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2024.10.18
新興国経済
ロシア経済
ウクライナ問題
内外経済ウォッチ『アジア・新興国~ロシアは経済を維持する観点から戦争を止められないのかもしれない~』(2024年11月号)
西濵 徹
ロシア経済は欧米などの経済制裁の影響を克服
一昨年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻から2年半以上が過ぎるも、依然としてその行方は見通せない展開が続く。ウクライナ戦争開始直後には、欧米などがロシアに課した経済制裁を強化し、ロシア景気に深刻な悪影響が出た。しかし、ここ数年の世界経済は分断の動きが広がるなか、ロシアは欧米などと距離を取る一方、中国やインドなど新興国との関係を深化させている。さらに、欧米などの経済制裁にも拘らず、実際には中央アジア諸国、トルコなどを通じた迂回貿易や並行貿易を通じて欧米などの製品やサービスがロシアに流入している。そして、中国やインドなど新興国との貿易拡大は、経済制裁を受けた欧米など向けの輸出減を補って余りある展開をみせるほか、欧州も依然ロシア産天然ガスの輸入に依存している。
このように欧米などによる経済制裁には様々な形で『抜け穴』が存在し、開戦直後に大きく下振れした景気は一転して底入れの動きを強めており、足下の実質GDPも開戦直前を上回るなど克服が進んでいる。なお、足下の景気が底入れの動きを強める一因には、GDPのマイナス寄与となる輸入が経済制裁の影響で下振れしていることも影響している。他方、戦時経済が長期化するなか、ロシア国内では前線における軍備増強の観点から軍事関連産業のフル稼働が続いており、軍事関連産業がGDPの1割弱となるなど存在感を高めていることもある。

ロシアは戦争の長期化を見込んでいる可能性も
政府が連邦議会に提出した2026年度予算案では、国防費が今年度予算対比で25%増の13.5兆ルーブルとなり、歳出全体(41.5兆ルーブル)の32.5%に達することとなった。なお、2025年度予算案では翌26年の国防費は2割程度減少されるとしていたが、ウクライナ戦争が先のみえない展開が続くなかで一段の増大を余儀なくされている。そして、27年の国防費は対前年比▲5.2%減の12.8兆ルーブルとするも状況が早期に好転するとはみていないと想定される。また、国防費と別に安全保障機関に関連する歳出を併せると歳出全体の42%に達する。他方、歳入減を見込むなかで国民福祉基金をはじめとするソブリン・ウェルス・ファンドの取り崩しなどが見込まれるものの、対外準備資産の動向をみれば継戦能力は依然高いと判断できる。
一方、戦争長期化による労働力不足のほか、欧米などの経済制裁強化の余波を受ける形で輸入コストが押し上げられる動きもみられるなか、足下のインフレは加速の動きを強めており、中銀は戦時下にも拘らず物価抑制を目的とする断続利上げを余儀なくされるなど難しい状況に直面している。来年度予算案の内容をみる限りにおいて、ロシアが自発的にウクライナ戦を止める可能性は低いと見込まれるほか、軍事産業が一大産業となっていることを勘案すれば経済を支える観点でも戦争を止めるに止められない状況に陥っている可能性に留意する必要がある。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

