インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

ニュージーランド景気は物価高と金利高が重なり3四半期ぶりのマイナス成長

~中銀想定を上回る景気下振れで利上げ期待後退か、ヒプキンス政権は難しい状況に直面している~

西濵 徹

要旨
  • 昨年来のニュージーランド経済は、コロナ禍の一巡による経済活動の正常化や欧米など世界経済の回復を追い風に底入れしてきた。他方、商品高に加え、NZドル安による輸入インフレや景気回復の動きも重なりインフレ率は高止まりしている。中銀は物価や為替の安定を目的に断続的、且つ大幅利上げを実施する一方、不動産価格は調整しており、物価高と金利高の共存も重なり景気に冷や水を浴びせることが懸念されてきた。
  • 昨年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率▲2.46%と3四半期ぶりのマイナス成長に転じた。国境再開により外国人観光客が底入れする一方、世界経済の減速懸念は財輸出の重石となったほか、繰り越し需要の一巡に加え、物価高と金利高の共存は家計消費を下押しし、住宅投資や企業の設備投資需要の足かせとなる動きもみられる。足下の景気は公的部門に対する依存度を高めていると捉えることが出来る。
  • 中国のゼロコロナ終了は景気の追い風になると期待され、年明け以降の企業マインドは底打ちする動きがみられる一方、自然災害の頻発により短期的な景気への悪影響が懸念される。他方、中銀は物価抑制へ軽微なリセッションを容認する姿勢をみせてきたが、想定以上の景気下振れにより利上げ期待が後退すると見込まれ、金融市場の混乱も重なり当面のNZドル相場は上値が抑えられよう。1月発足したヒプキンス政権にとっては、次期総選挙まで約7ヶ月を残すなかで経済の立て直しは待ったなしとなる難しい状況が続こう。

昨年来のニュージーランド経済を巡っては、国内ではコロナ禍の一巡による経済活動の正常化を受けて家計消費をはじめとする内需の底入れが進むとともに、国境再開を追い風に外国人観光客数も拡大したほか、国際金融市場での米ドル高を反映した通貨NZドル安による価格競争力の向上も財輸出を押し上げるなど、内・外需双方で景気の底入れを強める動きがみられた。他方、ウクライナ情勢の悪化をきっかけとする商品高が世界的なインフレを招くなか、同国においても食料品やエネルギーなど生活必需品を中心にインフレが顕在化しているほか、NZドル安による輸入インフレや景気回復の動きも重なりインフレは大きく上振れしている。さらに、コロナ禍対応を目的に中銀(NZ準備銀行)は利下げに加え、量的緩和の実施など異例の金融緩和に動いたものの、景気回復が進むとともに、コロナ禍を受けた生活様式の変化も追い風に不動産価格は急騰してバブルが懸念される事態となった。よって、中銀は一昨年7月に量的緩和を終了させるとともに、10月には7年強ぶりの利上げ実施を決定し、その後は物価や為替の安定を目的に断続的、且つ大幅な利上げ実施に動いてきた。こうした対応にも拘らず、昨年10-12月のインフレ率は前年比+7.22%とピークアウトの兆しはうかがえるも依然高止まりしており、コアインフレ率は同+6.68%と加速が続いてインフレ率とともに中銀の定めるインフレ目標(1~3%)を大きく上回る推移が続く。他方、急激な金利上昇を受けてバブル的な上昇の動きをみせた不動産市況は下落に転じており、足下では前年比ベースで1割以上も下回る水準となるなど家計部門にとって逆資産効果による消費の足かせとなることが懸念される。物価高と金利高の共存は実質購買力への下押し圧力となることで景気に冷や水を浴びせることが懸念される一方、足下の雇用環境は依然として底堅く推移するなど好悪双方の材料が混在する展開が続いている。他方、国境再開を受けて足下の外国人来訪者数はコロナ禍前をうかがう水準に回復するなど底入れしており、サービス輸出の追い風となる動きがうかがえる一方、昨年末にかけては中国でのゼロコロナ政策を巡るドタバタ劇が景気の足かせとなったことに加え、世界経済の回復をけん引した欧米など主要国景気に不透明感が強まるなど、財輸出の重石となり得る動きも顕在化している。このように足下の同国景気を巡っては、着実に不透明要因が増している様子がうかがえる。

