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- 時評『「ライフデザイン」の必要性喚起と定着に向けた国の動き』
2024年度、経済産業省は、「ライフステージを支えるサービス導入実証等事業」(キャリア形成に資するサービス導入環境の構築実証)の一環として、ライフデザインサービスの社会実装に向けた導入実証と調査を実施した。
近年のようなライフコースが多様化した社会において、キャリアや資産形成、健康・病気、妊娠・出産等に関する情報をライフデザインサービスとして体系的に提供することは、人生の主体的・自律的な自己決定を支える上で重要な意味を持つ。これらは、多様な生き方・働き方の実現につながり、個人のウェルビーイングが向上するほか、少子化や地方からの人口流出、企業の人手不足等、様々な社会課題解決への貢献が期待される。
この観点から、本プロジェクトでは、ライフデザインサービスの創出と効果の見える化を目的として、学校や大学、自治体、企業等、多様な場面での展開を想定し、採択された複数の事業者による実証事業が行なわれた。また、サービス提供の在り方やサービスの質の向上、横展開を促進する上での課題対応策の検討・整理が行なわれた。
さらに、国内企業を対象としたアンケート調査により、従業員のウェルビーイング実現に向けた取組実態やライフデザイン支援の取組実態等に関する情報を取得したうえで、ライフデザイン支援により、組織や個人にどのような影響があるかについての分析も行われた。
一連の検討結果は「ライフデザインサービスの創出・育成に向けた検討会報告書」(2025年3月)としてまとめられ、近日中に公開予定である。各取組の成果をもとに、引き続きライフデザインサービスの認知度・重要性の認知向上、企業の導入メリットの明確化等の推進が目指されている。
本プロジェクトには筆者も検討メンバーとして参画し、第一生命経済研究所における30年以上のライフデザイン研究の知見を提供した。さらに、同じく30年以上の歴史を有する「ライフデザイン白書」シリーズの、「ウェルビーイングを実現するライフデザイン」(2023)や「『幸せ視点』のライフデザイン」(2021)等から、ライフデザインを行うことがウェルビーイングの向上につながる点についての連携を行った。
国としてのこれらの動きの背景には、現在、今までになくライフデザインが必要な時代となっていることがあるといえる。同質的で画一性の高い「ライフデザイン1.0」時代(昭和)は、モデル的なライフコースを歩んでいれば、将来への心配は大きくなかった一方で、そのライフコースを逸脱することのハードルが高く、人生における選択の自由度が低かった。「ライフデザイン2.0」時代(平成)は、多様化が進んで人生の選択肢が広がり、結婚や出産も自己裁量によるところが大きくなるなど、人生における選択の自由度は高まったが、将来への見通しが立ちにくくなったことに加え、自己責任部分が拡大し、迷走する人も少なくなかった。これに対し、「ライフデザイン3.0」時代(令和)は、ありたい未来を自ら描き、その実現に向けて今をデザインするものとして提唱している。これは寿命と資産のバランスに主眼を据える人生設計だけではなく、日々を充実させ、幸せを体感することを目的とするものである。
人生は選択の積み重ねである。しかし選べる自由があることこそが、ウェルビーイングの原点であることを意識する機会は少ない。ライフデザインは、選べる未来を保ち、創り出すための手段である。だからこそ、ライフデザインとウェルビーイングに正の相関があると考えられる。
今、政府や多くの企業が「幸せ(ウェルビーイング)」視点でのマネジメントに舵を切っている。この背景には、幸せを体感する人が多い社会では多大なエネルギーが創出され、組織が活性化することが明らかになってきたことがある。日本の未来を考える上でも、まずは個人の活力を増強させることが重要であり、そのベースとして一人ひとりがウェルビーイングを見据えた「ライフデザイン」を行うことが重要であるとの認識があるからこそ、国としても推奨しているといえる。
当研究所としても、次世代に向けたライフデザインについて積極的に発信していきたい。
宮木 由貴子
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

