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- Well-being LDの視点『企業は「オヤカク世代」にどう向き合うか』
政府文書にも登場した就活用語「オヤカク」
2026年3月、2027年卒の就職・採用活動における広報が解禁される。「売り手市場」のなかで各企業は自社に適した人材の獲得に向けてしのぎを削ることになるが、企業における懸念材料の一つが「内定辞退」である。6月に開始される面接から10月の内定式までの間に、内定を得た就活生が何らかの事情で辞退を選択する場合もある。内定者に辞退されれば、企業側は採用のコストを含めて損害を被りかねない。
実際、東京商工会議所が2025年に実施した調査によると、「内定・内々定の辞退者がいる」と回答した企業は、「内定・内々定者の半数以上の辞退者がいる(25.7%)」と「内定・内々定者の半数未満の辞退者がいる(47.4%)」の合計が7割以上にのぼった(注1)。
企業側も内定辞退の防止に向けた対策に取り組んでいる。採用担当者からの定期的な連絡や懇談会の実施などが挙げられるが、近年注目されているのが「内定者の親」に対して内定や入社に関する確認を行う、いわゆる「オヤカク」だ。
この「オヤカク」については、企業だけではなく政府文書でも言及されている。2025年3月、内閣官房・文部科学省・厚生労働省・経済産業省が連名で、経済団体などに向けて就職・採用活動に関する文書を発出した。そのなかで、「いわゆる『オヤカク』と称されるものについては、例えば、企業が保護者にも企業情報を提供するなど、入社に際しての保護者の不安を解消し、企業に対する理解を深めることを目的とするケースがある」と記載されている(注2)。
「エントリーシートを親に見てもらう」Z世代
現在、新規学卒者で就職活動の時期を迎えている世代は、いわゆる「Z世代」にあたる。実際に、Z世代が就職活動を行う際には親の影響があるようだ。第一生命経済研究所が2025年3月に全国の18~69歳の1万人に対して実施した調査によると、「就職活動の際、親に相談したり、エントリーシートなどを親に見てもらったことがある」と回答したZ世代(18~27歳)は、「あてはまる」と「どちらかといえばあてはまる」の合計が42.1%にのぼった(資料1)。

一方、Z世代の親にあたる団塊ジュニア世代(50~53歳)では合計24.8%にとどまり、Z世代と比較すると17.3ポイント低くなっている。
この調査で明らかになったように、Z世代が就職活動を行う際には、たしかに親の影響が一定程度ある。こうした背景から、前述のように、Z世代が就職活動を行う企業の採用担当者が内定者の親に内定の確認や入社に向けた説明を行う「オヤカク」を通じて、親による内定辞退を防ぐ効果が期待されている。
「お金の稼ぎ方や資産形成」にも親の影響
このように、「オヤカク」は就職活動に関する用語であるが、親の影響はZ世代の就職活動に限らず、他にもZ世代のライフデザイン、特に「お金」に関わることにまで及んでいる。第一生命経済研究所による前述の調査では、「お金の稼ぎ方や資産形成などについて、親から助言を受けたことがある」については、「あてはまる」と「どちらかといえばあてはまる」を合わせてZ世代は42.5%で、その親にあたる団塊ジュニア世代と比較すると17.4ポイント高い(資料2)。

注目すべきは、同じZ世代でも、就職活動の場合と同様に、資産形成でも「親から助言を受けたことがある」とする割合は、Z世代前期(23~27歳)よりもZ世代後期(18~22歳)の方が高い傾向にある点だ。つまり、さらに次の世代(α世代)では、就職活動や資産形成を考えるうえで親の影響がより強くなることが予想される。
「オヤカク世代」への向き合い方とは
Z世代が自身の就職活動や資産形成などを考える際に親の影響が強まっている背景の一つには、ライフコースの多様化が挙げられる。働き方や人生の選択肢が増えれば増えるほど、Z世代にとって「何が自分に合っているのか」という判断が困難になり、経験が豊富で身近にいる親に助言を求める機会が必要となる。
こうした状況を踏まえ、今後企業が迎える「オヤカク世代」ともいうべき新規学卒者に対する向き合い方としては、親の影響力を考慮しつつ、本人が主体的に意思決定できるような取組みが大切だ。たとえば、企業は親に対する説明を働き方や福利厚生などの情報提供にとどめ、本人が最終決定を行うことができるよう促すメンター制度などのサポートの充実が求められる。
(注1)東京商工会議所「2025年新卒者の採用・選考活動動向に関する調査について」(2025年)
(注2)内閣官房・文部科学省・厚生労働省・経済産業省「2026(令和8)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請等について」(2025年)
西野 偉彦
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西野 偉彦
にしの たけひこ
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ライフデザイン研究部 主任研究員
専⾨分野: 教育(子ども・若者の学校教育から社会人の学び直しまで)、Z世代やα世代の生活行動・価値観・社会参画
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西野 偉彦

