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ジョブ型雇用の4つのエッセンスとは?

~国際比較から紐解く「自社版:ハイブリット型雇用制度」構築のススメ~

白石 香織

要旨

  • 現在、日本型雇用制度において「ジョブ型雇用制度」が変革の方向性として注目を浴びており、同制度を検討する企業も増えてきている。その一方で、企業は様々な特徴を持つ同制度をどのように採り入れたらよいのか悩み、試行錯誤している。
  • 本レポートでは、アメリカ、フランス、ドイツのジョブ型雇用制度と旧来型の日本型雇用制度を、(1)職務定義(2)新卒採用・解雇(3)給与体系(4)キャリアアップという4つの切り口で比較を行った。
  • 次に、日本型雇用制度のメリット・デメリットを検証し、そこからジョブ型雇用制度から採用できる4つのエッセンス「組織の可視化」「採用の多様化」「給与の可視化」「コースの選択制」を抽出した。また、この4つのエッセンスを実現している日本企業の先進事例も紹介する。
  • 今後の改革の方向性としては、日本型雇用制度の良い面を残しつつ、各社の戦略に合わせてこのジョブ型雇用制度のエッセンスを採り入れる「自社版:ハイブリット型雇用制度」の構築を提唱したい。

  • 「自社版:ハイブリット型雇用制度」においては、まず「採用の多様化」として、①日本型雇用人材、②ジョブ型雇用人材、③非正規雇用人材を新卒および中途採用によって受け入れる。次に、「組織の可視化」により活性化されたジョブ・ポスティングや社内異動・副業を通して、様々な職務に触れる経験をする。ある程度の年齢で「コースの選択制」によって、経営管理職コース、ジョブ型雇用コースなどの選択を行う。将来のコースが決まってからは、「給与の可視化」として、職務に合わせた給与制度に移行するのも一案である。
  • ハイブリット型雇用制度の構築にあたって最も重要なのは、企業と従業員が協働してキャリアを形成していく「コラボ型のキャリア支援」である。これまでは人事権を持つ企業が従業員のジョブローテーションや研修制度を主導してきたが、多様な価値観を持つ従業員のキャリアを支えるには、従業員と一緒にキャリアを形成していく体制が必要となる。
  • コロナショックによって人々の働き方も価値観も大きく変わった。今後は日本型雇用制度の下での物理的な時間と場所を共有した働き方に加え、テレワークを中心とした自律・分散型の働き方の比重が増大していくだろう。組織に所属するという意識が薄れ、従業員の関心は組織への貢献や忠誠心よりも、仕事のやりがいや働きやすさに移行していくのではないかと考える。
  • こうした世の中の動きを踏まえ、企業がハイブリット型雇用制度を設計するうえで、最終的な目的地を従業員のエンゲージメント向上に資する制度とすることが重要となる。コロナの影響で働き方に対する価値観が仕事のやりがいや働きやすさに移行しつつある今こそ、従業員と協働した「コラボ型のキャリア支援」を行い、エンゲージメントを高めていくような改革を実行していくことが企業には求められる。

図表
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白石 香織


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

白石 香織

しらいし かおり

総合調査部 マクロ環境調査G 主任研究員(~24年3月)
専⾨分野: 労働政策、国際政策

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