図表1
図表1

こうした状況を反映して、昨年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率▲2.46%となり、前期(同+6.91%)から3四半期ぶりのマイナス成長に転じるなど景気底入れの動きに一服感が出ていることが確認された。中期的な基調を示す前年同期比ベースの成長率も+2.2%と前期(同+6.4%)から大きく伸びが鈍化するなど頭打ちの様相を強めている。外国人観光客数は底入れの動きが続く一方、世界経済の減速懸念の高まりを反映して財輸出に下押し圧力が掛かったことを受けて輸出全体は減少に転じるなど景気の底入れの動きにブレーキが掛かる格好となっている。さらに、堅調な雇用環境が続くも、経済活動の正常化に伴うペントアップ・ディマンド(繰り越し需要)の動きが一巡するとともに、物価高と金利高の共存により実質購買力に下押し圧力が掛かっているほか、不動産価格の調整による逆資産効果の影響も重なり家計消費の底入れの動きも一服している。また、金利上昇に伴う金利負担の増大を警戒して不動産投資に手控えの動きが広がっているほか、世界経済を巡る不透明感の高まりも重なり企業部門による設備投資意欲も後退していることもあり、固定資産投資は減少の動きを強めるなど総じて内需は下振れしている。分野別の生産動向を巡っても、内・外需双方で下押し圧力が掛かっていることを反映して製造業の生産は4四半期連続で減少しているほか、農林漁業関連の生産も2四半期連続で減少している上、家計消費が頭打ちの様相を強めていることを受けて小売関連や観光関連の生産も2四半期連続で減少するなど、幅広い分野で生産活動が弱含んでいる様子がうかがえる。一方、アーダーン前政権が主導したインフラ投資の拡充などの動きを反映して建設部門の生産は2四半期連続で拡大しているほか、鉱業部門の生産が底堅く推移していることも景気を下支えしている。その意味では、足下の同国経済は公的部門に対する依存度が高まっていると捉えることが出来る。

図表2
図表2

図表3
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なお、昨年末にかけては中国におけるゼロコロナ政策を巡るドタバタ劇が景気の足を引っ張る一因となったものの、年明け以降はゼロコロナ終了による景気の底打ちが期待されるなど、財輸出の約3割、コロナ禍前においては外国人観光客の5%強を中国(含、香港・マカオ)が占めるなど、財・サービス両面で外需の中国依存度が比較的高いことを勘案すれば、こうした動きは景気の追い風になると期待される。他方、年明け以降の同国においては1月末に最大都市オークランドが記録的豪雨に見舞われるとともに、2月にはサイクロン(ガブリエル)が同国北島に接近して政府は国家非常事態を宣言するなど、相次ぐ形で自然災害が直撃した(注1)。同国政府は一連の自然災害による被害額が2011年に同国南東クライストチャーチで発生した大地震による被害額(135億NZドル(GDP比3.5%))を上回る可能性を刺激した上で、先月に緊急復興対策を目的に3億NZドルの財政出動を行う方針を明らかにしている。こうした状況ながら、企業マインドは昨年末を底に製造業、サービス業ともに底入れの動きを強めており、中国景気が回復するとの期待も後押ししているとみられる。なお、中銀はインフレ抑制を目的に軽度のリセッション(景気後退局面)を引き起こす必要性に言及してきたほか、先月の定例会合においても一連の自然災害による景気への短期的な悪影響を注視しつつ、追加で大幅利上げ(50bp)を決定するとともに、先行きにおける一段の利上げに含みを持たせるなどタカ派姿勢を堅持する姿勢をみせている(注2)。ただし、その前提として昨年10-12月の実質GDP成長率を+2.68%のプラス成長になるとの見通しを示していたものの、現実にはマイナス成長となったことを受けて、金融市場においてはテクニカル・リセッションに陥る時期が早まるとの見方も出ている。こうしたことから、中銀は来月の次期会合において利上げペースを鈍化させるとの見方が強まっているほか、足下の国際金融市場においては米国での銀行破たんをきっかけにした不透明感の高まりを嫌気したリスク回避姿勢の動きも重なりNZドル相場は頭打ちしている。当面のNZドル相場については国際金融市場を取り巻く環境の影響を受けやすいことに留意する必要があるものの、景気後退懸念が意識されやすくなることも上値を抑える展開が続くであろう。同国では1月にアーダーン前首相が突然の辞任を表明し、その後にヒプキンス政権が発足してまだ2ヶ月足らずの状況ではあるものの(注3)、今年10月14日に予定される次期総選挙まで残り7ヶ月となるなかで経済の立て直しは待ったなしの状況であるなど難しい対応が求められる。

図表4
図表4

図表5
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以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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