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2022.11.18
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ロシア景気は欧米などの制裁の影響で一段と下振れする展開が続く
~ウクライナ情勢の先行きもみえないなか、ロシア経済の体力は着実に蝕まれる展開へ~
西濵 徹
- 要旨
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- ロシアを巡っては、ウクライナ侵攻を受けた欧米などの制裁強化で金融市場は一時大きく混乱したが、その後はロシア政府の「防衛策」などにより表面的に落ち着きを取り戻している。しかし、制裁による物資不足は企業及び家計部門に幅広く悪影響を与えているほか、戦闘長期化による人材不足の影響も顕在化しつつある。こうした状況を反映して7-9月の実質GDP成長率は前年比▲4.0%となり、前期比年率ベースでは3四半期連続のマイナス成長と試算されるなど景気は一段と下振れしている。先行きはG7によるロシア産原油価格の上限設定の影響が懸念されるほか、企業マインドも幅広く悪化するなど一段の景気下振れに繋がる動きもみられる。ウクライナ情勢の先行きも見通せないなかでロシア経済の体力は着実に蝕まれている。
ロシアを巡っては、今年2月のロシア軍によるウクライナ侵攻を理由に欧米などがロシアに対する経済制裁を強化し、その後は資金流出の動きが強まるとともにルーブル相場も大幅に調整する事態に直面したため、中銀は大幅利上げや事実上の資本規制などの『防衛策』の発動に追い込まれた。なお、その後は欧米などの制裁に伴い外国人投資家の取引が縮小したことに加え、ロシア政府はルーブルの実需喚起を目的に貿易相手国にルーブル建での貿易決済を要求するなどの動きをみせたことでルーブル相場は一転底入れするなど、金融市場は表面的に落ち着きを取り戻している。ただし、その後もウクライナ情勢がこう着化するなかで欧米などは制裁を一段と強化しており、外資系企業は同国事業から撤退する動きを強めているほか、輸入制限に伴い素材及び部材の調達が困難になるなかで製造業を中心に生産活動が制約される事態が続いている。よって、中銀はルーブル相場が落ち着きを取り戻したことに加え、その後は強含みするなど輸出競争力の低下に繋がる懸念が高まったため、断続的な利下げにより景気下支えを図る動きをみせてきた。なお、足下の政策金利及びルーブル相場はともにウクライナ侵攻前の水準となるなど、表面的にみれば欧米などの経済制裁の影響を克服しているようにみえるものの、これは上述のように金融市場に外国人投資家が存在しない特殊な環境が影響していることに注意する必要がある。また、欧米などの経済制裁は素材及び部材不足などを通じて製造業を中心とする生産活動のみならず、幅広い日用品の不足が国民生活にも悪影響を与えており、物資不足を受けてインフレが高止まりするなどの影響も招いている。足下の物価動向は昨年以降に加速の動きを強めた反動も影響して頭打ちの動きを強めているものの、インフレ率は前年比+12.6%、コアインフレ率も同+16.2%とともに中銀の定めるインフレ目標(4%)を大きく上回る推移が続いている。さらに、プーチン政権はウクライナ情勢の悪化が国民の間に不満を招くことを警戒して、最低賃金の大幅引き上げのほか、年金給付額の拡充、子育て世代や公務員に対する現金給付、企業の資金繰り支援や補助金給付など様々な『バラ撒き』政策を展開しており、こうしたこともインフレ圧力に繋がっている。また、プーチン政権が9月に部分動員令による予備役兵の招集に動いたことを受け、中銀は先月の定例会合において利下げ局面を休止するなど物価への悪影響を懸念する動きをみせたものの(注1)、足下の物価動向を巡っては人手不足による影響が顕在化する動きもみられる。足下の雇用環境を巡っては失業率こそ低下していると試算されるものの、これはウクライナ情勢の長期化を受けた労働力人口の低下により分母の母数が縮小したことが影響していると捉えられる。このように家計、並びに企業ともに難しい状況に直面していることを反映して、7-9月の実質GDP成長率(速報値)は前年比▲4.0%と前期(同▲4.1%)から2四半期連続のマイナス成長となり、当研究所が試算した季節調整値に基づく前期比年率ベースでも▲8.7%と前期(同▲7.6%)から3四半期連続となるマイナス成長で推移するなど景気に一段と下押し圧力が掛かっている。他方、ウクライナ情勢の悪化による供給不安を受けた原油及び天然ガス価格の高止まりに加え、中国やインドなど新興国のなかには欧米などの制裁に同調せずロシア産のエネルギー資源の輸入を拡大させている国もあり、財政を通じたロシア景気の下支えに繋がっているとみられる。ただし、来月5日にはG7(主要7ヶ国)などがロシア産原油の取引価格に上限を設ける措置が発効されるほか、世界経済の景気減速など需要低迷に繋がる懸念が強まるなかで先行きは景気の下支え役が一段と後退していくことも予想される。さらに、足下の企業マインドは多くの物資の不足が深刻化しているほか、戦闘長期化による人材不足が幅広い経済活動に悪影響を与えていることを反映して製造業、サービス業ともに下振れしており、景気に一段と下押し圧力が掛かる可能性は高まっている。中銀は先月の定例会合において今年のみならず、来年もマイナス成長が続くとの見通しを示しているが、その前提に基づけば先行きの景気も一段の下振れが避けられないと判断出来る。ウクライナ情勢も依然先行きが見通せない状況が続くなか、欧米などの経済制裁の長期化も予想されるなどロシア経済は着実に体力が蝕まれる状況にあると言えよう。




注1 11月1日付レポート「ロシア中銀、利下げ局面は休止、部分動員令による物価への影響に懸念」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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