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2023.12.01
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OPECプラスは協議難航の後、有志国が3ヶ月間の自主減産で合意
~8ヶ国で計日量220万バレルの自主減産も実質的に減産縮小、当面の原油価格は上値が重いか~
西濵 徹
- 要旨
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- 足下の世界経済を巡っては全体として減速が意識されるなど不透明感が高まっている。OPECプラスによる協調減産に加え、サウジ、ロシアなどが年末までの自主減産に動いたが、世界経済の減速懸念を受けて原油相場は頭打ちの動きを強めている。OPECプラス内ではサウジなどが価格維持を重視する一方、アフリカの産油国は輸出拡大による景気下支えを目指すなど意見対立が表面化している。OPECプラスは先月26日に閣僚級会合を予定するも、意見がまとまらず30日に延期された。最終的にはOPECプラスの協調減産を維持しつつ、有志国が1月から3月まで日量220万バレルの自主減産に動くことを決定した。ただし、有志国の自主減産は実質的に小幅に留まり、当面の原油価格は上値の重い展開が続くと予想される。
足下の世界経済を巡っては、昨年末以降のゼロコロナ終了にも拘らず中国景気は勢いを欠く展開をみせるとともに、再び頭打ちの様相をみせる動きがみられる上、コロナ禍後の回復をけん引した欧米など主要国も物価高と金利高の共存が長期化するなかで陰りが出るなど、全体として不透明感が高まっている。主要産油国の枠組であるOPECプラスは、昨年11月に世界需要の2%に相当する日量200万バレル規模の協調減産に動いたほか、今年3月にはロシアが同50万バレルの自主減産に動くとともに、5月からはサウジアラビアによる同50万バレルの自主減産に加え、8ヶ国の合計で同約116万バレルの自主減産に動いてきた。その後もサウジアラビアは7月に追加的に日量50万バレルの自主減産に動くとともに、8月にはロシアも追加的に同50万バレルの自主減産に動いたほか、減産期間を年末まで延長するなど供給を絞る動きを強めた。この背景には、世界経済の減速が意識されるなかで国際原油価格は頭打ちの動きを強めるなか、サウジアラビアは原油価格の財政均衡水準が高いことに加え、ロシアは昨年のウクライナ侵攻をきっかけとする欧米などによる経済制裁に伴いロシア産の原油価格に上限が設けられており、両国にとって国際価格を高値で維持させることの誘因が大きいと捉えられる。これらの自主減産の動きを受けて世界需要の5%強に達する日量約518万バレルが減産される格好となるとともに、北半球において原油需要が高まる時期と重なったこともあり、その直後には原油の国際価格は底入れする動きが確認された。しかし、その後は世界経済の減速懸念が意識されるなかで再び頭打ちの動きを強めており、サウジアラビアにとっては自主減産の影響で足下の景気が下振れしているにも拘らず、原油価格は財政均衡水準を下回るなど『弱り目に祟り目』の状況に陥っている(注1)。他方、OPECプラスの枠内においては、上述のようにサウジやロシアなど価格安定を志向する国がある一方、アフリカの産油国を中心にコロナ禍を経て経済が疲弊するなかで原油の輸出拡大を通じた景気回復を優先させたい国も少なくないなど、協調減産が長期化するなかでその割当を巡って不満が噴出する動きもみられた。こうしたなか、先月26日にOPECプラスの閣僚級会合の開催を予定していたものの、直前になって30日に延期することが発表されるなど、加盟国間の意見集約が難しくなっていることが露呈する動きがみられた。30日に改めて開催されたOPECプラスの閣僚級会合では、最終的にOPECプラスとしての協調減産の枠組を維持する一方、アフリカの産油国の間で噴出する不満に対応すべく、3ヶ国の生産目標を調整する方針が示された(ナイジェリア(日量150万バレル)、アンゴラ(同111万バレル)、コンゴ(同27.7万バレル))。他方、自主減産の枠組は年末に終了することに対応して、来年1月から3月までを対象に8ヶ国が日量220万バレルの自主減産を行うことを明らかにしており、内訳はサウジ(同100万バレル)とロシア(同50万バレル)に加え、イラク(同22.3万バレル)、UAE(同16.3万バレル)、クウェート(同13.5万バレル)、カザフスタン(同8.2万バレル)、アルジェリア(同5.1万バレル)、オマーン(同4.2万ドル)となる。なお、サウジとロシアの自主減産は元々年内まで実施されているものの延長であるほか、その他の有志国による自主減産の枠そのものも大きく拡大していないなど、供給を巡る状況は大きく変化しないものと捉えられる。他方、来年1月からは世界有数の産油国であるブラジルがOPECプラスに加盟することが明らかになっているものの、同国は協調減産には加わらない見通しであるなど供給抑制に繋がるとは見込みにくい。事前にはOPECプラスが大幅な協調減産に動く可能性が取り沙汰される動きがみられたものの、結果的にはそうした予想を下回る内容に留まった。その背景には、ロシアの原油価格が足下においても欧米などが設定した上限(1バレル=60ドル)を上回る推移が続いており、財政均衡水準を下回るサウジに比べて自主減産に動く切迫感が薄いことも影響していると考えられる。その意味では、当面の原油価格は世界経済の減速懸念による需要鈍化が警戒される形で需給の緩みが意識されやすく、上値が抑えられる展開が続く可能性は高まっていると判断出来る。
注 11月1日付レポート「サウジは「自腹を切る」自主減産をいつまで続けられるか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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