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2023.11.01
アジア経済
原油
その他アジア経済
産油国経済
サウジは「自腹を切る」自主減産をいつまで続けられるか
~原油価格は思惑に沿う展開も景気は大きく下振れ、原油価格を睨みながらの展開が続くであろう~
西濵 徹
- 要旨
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- 年明け以降は世界経済の不透明感が強まるなか、OPECプラスは原油価格の維持を目的に協調減産を拡大・延長させたほか、サウジとロシアは自主減産に動いて年末まで延長させている。足下では中東情勢を巡る不透明感も相俟って原油価格は高止まりするなど両国の思惑に沿った動きが続く。他方、自主減産は景気の足かせとなり、7-9月の実質GDP成長率は前年比▲4.5%と下振れしている。当面は原油価格の高止まりが財政を通じて景気下支えを促すと見込まれる一方、自主減産が足かせとなる状況が続くと見込まれる。サウジが「自腹を切る」自主減産を今後も続けられるか否かは、原油価格の動向が左右するであろう。
年明け以降の世界経済を巡っては、昨年末以降のゼロコロナ終了にも拘らず中国経済は勢いを欠く展開が続いているほか、コロナ禍後の回復をけん引してきた欧米など主要国も物価高と金利高の共存長期化により頭打ちが意識されるなど、不透明感が高まる展開が続いている。昨年来の国際原油価格は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けた欧米などの対ロ経済制裁強化を機に供給懸念が意識される一方、欧米など主要国を中心とする景気回復による需要拡大を受けて大きく上振れするも、その後は一転して頭打ちの動きを強めた。よって、主要産油国の枠組であるOPECプラスは価格維持を目的に協調減産枠の拡大に動いたものの、その後も国際原油価格は上値の重い展開が続いたため、OPECプラスは協調減産の枠組そのものを延長した上で、枠内で最も産油量が大きいサウジアラビアは追加で自主減産を決定し(注1)、サウジは自主減産を延長して先に自主減産に動いたロシアもこれに追随したほか(注2)、その後も両国は自主減産を年末まで一段と延長する動きをみせた。両国がこうした動きを続ける背景には、サウジは原油価格の財政均衡水準が比較的高いほか、ロシアも欧米などの制裁により原油価格に上限が設定されており、ともに国際原油価格を高止まりさせることの誘因が大きいことが影響したと考えられる。なお、上述のように世界経済を巡る不透明感が高まる展開が続くことが国際原油価格の重石となることが懸念されたものの、その後の国際原油価格は両国の自主減産により世界需要の5%程度の供給が縮小されたことを受けて底入れした。さらに、足下においては中東情勢を巡る不透明感が高まるなかで国際原油価格は上昇の動きを強めるとともに、事態の長期化が意識されるなかで高止まりするなど両国の『思惑』に沿った展開となっている。他方、自主減産の実施、及び延長の動きはサウジ経済に大きな痛手を伴う事態を招いている。7-9月の実質GDP成長率(速報値)は前年同期比▲4.5%と10四半期ぶりとなるマイナス成長に陥っており、前期比年率ベースでは3四半期連続のマイナス成長となるテクニカル・リセッションとなっている上、マイナス幅は二桁と大幅に拡大したと試算されるなど、同国経済は厳しい状況に直面している。非石油部門や政府部門が堅調な動きをみせているものの、石油部門の生産に大きく下押し圧力が掛かったことで景気全体の足を引っ張る動きが顕著となっている。他方、昨年は穀物をはじめとする商品市況の上振れを受けてインフレが加速する動きが確認されたものの、足下のインフレ率はその反動も影響して頭打ちの動きを強めており、インフレが景気の足かせとなる懸念は後退している。当面は原油価格の高止まりが歳入を下支えすることが期待される上、景気動向は政府部門への依存度を強めると見込まれるものの、自主減産が石油部門の重石となる展開が続くほか、非石油部門も勢いを失う可能性が示唆される状況にある。なお、コロナ禍以前においては、国際原油価格の低迷が長期化して財政均衡水準を下回る推移が続いたことを受けて、財政を下支えする観点からソブリン・ウェルス・ファンドの縮小を余儀なくされたものの、足下においては原油価格の高止まりが減少に歯止めを掛けているとみられる。当面は原油価格の高止まりが見込まれる上、財政を通じて景気の下支え余力に繋がることが期待されるものの、こうした『自腹を切る』形での自主減産をいつまで継続することが出来るか、今後は国際原油価格の動向を睨みながらの展開になるであろう。




注1 6月5日付レポート「OPECプラス、2024年末まで1年間の協調減産の枠組維持を決定」
注2 7月4日付レポート「サウジとロシアは自主減産により「同じ夢」をみることが出来るか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

