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【1分解説】資源ナショナリズムとは?

牧之内 芽衣

  音声解説

資源ナショナリズムとは、自国の資源は自ら管理・開発すべきだとする考え方です。背景には、19世紀欧州諸国による資源保有国の植民地支配と、その後の欧米企業による資源の独占に対する新興国の反発があります。

資源に対する開発権の問題は国連において1952年から取り上げられており、1962年には「天然資源に対する恒久主権に関する決議」が採択され、天然資源はその保有国に属するものであることが確認されました。同じく国連で1974年に採択された「新国際経済秩序の樹立に関する宣言」では、保有国は天然資源の効果的な管理や、自国の状況にふさわしい資源開発の権利をもつことが強調されています。

1970年代にはベネズエラやイラン、イラクといった産油国が石油事業を次々と国有化し、資源は先進国に対する外交カードへと変容していきました。その後、1980年代に入ると石油需要が減退し、産油国は外資導入を模索するなど、資源ナショナリズムは下火になっていきました。

2000年代に入ると、中国やインドといった新興エネルギー資源消費国におけるナショナリズムの高まりや、米国主導のグローバリゼーションへの反発などからふたたび資源ナショナリズムが広がりました。世界的な電気自動車(EV)普及を受けて、電池に用いるリチウムなどのレアメタル(希少資源)を囲い込む動きもあります。

資源ナショナリズムと資源価格は表裏一体です。資源ナショナリズムが地政学リスクと化し、さらなる資源価格高騰につながる恐れがあることに注意が必要です。

この解説は2024年3月時点の情報に基づいたものです。

牧之内 芽衣


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