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注目のキーワード『クラウドファンディング』/編集後記(2022年9月号)

重原 正明

目次

事業を行う際の手軽な資金調達手段として、クラウドファンディングが広く普及しつつあります。クラウドファンディングのクラウド(crowd)とは群衆、ファンディング(funding)とは資金調達の意味で、広い範囲の人々に趣旨を伝えてお金を集めることと定義できます。日本では以前から神社・仏閣の修理などのための勧進等の形で行われてきましたが、インターネットが普及し、クラウドファンディング用のサイトが開設されると、対象事業も参加者も大きく広がりました。さらにコロナ禍による余剰食材の発生や文化団体の財政難などが、クラウドファンディングの活用を一層進めています。

クラウドファンディングは大きく「寄付型」(対価を求めない)、「購入型」(物やサービスを購入)、「投資型」(事業に出資・融資し金銭を得る)の3種類に分けられます。しかし、寄付型でも記念品を贈る場合があるなど、寄付型と購入型の境界はあいまいです。一方、投資型の場合は金融商品取引法等の規制対象となるので、導入のためのハードルは他の2つに比べて高くなります。ただし、長期資金の提供がしやすいなどの利点はあります。

クラウドファンディングの対象となる事業は、個人の世界旅行から、先端的医療研究の支援まで広範囲です。比較的多くあるのが、購入型でベンチャー企業が新商品の予約販売をするものです。購入者としては他にない新商品を安く手に入れられる可能性があり、一方企業側は資金獲得の他、宣伝効果、顧客リストの獲得などのメリットもあります。目標額を集める努力は、ベンチャー企業が本格的に事業を始める前の予行演習ともなるでしょう。また、空き家カフェ等、地域のための施設づくりも多く見られます。

クラウドファンディングはリスクの比較的高い資金提供であり、購入したものが来ないこともありますし、詐欺的事例も見られます。拠出側には選択眼が求められますが、一方で、「ちょっとイケてるプロジェクト」に、資金提供の新しい窓を開くものでもあります。政府の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」においても、「民間の寄付やクラウドファンディング等の資金・人材を呼び込む社会的ファイナンスの活用を促進する」と記されています。リスクは多いが志に賭けるという、クラウドファンディングらしいお金の出し方が、今後も拡大していくことを期待します。

 (総合調査部 政策調査グループ 研究理事 重原 正明)

編集後記

先日国連から「世界人口推計2022」が公表された。これは国連が定期的に世界の人口動態を観察し将来推計を行っているものでWebサイトから詳細なデータ(1950年-2100年)を取得できる。多くの事を教えてくれると思うので是非一度Webサイトを覗いてみることをお勧めする。

報告によれば、中位推計では世界の人口は2023年には80億人を超えた後2058年には100億人を超え、2080年代半ばに104億人でピークを迎える。人口増加の89%はアフリカ。これまで人口トップの中国は2023年には減少に転じ、同時にインドに抜かれる。合計特殊出生率は足元の2.32から低下が続き2050年代には人口維持に必要とされる2.1を下回り2100年には1.84まで低下。65歳以上の高齢者比率は2021年9.6%から2038年には14%を上回り2071年には21%を超える超高齢社会に突入する。高所得国では2000年から2020年までの累計で移民が8,050万人で自然増(出生-死亡)6,620万人を上回る。

日本について言えば、出生率の前提を足元の1.3から徐々に回復し2050年には1.47、その後も回復続き2100年には1.55として…2056年には1億人を割れ、2070年89百万人、2100年74百万人。中位年齢は48.4歳から2056年54.3歳、その後は54歳代で高原状態続く。この推計には外国からの移住者10万人/年を含む。世界は大きく変わる。

少子高齢化、人口減少、頭では分かっているけどなかなか実感が…30年先のこと言われても…今50代以上の方々は真剣に考えた方が良い(もちろんすべての方々ですが)。自分たちの学生時代から既に30年以上経ちます。30年前なんて昨日か一昨日みたいなもんだ。そう30年後は明日や明後日にはやってくるのだ。

(H.S)

重原 正明


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。