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ニュージーランド中銀、12 会合連続の利上げ決定と利上げ局面の打ち止めを示唆

~NZ ドルは米ドルに対して方向感を欠く展開が続く一方、日本円に対しては底堅い展開が続くと予想~

西濵 徹

要旨
  • ニュージーランド中銀は、24日に開催した定例会合において政策金利を12会合連続で引き上げる決定を行った。利上げ幅は25bpに縮小するも、政策金利は5.50%と世界金融危機直後以来の水準となる。中銀は先行きの物価について、これまでの利上げが需要動向に影響を与えて目標域の中央値に回帰するとの見方を示すとともに、先行きの政策運営について当面は抑制的な水準に維持することが必要との考えを示している。なお、同時に公表された経済見通しでは、政策金利は5.50%を上限としており、今回の利上げ決定により1年半強に及んだ利上げ局面の打ち止めを示唆したものと捉えられる。NZドル相場を巡っては、米FRBの政策運営に対する見方が定まらないことを反映して対米ドルでは方向感に乏しい展開が続く一方、日本円に対しては政策運営の方向感の違いを受けて底堅い展開が続くと見込まれる。

ニュージーランド経済を巡っては、感染収束を受けた経済活動の正常化に加え、欧米など主要国を中心とする世界経済の回復を追い風に景気は底入れするなど、コロナ禍による景気減速の影響を克服する展開が続いてきた。しかし、昨年来の商品高による食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とする物価上昇のほか、景気回復を受けた雇用改善の動きは賃金上昇圧力に繋がり、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨NZドル安は輸入インフレを招くなど、幅広くインフレが上振れする状況に直面している。コロナ禍に際して中銀(NZ準備銀行)は利下げや量的緩和の実施など異例の金融緩和に舵を切る動きをみせてきたものの、インフレの顕在化に加え、コロナ禍を経た生活様式の変化や景気回復を追い風とする不動産需要の拡大が市況上昇を招くなどバブル化が懸念される事態となった。よって、中銀は不動産価格の安定を目的に一昨年に住宅ローン規制(資産価値比率(LVR)規制)を再導入したほか(注1)、その後も金融政策の正常化、物価と為替の安定を目的に断続的、且つ大幅利上げに動くなど難しい対応を迫られた。インフレ率は昨年半ばをピークに頭打ちしたものの、その後も中銀の定めるインフレ目標を大きく上回る水準で推移するなど物価高が続く一方、金利高を受けて不動産市況は一転頭打ちの動きを強めるなど景気に冷や水を浴びせる懸念が高まった。事実、昨年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率▲2.46%と3四半期ぶりのマイナス成長に転じるなど頭打ちしているほか(注2)、年明け以降も1月には最大都市オークランドが記録的豪雨に見舞われたほか、翌2月にもサイクロンの接近により大洪水や土砂崩れ、高波に見舞われて巨額の被害が発生するなど景気に一段と下押し圧力が掛かる懸念が高まっている。こうした状況にも拘らず、直近1-3月のインフレ率は前年比+6.7%と前期(同+7.2%)から鈍化して5四半期ぶりの伸びとなるとともに、コアインフレ率も同+6.5%と前期(同+6.7%)から丸2年ぶりに伸びが鈍化に転じる動きをみせているものの、依然としていずれも中銀目標(1~3%)を大きく上回る推移が続いている(注3)。他方、住宅ローン規制の再導入や大幅利上げなどを理由に調整が続いた不動産市況は、国境再開や世界的な人の移動の活発化を追い風とする移民拡大の動きを受けて今年2月を底に上昇に転じるなど、不動産市況を取り巻く状況に変化の兆しが出ている。さらに、中銀は不動産市況を巡る状況変化を受けて、来月から住宅ローン規制の緩和に舵を切る方針を示しており(注4)、これに伴い不動産需要が喚起されることで景気が下支えされるとともに、不動産市況も再び押し上げられると期待される。そして、こうした対応は、上述のように足下のインフレ率が依然高水準で推移するなかで一段の利上げが行われる余地を生むと予想された。

図表1
図表1

図表2
図表2

こうしたなか、中銀は24日に開催した定例会合において、政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を12会合連続で引き上げる決定を行った。今回の利上げ幅は25bpと4月の前回会合時点の50bpから縮小しており、この決定によりOCRは5.50%と世界金融危機直後以来の水準となる。会合後に公表した声明文では、今回の決定について「抑制的な姿勢を維持したもの」とした上で「金利水準が支出とインフレ圧力の抑制に繋がるなか、インフレ目標への回帰を確実にするとともに、最大限の持続可能な雇用を支えるべく、当面は抑制的な水準に維持する必要がある」との考えを示した。さらに、世界経済について「景気は依然として弱く、インフレ圧力は緩和している」とした上で「世界経済の成長鈍化を受けて輸出価格が下振れしている」とする一方、同国経済について「インフレは一段と低下すると見込まれるが、生産能力に関する制約が残るなかでコアインフレの押し上げ圧力は残る」との見方を示している。一方、「家計消費や建設需要が鈍化しており、企業部門にとっては労働力不足より需要不足が活動の制約要因になっている」とするも、「国境再開により移民の底入れが進んでいるが、労働需給の緩和が期待されるもその影響は現時点では不透明」とする見方を示している。また、サイクロン被害に関連して「復興需要が建設関連を中心とする需要を下支えし、今後数年に亘って関連する財政支出も期待される」との見方を示すなど、将来的に景気を下支えするとの見通しを示している。なお、今回の決定については「5.25%に据え置くか、5.50%に引き上げるか」の二択で検討がなされたとしており、今回の利上げ決定について「これまでの見通しと一致している」とした上で、その理由として「現時点では過去の利上げが需要動向に緩やかな効果を上げているが、一段の利上げ実施によりインフレ率が目標域の中間点まで低下するとの確信が高まる」ことを挙げつつ、「5(25bpの利上げ)対2(金利据え置き)」で決定されたことが明かされた。同時に公表された経済見通しでは、OCRの見通しに関連して5.50%を上限とする見通しが示されるとともに、上述のように今回の決定に際して「当面は抑制的な水準に維持する必要がある」とされたことを勘案すれば、今回の利上げ実施により1年半強に及んだ利上げ局面の終了を示唆したものと捉えられる。足下の国際金融市場においては、米FRB(連邦準備制度理事会)の政策運営に対する見方が定まらない展開が続くなか、通貨NZドルの対米ドル相場は方向感に乏しい動きをみせており、当面は同様の推移が続く可能性は高いと見込まれる一方、日本円に対しては政策運営の方向性の違いが底堅さに繋がるであろう。

図表3
図表3

図表4
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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