成人後のきょうだい関係と親戚の「おじさん」「おばさん」呼称の変化

北村 安樹子

目次

家族に関する調査には様々なものがあるが、親子間や祖父母・孫間の関係に比べ成人して以降のきょうだい関係を知ることのできるデータは少ない。

本稿では当研究所が行った調査から、別居するきょうだいとのコミュニケーションの実態に関する調査結果を紹介し、女きょうだい間では電話やメール等を通じて活発なコミュニケーション機会をもつ人が多い現状から、家族形態やライフスタイルの多様化にともなう親族間の呼称の変化について考えてみたい。

1.きょうだい数の減少と親族関係の変化の可能性

きょうだいの平均人数が3人を超えていた高齢世代に比べ、ミドル世代や若い世代では2人台まで減少している(図表1)。晩婚・晩産化や働く女性の増加をはじめとするライフコースの多様化をふまえれば、成人期以降のきょうだい関係は世代によって異なり、若い世代では家族形態やライフスタイルがきょうだい間で同質的ではなくなっている可能性があるだろう。

図表 1 平均きょうだい数(出生年次別)
図表 1 平均きょうだい数(出生年次別)

例えば、きょうだいの多くが複数の子どもをもつ人生を歩んだ高齢世代に比べ、ミドル世代や若い世代が子どもをもち始める時期は遅くなっており、独身期や子どもがいない時期が長くなっている。きょうだい数や子どもの人数が減り、ライフスタイルや価値観の多様化が進むなかで親族間の交流がそれほど活発ではないケースもあるだろう。一方で、情報通信機器やインターネットを介したコミュニケーションツールの広がりを早い時期から経験している若い世代では、自分やきょうだいが親元を離れたり、家族を形成したりして以降も、親族間の交流や支援の関係が保たれやすくなっている面もあるのではないだろうか。

2.姉妹間で活発なオンライン・コミュニケーション

当研究所が2021年1月に行った調査では「直接顔を合わせて」「メールや電話、LINE等を通じて」という2つの指標から最も年上のきょうだいとの会話の実態をたずねている。回答者ときょうだいの性別の組み合わせに注目した場合、よく会話をしていると答えた人の割合が最も高いのは女性と女きょうだいの間柄で、「直接顔を合わせて」では37.9%、「メールや電話、LINE等を通じて」では56.4%を占めた(図表2)。

調査時にコロナ禍が続いていたこともあり、今回の調査ではいずれの関係でも「メールや電話、LINE等を通じて」よく会話をしていると答えた人の割合が「直接顔を合わせて」と答えた人を上回っている。また、女性では最も年上のきょうだいが姉や妹の場合、「メールや電話、LINE等を通じて」よく会話をしている人が年齢にかかわらず半数を上回っている。

図表 2 別居する兄弟姉妹とよく会話をしている人の割合
図表 2 別居する兄弟姉妹とよく会話をしている人の割合

3.親戚の「おじさん」「おばさん」呼称の変化

ところできょうだいが子どもをもつと、その子どもからみて「叔父(伯父)」「叔母(伯母)」にあたる人は、親せきの「おじさん」「おばさん」と呼ばれる立場になる。

しかしながら、近年ではこの「おじさん」「おばさん」という少し懐かしい呼び方を耳にする機会が減っているように感じられる。きょうだいが子どもをもつ時期に独身であったり、自分に子どもがいない状況で叔父(伯父)・叔母(伯母)の立場になる場合も多いからではないだろうか。きょうだいがふだん使っている名前や愛称を用いたり、それらとは別の呼称を使うケースもみられる。独身かどうかや子どもの有無にかかわらず、甥・姪というナナメの関係にあたる次世代との関係を楽しみに考える人もいるのだろう。

今回の調査結果によると、若い世代では男女にかかわらず電話やメール、LINE等を介してきょうだいとよく会話をする人が上の世代に比べ多くなっている。ふだんから話す機会の多いきょうだいとのつながりの将来を見越して、その子どもが幼いうちから名前や愛称で呼ばれる関係を積極的に築いていきたいと考える人もいるのかもしれない。また、子どもが自分のきょうだいを「おじさん」「おばさん」と呼ぶことに抵抗を感じる人も増えているのだろう。

「おじいちゃん」「おばあちゃん」が定番だった祖父母の呼び方も、「じぃじ」「ばぁば」など幼い孫にも呼びやすい呼称が好まれたり、名前や愛称など年齢や続柄にとらわれない自由な形が使われているケースもみられる。親せきの「おじさん」「おばさん」といった呼び方・呼ばれ方にも、時代や好みに応じた多様性があってよいのではないだろうか。

【関連レポート】
1)北村安樹子「デジタルコミュニケーションの光と影~家族をつなぎ、支えるが、遠ざけることも~」2022年3月。

【参考文献】
1)「第一生命経済研究所「人生100年時代の『幸せ戦略』」『ライフデザイン白書2020』東洋経済新報社、2019年11月。
2)「第一生命経済研究所「『幸せ』視点のライフデザイン」『ライフデザイン白書2022』東洋経済新報社、2021年10月。

北村 安樹子


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北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 副主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

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