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2022.11.24
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NZ準備銀、過去最大の75bpの利上げに動く一方、来年のリセッションを警戒
~来年7-9月に政策金利を5.50%まで引き上げる「より高く、より早い」金融引き締めを志向~
西濵 徹
- 要旨
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- 足下の世界経済はスタグフレーションに陥ることが懸念されている。ニュージーランドでは商品高に加え、コロナ禍からの景気回復、資金流出によるNZドル安が輸入物価を押し上げるなどインフレは高止まりしている。また、低金利の長期化が不動産市況の高騰を招いたため、中銀は昨年7月以降断続的な利上げを実施してきた。足下のNZドルの対ドル相場は米ドル高の一服により底入れする一方、利上げにより不動産価格は調整するなどその影響が顕在化している。こうした状況ながら、中銀は23日の定例会合で9会合連続の利上げ、かつ利上げ幅を75bpに拡大する決定を行った。労働力不足に伴う賃金上昇がインフレ圧力を招いているなか、政策金利を「より高く、より早く」引き上げる考えを強調した。当面は米FRBの利上げ縮小が意識されるなかでNZドルの対米ドル相場は底堅く推移し、日本円に対しても堅調な推移が続くと見込まれる。
中国による『動態ゼロコロナ』戦略への拘泥を巡っては、幅広い移動制限が中国景気の足かせとなっているほか、サプライチェーンの混乱や中国人観光客の低迷を通じて中国経済との連動性が高い国々の景気の足を引っ張る展開が続いている。さらに、ウクライナ情勢の悪化による供給不安を受けた商品高は世界的なインフレを招くなか、米FRB(連邦準備制度理事会)など主要国中銀は物価抑制を目的にタカ派傾斜を強めており、物価高と金利高の共存を受けてコロナ禍からの回復が続いた欧米など主要国景気に冷や水を浴びせる兆しが出ている。結果、世界経済はスタグフレーションに陥る懸念が高まっている。また、米FRBなどのタカ派傾斜の動きは世界的なマネーフローに影響を与えており、米ドル高の動きを反映して多くの国々で資金流出が活発化してきた。ニュージーランドにおいては、商品高により食料品やエネルギーなど生活必需品を中心にインフレ圧力が強まっているほか、コロナ禍からの景気回復の動きに加え、資金流出に伴う通貨NZドル安が輸入物価を押し上げてインフレ昂進を招いており、インフレ率、コアインフレ率ともに中銀(NZ準備銀行)の定めるインフレ目標を大きく上回る水準で推移している。また、同国ではコロナ禍対応を目的に政府、及び中銀が財政並びに金融政策の総動員による景気下支えに動いたものの、金融市場におけるカネ余りや低金利環境の長期化に加え、コロナ禍を経た生活様式の変化も重なり不動産市況は急上昇するなど『副作用』も顕在化した。よって、中銀は景気への悪影響を懸念して住宅ローン規制の厳格化などによる対応に留めたものの、その後も景気回復が進むとともに不動産市況は一段と上振れしたため、昨年7月に量的緩和政策を終了し(注1)、10月には7年強ぶりの利上げ実施を決定するなど金融政策の正常化を進めた(注2)。さらに、その後もインフレが一段と昂進したことを受けて中銀は先月の定例会合まで8会合連続の利上げを決定するとともに、直近5会合は利上げ幅を50bpとする大幅利上げに動くなどタカ派姿勢を強めてきた(注3)。なお、国際金融市場においては『タカ派度合い』の違いを理由にNZドルの対米ドル相場は頭打ちの動きを強める展開が続いてきたものの、先月以降は米ドル高の一服の動きを反映して一転して底打ちしており、物価への悪影響は後退している。また、中銀の断続的な利上げ実施は景気に冷や水を浴びせることが懸念されたものの、国境再開を受けた外国人観光客数の底入れなどを追い風に景気は比較的堅調な推移をみせている。ただし、当局の規制強化や物価高と金利高の共存を受けて不動産市況は昨年11月をピークに頭打ちに転じており、10月の住宅価格指数は前年比▲10.9%と30年ぶりの大幅マイナスとなるなどの影響も顕在化している。一方、上述のようにインフレが大きく上振れする展開が続いていることを受けて、中銀は23日の定例会合において9会合連続の利上げに加え、利上げ幅を75bpと過去最大として政策金利(OCR)を4.25%とする決定を行った。会合後に公表した声明文では「より高い金利が必要」との認識を示した上で、その理由について「インフレ率の中期目標への回復を確実にするには、政策金利がより高く、これまでの予想に比べて早く到達する必要がある」との考えを示した。また、世界経済について「世界的にインフレが高止まりするなかで中銀は金融引き締めを進めているが、世界経済の減速は金融及び貿易双方で同国経済に影響を与えるとともに、その不確実性は人々の心理に影響を与える」とする一方、同国経済について「債務負担の増大や住宅価格の下落、消費者信頼感の低下にも拘らず、雇用の底堅さや所得の伸び、家計貯蓄が家計消費を下支えしており、観光業の回復も内需を下支えしている」との見方を示した。その上で、「労働力不足による賃金上昇圧力が掛かりやすいなかで引き続き広範なインフレが示唆されるなか、インフレ率を中期目標に戻すには一段と金融引き締めを続ける必要があり、断固とした姿勢で臨む」との考えを示した。そして、同時に公表した四半期ごとの金融政策報告では、先行きのOCRについて来年7-9月に5.50%でピークに達するとの見通しを示すなど従来見通し(来年7-9月に4.00%)から大幅に引き上げる一方、同国経済について1年間に亘ってリセッション(景気後退)に陥る可能性があると警告している。また、今回の決定を巡っては「利上げ幅(75bpないし100bp)を検討した」とするなどさらなるタカ派姿勢への傾斜が意識されている模様である。足下では米FRBの利上げ縮小が意識される一方、NZ準備銀は引き続き大幅利上げを志向していることが示唆されたことで、当面についてはNZドルの対米ドル相場は底堅く推移すると見込まれるほか、金融政策の方向性の違いは日本円に対しても堅調な推移に繋がると予想される。


注1 2021年7月14日付レポート「ニュージーランド中銀、量的緩和終了による緩和水準引き下げを決定」
注2 2021年10月6日付レポート「ニュージーランド中銀、7年強ぶりの利上げで新型コロナ禍対応から脱却」
注3 10月5日付レポート「NZ準備銀、景気に不透明感も、豪州と対照的に物価抑制を重視し「タカ派」継続」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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