暮らしの視点(11):外出の自粛と家族関係

~自宅で過ごす時間、自宅を離れる時間の意味~

北村 安樹子

目次

1.シニア世代における子どもとの別居交流志向

以前、別稿(注1)で述べたように、子や孫との関係に関するシニア世代の価値観は、いつも一緒に生活し、生活時間や生活空間の多くを共有する同居志向から、互いに自立した別々の暮らしを標準として、ときどき会って食事や会話などの交流の時間をもつ別居交流志向に変化してきている。先日公表された最新の調査結果によると、このような傾向はさらに強まったことが明らかになった(注2)。
 本稿では、子どもとの同居や近居に対するシニア世代の意向と実際の住まい方についてのデータを紹介し、コロナ禍における外出の自粛と家族関係について考えてみたい。

2.「同居」ではない「近居」志向

内閣府が行った「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」には、全国60歳以上の男女を対象として、将来的な子どもとの同居や近居の意向をたずねる設問がある。その結果をみると、回答者全体の3人に1人が「同居したい」(34.8%)と答えた一方、「同居でなく、近居したい」と答えた人が29.0%を占めた。これらに「同居か近居のどちらかをしたい」(9.6%)を加えた7割強の人は、子どもと同居もしくは近居したいと答えていることになる(図表1)。一方、「同居も近居もしたくない」という人は回答者全体の18.9%を占め、女性より男性で多くみられる。
 サンプル数や公表データは限られるが、ここでは同居子・別居子の有無や世帯形態による実態と意向の一致状況に注目する。まず、同居子がいると答えた人では、その7割以上が実際と同じように将来的にも同居(または近居のどちらかを)したいと答えており、将来的に「同居ではなく、近居したい」とした人は1割強にとどまっている。これに対して、別居子がいると答えた人の場合、その約4割が将来的には「同居ではなく近居したい」と答えているが、「どちらもしたくない」という人も3割弱を占める。いずれの場合も、実際の状況と意向が一致している人の方が多いが、一致していない人もみられる。一致していない人の割合を世帯形態別にみた場合、単身世帯や夫婦世帯の約1割に同居の意向をもちながら別居している人がいる。また、それ以外の子との同居世帯にも、実態よりも、もう少し物理的な距離をおく形の「近居」の意向をもつ人が2割弱程度、あるいはさらに距離をおく形の「どちらもしたくない」という人が1割前後みられるということになる。

図表1
図表1

3.外出の自粛と家族関係~自宅で過ごす時間、自宅を離れる時間の意味~

多世代家族の同居生活には、経済面での規模のメリットや家事・ケアの面での助け合いが働く場合もある一方、それらの関係性やライフスタイルの違いが、家族との関係を複雑にしているケースもある。先にみたような現実の住まい方と意向の不一致にも、経済的理由をはじめ、多様な理由があるだろう。こうしたなか、コロナ禍で外出自粛が強く求められた時期には、将来的には現状よりも物理的な距離をとった暮らしを望みながら同居生活をおくっていた家族において、自身や家族が自宅で過ごす時間が長くなるなどして互いに気を遣う場面が増えて、日々の暮らしの閉塞感が強まったケースもあったのではないか。また、将来的な希望と一致する形で同居生活をおくっていた家族のなかにも、外出を自粛する生活が続くなかで、互いの外出が、家族の距離感を保つよい時間になっていたと感じたケースもあっただろう。
 同居家族の暮らしでは、生活スペースなどの工夫で互いの暮らしやすさを高める方法もあるが、自宅内でのライフスタイルや、自宅内外で過ごす時間帯を工夫することで、家族の程よい距離感が保たれているケースもある。コロナ禍にともなって多くの人々が経験した外出自粛の生活は、家族のライフスタイルにも多様な形で影響した可能性がある。自身や家族が自宅で過ごす時間が増えた経験を通じてそのような影響に気づき、生活を新たな形で見直した人もいるのではないだろうか。

【注釈】
1)北村安樹子「暮らしと視点(8):親子の「程よい距離感」への新たな志向~リアルの「近さ」がもたらす安心と自立のバランス~」
https://www.dlri.co.jp/report/ld/153601.html

2)内閣府「[第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査]」2021年3月
https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/r02/zentai/pdf_index.html

北村 安樹子

北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 主任研究員
専⾨分野: 家族・ライフコース

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