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2024.03.21
アジア経済
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インドネシア経済
為替
インドネシア中銀、引き続きルピア相場の安定を重視する展開
~米FRBの利下げを前提に年後半の利下げ余地に言及も、外部環境如何の状況は変わらない~
西濵 徹
- 要旨
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- インドネシアで先月実施された大統領選ではプラボウォ国防相が当選し、10月に就任することが決定した。他方、ここ数年の同国はインフレ昂進に直面したが、昨年はインフレが一転頭打ちしてきた。ただし、足下では食料インフレやルピア安による輸入インフレの懸念がくすぶるなか、中銀は引き締め姿勢を維持せざるを得ない状況が続いている。足下の景気は一見堅調さを維持するも、内需は頭打ちしており利下げが意識されやすい状況にある一方、ルピア相場を勘案すれば外部環境を意識せざるを得ない状況に直面する。
- 中銀は20日の定例会合でも5会合連続で政策金利を据え置いている。ルピア相場の安定を重視する一方、景気に配慮する難しい対応を迫られている様子がうかがえる。内外経済の見方を据え置きつつ、ルピアの安定を目的に為替介入を強化している模様である。その上で、先行きは米FRBの利下げを前提に利下げ余地が生じるとの見方を改めて示すも、基本的に外部環境如何となる状況は変わらないと捉えられる。
インドネシアで先月実施された大統領選を巡っては、直後にプラボウォ国防相が勝利宣言を行うなど『三度目の正直』を果たしたとみられ(注1)、選挙管理委員会は20日に同氏が当選した旨を発表しており、10月に就任することとなった。他方、一昨年来の同国においては商品高や国際金融市場における米ドル高を受けた通貨ルピア安に伴う輸入インフレが重なり、インフレが大きく上振れして一時は7年ぶりの高水準となる事態に直面した。よって、中銀は一昨年後半以降に物価と為替の安定を目的に累計250bpもの断続利上げを余儀なくされたものの、インフレが高止まりするなかで物価高と金利高が共存するなど実体経済に悪影響を与えることが懸念された。なお、一昨年末以降は商品高の動きが一巡しているほか、こうした動きも追い風にインフレは頭打ちに転じており、足下のインフレは中銀目標の範囲内で推移するなど落ち着きを取り戻している様子がうかがえる。しかし、昨年のインフレ鈍化の動きは前年に加速した反動が大きく影響している上、足下ではエルニーニョ現象など異常気象による農作物の生育不良を理由とする食料インフレなど、生活必需品を中心にインフレ圧力がくすぶる状況が続いている。さらに、昨年末以降の国際金融市場においては米ドル高の動きに一服感が出る動きがみられたものの、年明け以降は米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げに対する観測が揺れる度に米ドル高が意識されるとともに、ルピア相場は上値が抑えられる展開が続いている。よって、輸入インフレの再燃が警戒されるなか、中銀はルピア相場の維持を目的にスポット市場、ルピア建ノンデリバラブルフォワード市場、債券市場の3市場における為替介入に動くなどの対応を迫られているものとみられる。他方、昨年の経済成長率は+5.05%と堅調な推移をみせているものの、前年(+5.31%)から鈍化するとともに政府目標(5.3%)をも下回っているほか、その内容を巡っても金利高が長期化するなかでその累積効果が足かせとなる形で家計消費をはじめとする内需は力強さを欠いており、見た目と比べて厳しい状況に直面していると捉えられる(注2)。上述のように足下のインフレは一見すると落ち着きを取り戻しており、景気に配慮すれば中銀による利下げも選択肢に入ることが考えられる一方、仮に中銀が利下げに踏み切ればルピア安を通じた輸入インフレを誘発させる可能性があるなか、中銀としては金融市場環境にも配慮せざるを得ない難しい状況に直面している。


こうしたなか、中銀は20日に開催した定例会合で政策金利である7日物リバースレポ金利を5会合連続で6.00%に据え置く決定を行っている。会合後に公表した声明文では、今回の決定について「安定と景気下支えの相乗効果を狙ったもの」とした上で、「中央政府や地方政府を含む様々な戦略的パートナーとの政策協調を強化している」との考えを示している。その上で、世界経済について「金融市場を巡る不確実性は依然高いものの、米国とインド経済の堅調さを追い風に回復のモメンタムは続いている」と先月の定例会合で示した見方を維持するとともに、同国経済についても「力強さを維持しており、今年の経済成長率は+4.7~5.5%となり、経常赤字もGDP比▲0.9~▲0.1%と小幅に留まる」との見方を据え置いている。また、ルピア相場についても「中銀による安定化措置により管理可能な展開が続いている」との認識を示した上で、「周辺諸国の通貨と比較しても下落幅は小幅に留まっており、今後は上昇が見込まれる」としつつ、為替介入などを通じた対策を強化する考えをあらためて示している。物価動向についても「目標域内で推移している」ものの「エルニーニョ現象の影響による食料インフレが続いている」とした上で、先行きは「TPIP(中央インフレ抑制チーム)とTPID(地域インフレ抑制チーム)の協働やGNPIP(食料インフレ抑制運動)によるインフレ抑制の動きが強化される」との見通しを示している。会合後に記者会見に臨んだ同行のペリー総裁は今回の決定について「ルピア相場の安定とインフレを目標域に抑えることを目的としたもの」としつつ、「マクロプルーデンス政策は引き続き景気下支えを目指したものとなっている」との認識を示している。その上で、米国の金融政策について「米国経済は依然として堅調な上、足下のインフレが目標を上回るなかで年後半に利下げに動くと予想している」としつつ、「金融市場は米FRBの利下げ開始時期について読み違いをする展開が続くであろう」との見方を示している。そして、「基本シナリオでは年後半にも利下げ余地が生じると予想している」としつつ、「もちろん利下げを先行させることも遅らせることもあるが、インフレを含む経済指標次第で決定する」とした上で、「日本銀行による決定が資金動向やルピア相場に大きな影響を与えるとは想定しておらず、依然として米ドルによって左右される状況が続いている」との見方を示している。また、「食料インフレの動きは一時的なものであり、政策運営に影響を与えることはない」として、追加利上げに動く可能性は低いとの見方を示した格好である。とはいえ、ルピア相場の安定を重視する観点では今後も為替介入に頼る展開が続くと見込まれる上、外貨準備高は国際金融市場への耐性をギリギリ確保する状況にあることを勘案すれば、政策運営は引き続き外部環境如何の対応が続くと予想される。なお、プラボウォ氏が次期大統領に就任することが決まったことを受けて、現職のジョコ大統領が推進するヌサンタラへの首都移転が推進される模様だが、これに関連して「法律に基づけば中銀本店は首都に置かれることになるが、業務は引き続きジャカルタで行われることになろう」との見方を示すなど、引き続きジャカルタで業務を継続する見通しを示している。

注1 2月15日付レポート「インドネシア大統領選、プラボウォ氏が「三度目の正直」へ勝利宣言」
注2 2月5日付レポート「インドネシアの2023年成長率は+5.05%、数字は堅調も内容は「イマイチ」か」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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