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注目のキーワード『エコシステム』

摩尼 貴晴

エコシステム(ecosystem)とは英語で「生態系」を意味する言葉です。もともとは生物学で使われており、自然界で生物や植物がお互いに依存しながら生態を維持する様子を表す言葉です。

今ではこれが派生して、新しいビジネスモデルの創出や市場の開拓などを目的として、企業等や顧客など多様な主体からなるパートナーシップによる共存共栄の関係を示すビジネス用語として一般的になってきました。政府の「骨太方針2023」にも「スタートアップ・エコシステム」という言葉が登場するなど、最近「○○エコシステム」という言葉を目にする機会が増えてきたのではないでしょうか。

エコシステムが注目されるようになったのは、VUCA(Volatility,Uncertainty,Complexity,Ambiguityの頭文字をとった造語で、将来の見通しが困難な状況の意)の時代と言われる現代において、目覚ましい技術革新や顧客ニーズの多様化に適切に対応していくためには、単独の企業でサービスやプロダクトを成立させることが難しくなっていることなどが背景にあります。デジタル・プラットフォーマーとして急成長を遂げた米国のGAFAM(Google、Apple、Facebook(現Meta)、Amazon、Microsoft)は、自社の強みを基盤として、多様なビジネスパートナーと連携・協働し、それぞれ独自のエコシステムを形成し、大成功を収めました。近年、我が国でも産官学連携の動きがみられるようになってきましたが、共通の目的を達成するために、いかに各主体の強みを結集させ、強固なエコシステムを形成するのかが、問われる時代となっています。

企業等が顧客や社会に対して持続的に価値を提供していくためには、自社の競争優位性を追求し、他の競争相手と差別化を図る「競争領域」と、企業が共通の目標を実現するために競争相手と協力する「協調領域」の切り分けが必要と言われています。これはビジネスの世界だけでなく、研究や教育などあらゆる領域についても当てはまります。国・自治体、企業、研究機関など様々な主体が、自らの目的を成し遂げるために、業種・業態、国境を越えて、他者と協調すべき領域についてさらに検討を深めていく必要があり、それがひいては競争力強化につながるのだと思います。

(総合調査部政策調査グループ長 摩尼 貴晴)

摩尼 貴晴


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