シニアは今後も、孫育てを頼られるか

北村 安樹子

目次

1.三世代同居、孫育てが役割のシニアは少数派へ

現在のシニア世代には、子どもの頃に自身が孫の立場で祖父母との暮らしを経験したり、大人になって以降、親や祖父母との同居生活を通じて、子育てや介護を経験した人もいるだろう。以前は結婚した子や孫と同居する高齢者が、現在より多かったからだ。しかし、これから高齢期を迎える若いシニア世代には、自分の子どもが親となって孫の祖父母の立場になった際に、夫婦のみの世帯や単独世帯で暮らす人が多いだろう。三世代世帯のシニア世代(図のグリーン部分)は、時代とともに減少している(図表1)。

このようなライフスタイルの変化もあって、シニア世代が、同居して幼い孫の世話を日常的に担うケースは少なくなっている。実際、内閣府が60代以上の男女を対象に行った調査によると、シニア世代が家族・親族のなかで果たしている役割として「小さな子どもの世話をしている」を挙げるケースは1割に満たず、「家事を担っている」や「家計の支え手(かせぎ手)である」「家族・親族の相談相手になっている」など他の役割を挙げる人に比べかなり少ない(図表2)。ただし、孫と同居する世帯では「小さな子どもの世話をしている」の割合が全体に比べやや高く、2割弱となっている。また、調査時点ではすでに孫が成長していたため「小さな子どもの世話をしている」には現状では該当しない人が、過去に孫の世話を手伝っていたケースもあるだろう。このようなケースを含めると、孫の世話をした経験があるシニア世代は、もう少し多い可能性があると考えられる。

図表1
図表1

図表2
図表2

2.60代後半~70代前半の3割強が、子や孫の世話を頼られることあり

図表3は、子どものいるシニア世代が、日常生活で家族・知人等から「頼られること」についてたずねた別の調査結果であるが、この結果からは先にみたよりもう少し多くの人が、子や孫の世話の手助けを頼まれることがあるとわかる。選択肢のうち、「子や孫の世話」を挙げた人の割合に注目すると、回答者全体では「家事」や「喜びや悲しみを分かち合うこと」に次いで多く、約3割が「子や孫の世話」を挙げている(注1)。公表データでは孫がいる人の割合がわからないため子どものいる人ベースでの割合になるが、経験者を含めれば、孫の世話を頼られたことがある人はもう少し多くなる可能性もあるだろう。

年代別にみると(図表4)、60代後半女性では4割超があると答えているが、年齢とともに子や孫の世話を頼られる機会は減る。孫と別居するシニア世代が増えているなかにあっても、子や孫の世話等を頼られることがある人は、現状では若いシニア世代を中心に男女の双方で一定程度みられるということになる。  

図表3
図表3

図表4
図表4

3.子育て支援制度・サービスの広がりとシニア世代の価値観

ただ、現在、祖父母によるこのような支援機能は、次の2つの点で転機を迎えていると考えられる。

1つは、子育て支援制度・サービス等の拡充により、各種の制度や施設・サービスの利用機会が広がってきたことだ。女性の就業継続や共働き家庭が増えているなか、幼い子どもがいる時期の家事・育児と仕事の両立をどのように行っていくのかは、子世代のキャリアデザインや価値観等によってこれまで以上に多様化すると考えられる。

もう1つは、子世代との関係をめぐる、シニア世代の価値観だ。内閣府がシニア世代を対象に行った調査によると、子世代との関係に関する若いシニア世代の意識は、別居・交流型の関係(子どもや孫とは、ときどき会って食事や会話をするのがよい)を志向する人が、同居・生活型の関係(いつも一緒に生活できるのがよい)を志向する人より多くなっている(図表5)。年齢や世代による価値観の違いはあるものの、若いシニア世代が志向する別居・交流型の関係には、自身ができるだけ自立した生活をおくり、子世代のライフスタイルを尊重したいとの思いが含まれていると考えられる。若いシニア世代には、子世代の生活や子育てを可能な範囲で手助けしてやれたらとの思いがある一方、仕事や家族の介護、健康づくりなど、子世代への支援以外にも担う多様な役割も果たしながら、自身の老後や介護に関しては、自立した生活を送りたいと考える人が多いのではないか。

図表5
図表5

4.同近居ではヘルプ機会が残る~シニアは今後も、孫育てを頼られるか~

子育て支援制度の拡充等を背景に、保育所等を利用したり、家事を効率化したり、夫婦が協力するなどして仕事と家庭の両立をはかっていくための選択肢は、シニア世代が親として子育てを経験してきた時代に比べ広がっている。また、シニア世代が生きてきた時代に比べ、仕事と家庭生活の両立をはかっていくことの重要性を感じている人は確実に増えていると考えられる。これからはそのような生活を具体的にどのような形で実現していくかを、子世代が主体的に考えていく時代に向かうと考えられる。

ただ、子世代のライフコースは多様化しており、これからのシニア世代には、祖父母の立場を経験しない人も多い。また、若いシニア世代には、自身の老後を子世代に頼りたくないと考える人や、子や孫のライフスタイルを尊重したいと考える人が増えている。それでも祖父母の立場になったシニア世代と行き来可能な場所に子世代が住んでいる場合には、今後も子世代から頼りにされる機会が残るのではないか。このようなケースを含めて、ふだんは互いの生活の自立を重視し、それぞれが忙しい生活をおくるなかで、頼られる機会があれば、子世代の意向を尊重しながら可能な範囲で手助けしたり、手助けや交流の機会を大切にしたいと考えるシニア世代が増えるだろう。


【注釈】

  1. 子どもがいない人で、日常生活で家族や知人等から「子や孫の世話」を頼られることがある人は3%未満。

【関連レポート】

  • 北村安樹子「自立・持続を志向するシニアの住環境~若いシニア世代は子世代との同・近居より自立・持続可能性を志向~」2025年

北村 安樹子


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。