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2023.02.14
アジア経済
アジア金融政策
ニュージーランド経済
ニュージーランド、サイクロン直撃で国家非常事態、新政権は船出から荒波へ
~次期総選挙に向けた「逆風の種」潰しが透けてみえる一方、新たなインフレリスクに繋がる懸念も~
西濵 徹
- 要旨
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- ニュージーランドでは先月、アーダーン前首相が突然の辞任表明を行い、その後にヒプキンス新政権が発足した。今年10月に次期総選挙の実施が予定されており、新政権、及び与党・労働党にとっては党勢立て直しが急務となるなか、新政権発足により支持率は回復するなど当初の目的は達成している。他方、先月末以降の同国では洪水が相次いで発生しており、政府は13日にサイクロン・ガブリエルの接近に伴う洪水・土砂崩れなどの発生を理由に全土を対象とする国家非常事態の宣言に動いた。早期の宣言発令による洪水対策を打ち出すことで次期総選挙への「逆風の種」を潰す狙いが透けてみえる一方、インフレが高止まりするなかで過度な財政出動は新たなインフレを招くリスクもあり、新政権は船出早々から難しい対応に直面している。
ニュージーランドでは先月、アーダーン前首相が突然辞任を表明するとともに(注1)、その後に実施された与党・労働党の党首選ではアーダーン前政権で教育相と公共相、警察相を務めたヒプキンス氏が唯一の立候補者となったことで党首に就任するとともに、首相に就任した(注2)。なお、同国においては今年10月14日に次期総選挙の実施が予定されるなど『政治の季節』が近付いており、アーダーン前政権、及び与党・労働党を巡っては、アーダーン氏個人の人気に依存する展開が続いてきたものの、コロナ禍規制の長期化に加え、商品高によるインフレ、凶悪犯罪の頻発などが重なり政権支持率は低下してきた。こうしたことから、アーダーン前首相は個人的理由により辞任を発表したものの、次期総選挙に向けて『選挙の顔』を変えることによる党勢の立て直しが急務になっていたと捉えることも出来よう。なお、昨年末に実施された世論調査においては、最大野党である国民党に対する支持率が労働党を上回るなど、次期総選挙では与党の苦戦が予想されたものの、ヒプキンス新政権発足直後に実施された世論調査ではいずれも労働党の支持率が再び国民党を上回り、新政権にとっては発足による『ハネムーン期間』を謳歌する展開となっている。他方、先月末の同国においては、最大都市であるオークランドで記録的豪雨を理由に多数の浸水被害や土砂崩れが発生するとともに、停電や断水も起こり、同市が非常事態を宣言する事態に見舞われている。記録的豪雨に関連して、豪州の保険会社は保険金の支払い請求が1.5万件強に達していることを明らかにするなど深刻な影響が出ているとみられ、景気に冷や水を浴びせることは避けられないとみられる。こうしたなか、13日にサイクロン(ガブリエル)が同国の北島に接近したことを受けて、北島の幅広い範囲で洪水や土砂崩れ、高波などが発生しており、ヒプキンス政権は同国全土を対象とする国家非常事態を宣言する事態に追い込まれている。なお、同国が過去に国家非常事態宣言を発令したのは、2011年に同国南島のクライストチャーチで発生した大地震と新型コロナ禍の初期の2回のみであり、宣言の発令に際してヒプキンス首相は「全土、特に北島の国民にとって大変な夜であり、多くの家族が避難を余儀なくされ、多数の家が停電して国中に甚大な被害が出ている」、マカナルティ防災相も「北島の大部分に大きな影響を及ぼしている前例のない気象現象」と述べるなど、広範囲に被害が出ていることを考慮したと説明している。足下の同国経済を巡っては、商品市況の高止まりに加え、コロナ禍からの景気回復の動きも追い風にインフレ率は中銀(NZ準備銀行)の定める目標を大きく上回る推移が続いており、新政権にとっては物価対応を図るとともに、賃金上昇に向けた経済成長の実現が課題となっている。他方、中銀は一昨年10月に物価抑制を目的に7年強ぶりとなる利上げ実施を決定するとともに、その後は物価と為替の安定を目的に断続的、且つ大幅な利上げを余儀なくされるなど難しい対応を迫られる一方、物価高と金利高の共存を理由に景気後退(リセッション)に陥る可能性を警戒しており(注3)、次期総選挙に向けて政権にとっては逆風が吹きやすい環境も懸念される。こうしたことから、ヒプキンス政権としては早期に洪水対策を打ち出すことにより『逆風の種』となり得る状況を打破したいとの思惑が透けてみえる一方、物価高が続くなかでの過度な財政出動は新たなインフレの種となる可能性もあり、難しい対応を迫られる局面が続くと予想される。

注1 1月19日付レポート「ニュージーランド・アーダーン首相が突然の辞任表明」
注2 1月23日付レポート「ニュージーランド、次期首相にヒプキンス氏、総選挙に向け党勢立て直しは進むか」
注3 2022年11月24日付レポート「NZ準備銀、過去最大の75bpの利上げに動く一方、来年のリセッションを警戒」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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