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2022.06.24
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祖父母孫関係の行方
~情報通信機器は、祖父母と孫を直接つなぐツールとなるのか~
北村 安樹子
1.情報通信機器とインターネット利用の広がり
5月末に公表された通信利用動向調査によると、個人のモバイル端末(スマートフォン+携帯電話)の保有割合は83.9%となっている。年齢階級別にみると、20代から60代までは9割を超え13~19歳でも9割近くに達しているが、70代以上と6~12歳ではこれらの世代に比べるとやや低い(図表1)。内訳をみると、70代まではスマートフォンが多数派であるが、70代と80代以上の高齢者ではスマートフォン以外の携帯電話を保有する人も一定の割合を占める。
家族や他者とのコミュニケーションという側面に注目した場合、スマートフォンをはじめとする多様なモバイル端末に加え、パソコンやタブレット等の情報通信機器を介して通話やメール、SNS等を利用する人もいる。家族との共用や機器の使い分けなど利用方法には多様な実態があり、メールや写真の送受信等に関してはスキルの個人差もある(図表2)。このため一概にはいえないものの、自分専用の機器や連絡先をもつ人は、時代とともに増えてきたと考えられる。
2.祖父母孫関係の行方~情報通信機器は、祖父母と孫を直接つなぐツールとなるのか~
近年では、小中学生や就学前の低年齢の子どもにも、スマートフォンをはじめ様々な情報通信機器を利用する機会が広がっている。親のスマートフォンや家族で共用する機器を含めて、それらを多様な形で自ら利用することや、家族や他者がそれらを利用する様子に触れる機会も、以前に比べ早い時期からあるだろう。
一方で、対面機会や固定電話でのやりとりを含めて、祖父母と孫が直接連絡を取り合う機会は限られていることを示すデータもある。少し前のデータになるが、2014年に当研究所が行った祖父母世代への調査結果では、最も親しい孫であっても、直接連絡を取り合うと答えた人は少数派で、母親や父親を介して連絡を取り合うと答えた人の方が多かった(図表3)(注1)。孫の年齢や連絡の目的等にもよるが、祖父母や孫だけに連絡をとりたい場合でも、相手の都合は親に聞かなければわからないケースや、連絡方法やタイミングの判断・調整に親が関与するケースが多かったのではないだろうか。
調査から数年が経過し、孫世代が情報通信機器を使い始める時期はさらに低年齢化している。共働きや祖父母との別居の増加等を背景に、子や孫と祖父母がスマートフォン等で連絡をとり合う機会がある人もいるだろう。また、孫の成長や時間の経過とともに家族関係が変化し、直接のやりとりが減ったり、行われなくなったりして以降も、多様な手段を通じて孫の成長を静かに見守れること、見守ってくれる人がいる・いたと感じられることが、祖父母と孫の双方にとって新たなつながりの形といえる場合もあると考えられる。
祖父母世代との別居が標準となるなか、情報通信機器を介して子育てや介護の間接的な支援のほか、経済面での支援も行えるようになり、祖父母と孫がリアルの時間を共有する機会が減っているケースもあるだろう。一方で、情報通信機器の広がりによって、孫と祖父母は親を介すことなく直接つながる手段をもつ時代になった。そのような距離感が悪いこととはいえないが、孫や祖父母が直接つながる手段を得ても、それをどう感じるかには、リアルで共有する日常の時間や、スマホを介したやり取りを含め積み重ねられていく関係構築のプロセスが大きくかかわると思われる。
コロナ禍を通じて別居する家族との対面機会が減少した祖父母も多かったなかで、情報通信機器は物理的な距離を超えてコミュニケーションやサポートを行う新たなツールとなってきた。それらの大きな恩恵とともに、祖父母と孫がリアルの時間をともにすることの意味や価値について、あらためて考えた親や祖父母も多かったのではないだろうか。
【注釈】
- 図表3②孫から連絡がある場合についての回答を孫の学齢別にみた場合、学齢段階が高い孫の方が、親を介さず直接連絡があると答えた割合は高い。しかしながら、最も親しい孫が中高生や大学生の場合も、「孫の母親」を介して連絡があると答えた割合がこれを上回っている。
【関連レポート】
- 北村安樹子「祖父母による孫育て支援の実態と意識~祖父母にとっての孫育ての意味~」2015年7月
- 北村安樹子「今後関係性を深めていきたい人」は?~ライフコースの多様化と人づき合いのライフデザイン~」2022年1月
- 北村安樹子「暮らしの視点(8):親子の「程よい距離感」への新たな志向~リアルの「近さ」がもたらす安心と自立のバランス~」2021年4月
北村 安樹子
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 北村 安樹子
きたむら あきこ
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ライフデザイン研究部 副主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース
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