デジタルコミュニケーションの光と影

~家族をつなぎ、支えるが、遠ざけることも~

北村 安樹子

目次

スマートフォンやタブレット、パソコン等の情報通信機器を介して行われる家族間のコミュニケーションは、家族関係にどのような影響をもたらしているのだろうか。

海外など時差のある場所や、直接会うには多くの費用や時間がかかる場所に別居の家族がいる人など、これらの機器を利用したコミュニケーションに様々な利点を感じたことがある人もいるだろう。コロナ下の生活で情報通信機器を介したコミュニケーションの利便性をあらためて感じた人も多いと思われるが、直接会う機会に変化があったことで、別居する家族との関係に不安を感じる経験をした人もいるのではないか。

本稿では当研究所が行った調査の結果から、家族間のデジタルコミュニケーションが別居家族との関係にもたらす影響について考えてみたい。

1.家族とのデジタルコミュニケーションの実態

当研究所が昨年行った調査では、家族と「直接顔を合わせて」及び「メールや電話、LINE等を通じて」よく会話をしているかをたずねている。別居家族についての結果をみると、よく会話をしていると答えた人が最も多かったのは「学校を卒業した別居子」に対する女性の回答で、「メールや電話、LINE等を通じて」では74.0%を占めた(図表1)。「学校を卒業した別居子」との会話に関し、女性は「直接」で10ポイント以上、「メール等」では20ポイント以上も男性を上回っている。

「メール等」による会話が、「別居の父親」や「別居の母親」よりも「学校を卒業した別居子」との間で多く行われている背景には、高齢の親世代にスマートフォンなどの情報通信機器に不慣れな人が多いことも関連しているだろう。また、「学校を卒業した別居子」と「メール等」でよく会話をするという男性は、女性の7割超には及ばないものの半数近くを占める。家族との会話は、男性に比べ女性の方が多く行っていると思われがちであるが、別居する子と情報通信機器を通じてよく会話をする人は、父親でも一定の割合を占めることがうかがえる。

図表 1 別居する家族とよく会話をしている人の割合(性別)
図表 1 別居する家族とよく会話をしている人の割合(性別)

2.ポジティブな影響

別居家族との会話にこのような実態があるなか、通信機器を通じた家族間のコミュニケーションは、自分や家族にどのような影響をもたらすと考えられているのだろうか。

最も多くあげられたのは、「対面でコミュニケーションをとりにくい家族とのコミュニケーションを行える」で、女性では32.7%がこの点をあげた(図表2)。女性では「対面での会話が少ない家族やできない家族へのサポートになると感じる」(32.0%)も僅差でこれに続いている。これに対して男性では「あてはまるものはない」とした人が41.2%を占めて最も多かった。ただし、女性で上位を占めた先の2項目をあげた人も、ともに約2割を占める。男性に比べ女性の方が、自分・家族へのポジティブな影響をあげた人の割合は高い。

また、別居の父親、別居の母親、別居の兄弟姉妹、学校を卒業した別居子のいずれかに、メールや電話、LINE等を通じてはよく会話をするが、直接顔を合わせて会話をすることがない関係の人がいる場合、ポジティブな影響をあげる割合が高い傾向がみられた(図表省略、注1)。

図表 2 スマートフォンやタブレット、パソコン等を通じた家族間コミュニケーション
図表 2 スマートフォンやタブレット、パソコン等を通じた家族間コミュニケーション

3.ネガティブな影響

一方、「対面での会話が少ない家族やできない家族とのコミュニケーションがますます減ると感じる」「家族のつながりが弱まると感じる」といったネガティブな影響をあげた人も、それぞれ1割弱とわずかずつながらみられた(図表2)。

「対面でコミュニケーションをとりにくい家族とのコミュニケーションを行える」あるいは「対面での会話が少ない家族やできない家族へのサポートになると感じる」とした人の一方で、「対面での会話が少ない家族やできない家族とのコミュニケーションがますます減る」と感じる人がいることは、これらのコミュニケーションがもたらす影響の複雑さをうかがわせる。情報通信機器を介して行われるコミュニケーションは、家族との連絡やサポートの面でポジティブな影響をもたらすが、家族関係を疎遠にしたり、悪化させたりすると感じさせる、ネガティブな影響をもたらす場合もあると考えられる(注2)。

4.デジタルコミュニケーションの光と影~家族をつなぎ、支えるが、遠ざけることも~

なお、先の回答結果をポジティブな影響とネガティブな影響とのバランスという視点でみた場合、最も多いのはポジティブな影響のみを感じている人で、女性では約6割を占めた(図表2)。一方、男性ではどちらも感じていない人と、ポジティブな影響だけを感じている人がいずれも約4割を占め、ネガティブな影響だけを感じている人は男女とも1割に満たない。

これらの結果から、家族間のデジタルコミュニケーションは、家族関係にポジティブな影響をもたらすと感じている人の方が圧倒的に多く、個人差もあるが、今回の調査では男性に比べ女性の方がポジティブな影響を感じやすい傾向があった。女性の方が家族のサポート役を担う機会が多いなど、これらの機器を通じて行われる家族間のコミュニケーションの目的が男女で異なることの影響もあると思われるが、女性が行う工夫や気遣いを男性が取り入れる余地もあるかもしれない。

また、調査結果は、少数ではあるが、これらの機器を介して行うコミュニケーションにネガティブな影響だけを感じている人がいることも示していた。情報通信機器を介したコミュニケーションが様々な形でポジティブな影響をもたらすと感じる人が多いなか、コミュニケーションの取り方や受け止め方、その内容によっては、ネガティブな影響を感じたり、感じさせたりする場合もあるだろう。例えば、機器の操作やコミュニケーションツールの利用に不慣れなことが、不安につながる場合もあるかもしれない。

情報通信機器を介した家族間のデジタルコミュニケーションには、互いの関係をつなぎ、支え合うことに役立つ側面と、互いの関係を遠ざけることにつながる側面がある。家族とのコミュニケーションにおいても、互いのライフスタイルやスキルの違いとともに、相手や周囲の多様な状況を考慮したコミュニケーションの取り方や受け止め方を考えることが求められるのではないだろうか。

【注釈】
1)同様の関連性は同居の場合にもみられるが、別居家族の方がより顕著である。別居家族の方が、直接顔を合わせて会話をする機会が少ない人が多く含まれることによると考えられる。
2)「対面でコミュニケーションをとりにくい家族とのコミュニケーションを行える」もしくは「対面での会話が少ない家族やできない家族へのサポートになると感じる」をあげた人のなかには、「対面での会話が少ない家族やできない家族とのコミュニケーションがますます減る」と答えた人がみられる。これらは同じ相手との関係への異なる影響を指す場合と、異なる相手との関係への別々の影響を指す場合があると考えられる。

【参考文献】
1)第一生命経済研究所「人生100年時代の『幸せ戦略』」『ライフデザイン白書2020』東洋経済新報社、2019年11月
2)第一生命経済研究所「『幸せ』視点のライフデザイン」『ライフデザイン白書2022』東洋経済新報社、2021年10月
3)宮木由貴子「若年層の友人関係意識」2013年1月
4)宮木由貴子「『ママ友』の友人関係と通信メディアの役割」2004年2月

北村 安樹子

北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

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