Side Mirror(2023年8月号)

佐久間 啓

企業の景況感を表す代表的な指標であるS&P Globalのグローバル製造業PMIは2022年9月から足元6月まで10か月連続で好不調の基準である50を下回って推移している。

2020年のコロナ禍ではリモートワークがノーマルになり、行動制限から所謂巣ごもり需要が拡大し関連商品の売上が拡大したことから製造業は生産活動を活発化させ景況感も上昇。特に先進国製造業の好調さが目立った。その後2021年後半には経済再開に伴うサプラチェーンの混乱や原材料コストの上昇、巣ごもり需要のピークアウト等によって景況感が下がり始め、2022年9月から50を下回り、6月は48.8。

製造業PMIは企業の景況感を調査、纏めたものではあるが、過去のデータを見るとPMIがピークアウトすると株価もピークアウト、PMIがボトムアウトすれば株価もボトムアウトという関係が割ときれいに見られる。製造業の景況感の波が経済全体の好不調の波を先導していると考えられているからこその反応である。

ところが、このところ製造業が不調のはずの先進国で株価が堅調だ。サービスにはペントアップ需要は出にくいと言われていたが、流石にコロナ禍の行動制限から解放された人々はサービス消費を拡大させている。特に米国では大幅な財政支出による超過貯蓄にも支えられインフレの中でも実質消費は比較的堅調だ。株価も製造業を見て売ってはみたものの、金融引締めのなかでもサービス業が好調で全体として企業業績も心配したほど悪化してこない…であれば“持たないリスクは大きい”と感じたようだ。所謂あせりの感覚だ。

製造業PMIが低迷するなかで株価が反転、上昇というパターンはこれまで見たことがない。これは株価が景気のボトムアウトを先取りしているだけなのか(それにしても過去の動きからすると早過ぎるが)、それともリセッションまで織り込んでいた水準訂正なのか。その答えは意外に早く出るような気がする。

佐久間 啓


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佐久間 啓

さくま ひろし

経済調査部 研究理事
担当: 金融市場全般

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