に一段と悪化している。このように急速に感染動向が悪化している背景には、同国をはじめとする多くのアジア新興国でワクチン接種が遅れていることがあり、今月17日時点における完全接種率(必要な接種回数をすべて受けた人の割合)は5.93%、部分接種率(少なくとも1回は接種を受けた人の割合)も15.09%に留まるなど、ワクチン接種を巡って感染者数が急減する『閾値』とみられる40%を大きく下回っている。なお、同国では日本や米国によるワクチンの無償供与に加え、中国によるいわゆる『ワクチン外交』の動きも活発化しているものの、2.7億人という人口規模の大きさに加え、1.3万以上の島で構成される地理的な問題も相俟って早期の事態収束を図ることは難しいとみられる。同国はASEAN最大の人口を擁するなど経済的な中心地であることから多くの日本企業が進出するとともに2万人弱の在留邦人が居住しており、在留邦人にも多数の感染者や死亡者が発生するなど現地コミュニティにも甚大な影響が出ている。同国をはじめとするASEAN諸国の状況は日本経済、企業にとって輸出や売り上げなどを通じて悪影響を与えると予想されるなど、対岸の火事ではないと捉えることが必要と言える。



注1 7月2日付レポート「インドネシア、感染動向の急激な悪化を受けて「緊急措置」に舵」
注2 6月15日付レポート「感染拡大の中心地となりつつあるASEAN情勢を考察する」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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