速報データが示す鋭角な改善

~給付金握りしめ旅行・レストラン~

藤代 宏一

目次
  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月105程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年に資産購入の減額を開始するだろう。

金融市場

  • 前日の米国株は下落。NYダウは(▲0.9%)、S&P500は(▲0.8%)、NASDAQは(▲1.1%)で引け。議会証言でパウエル議長は金利上昇を牽制せず、むしろ「いくつかの資産はやや高い」として資産市場を牽制。VIXは20.3へと上昇。社債市場はIG債(投資適格)、HY債(投機的格付)が共に概ね横ばい。
  • 米金利カーブはブル・フラット化。2年債入札を通過した安心感などからカーブ全体で大幅に金利低下。四半期末の買い需要もあったとみられる。予想インフレ率(10年BEI)は2.299%(▲2.3bp)へと低下し、債券市場の実質金利は▲0.681%(▲5.1bp)へと低下。
米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ
  • 為替(G10通貨)はUSDとJPYが強かった。USD/JPYは108後半で一進一退も、EUR/USDは1.18半ばへと低下。コモディティはWTI原油が57.8㌦(▲3.8㌦)へと大幅に下落し、銅も8980.5㌦(▲128.0㌦)へと低下。金は1725.1㌦(▲13.0㌦)へと低下した。安全資産「金」と景気の強さを反映する「銅」の相対価格は低下。ビットコインも軟調。
主要通貨の変動値 WIT原油・銅
主要通貨の変動値 WIT原油・銅
主要通貨の変動値
主要通貨の変動値
 WIT原油・銅
 WIT原油・銅

注目ポイント

  • 速報性に優れた幾つかのデータは3月入り後の米経済が目覚ましい回復基調にあることを示唆している。マクロ指標ではNY連銀製造業景況指数フィラデルフィア連銀製造業景況指数が共に著しく改善。ISM換算した数値は前者が55.9へと1.6pt上昇、後者は65.3へと3.8pt上昇し異常値とも言うべきレベルに達した。この数値を基に推計した3月ISM製造業は60.6と、2ヶ月連続で60を上回ることを示唆した(2005年以降のデータで回帰)。また23日はリッチモンド連銀製造業景況指数のISM換算値が60.7へと2.0pt改善した。自動車販売を中心に耐久財への強い需要が続くなか、製造業は活況を呈している。

ISM・地区連銀サーベイ
ISM・地区連銀サーベイ

  • ワクチン接種が進展する下でコロナ感染状況が好転し、3月入り後は人々の移動が復活しつつある。在宅勤務の浸透やオンラインショップの利用拡大によってモビリティデータ(Google)でみると、さほど大きな変化はみられないものの、飛行機による移動は急速に回復している。日次のTSAデータによると3月22日時点の7日平均値は134万人、2019年対比で▲44%の水準まで持ち直しており、鋭角な回復が見て取れる。

空港利用状況
空港利用状況

  • 最も注目すべきはレストラン予約状況の回復。レストラン予約サイトOpen Tableが提供する日次データは2月中旬に回復傾向が強まり、3月中旬以降は更に増勢が強まっている。ニューヨークやカリフォルニアといった大都市を抱える州は2019年対比で依然大幅なマイナスも、テキサスなど一部の州はプラス圏に浮上するまで回復している。
  • 一般論として飲食店は労働集約的産業である。したがって客足の回復が雇用増加に結び付く傾向が強い。最近のレストラン予約状況の回復に鑑みると3・4月の雇用統計では、これまで落ち込みが激しかった飲食店等接客業(レジャー・ホスピタリティ)の大幅な回復が期待される。

レストラン利用状況・雇用
レストラン利用状況・雇用

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。