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2022.06.01
新興国経済
新興国経済全般
ウクライナ問題
内外経済ウォッチ『アジア・新興国~新興国にとって容赦ない環境が続く~』(2022年6月号)
西濵 徹
世界経済を巡っては、欧米など主要国を中心に景気回復が進んでいる。こうした状況は、構造面で輸出依存度が相対的に高い新興国経済にとり追い風になると期待される。他方、世界経済の回復による需要底入れに加え、ウクライナ情勢の悪化を受けて欧米諸国などはロシアに対する経済制裁を一段と強化させており、幅広い国際商品市況は上振れしている。結果、全世界的にインフレが懸念されるなか、米FRBをはじめとする主要国の中銀はタカ派傾斜を強めており、国際金融市場はコロナ禍を経た全世界的な金融緩和による『カネ余り』状態の手仕舞いが着実に進んでいる。
こうした動きは、全世界的なカネ余りや金利低下を受けて一部のマネーが新興国に回帰した流れに影響を与えている。なかでも経済のファンダメンタルズが脆弱な新興国においては資金流出の動きが集中する傾向があり、経常赤字を抱える国では通貨安による輸入物価の上昇がインフレ圧力を招く可能性が高まる。さらに、近年は多くの新興国で米ドルなど主要通貨による資金調達が活発化しており、自国通貨安は債務負担の増大が経済活動の足かせとなることが懸念される。コロナ禍からの景気回復が道半ばの状況にあるなか、景気に冷や水を浴びせることも考えられる。すでに新興国のなかにはインフレが顕在化しており、主要国中銀に先立ち金融引き締めに動く流れもみられたが、今後はそうした動きが加速する可能性もある。

鉱物資源や穀物などを輸入に依存する新興国においては、市況の上振れは輸入増を通じて対外収支を悪化させるほか、食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とするインフレは家計消費など内需の下押し圧力に繋がりやすい。こうしたなか、生活必需品を中心とするインフレが反政府デモの動きに火を点ける流れが出ており、様々な国で政情不安の高まりが意識される状況となっている。
足元の世界経済は欧米など主要国を中心に拡大が続いているものの、中銀がタカ派姿勢を強めるなかで景気に冷や水を浴びせる懸念が高まりつつある。他方、中国では当局の『ゼロ・コロナ』戦略による行動制限の長期化を受けて、中国景気が失速状態に陥る懸念が出ている。仮に、世界1位の経済規模を有する米国と、2位の中国の双方で景気に下押し圧力が掛かれば、底堅い動きが続いた世界貿易は下振れが避けられず、世界経済の回復の恩恵を受けた新興国経済の逆風となり得る。また、世界経済の減速は上振れする国際商品市況の調整を招き、商品高の恩恵を受ける形で資金流入が期待された資源国を取り巻く状況は一変することも予想される。世界経済の拡大局面においては国際金融市場の動揺は比較的短期に収束するが、世界経済の減速と重なれば事態収束に相当の時間を要することが懸念される。当面の新興国及び資源国を取り巻く状況を巡っては難しい局面に至るか否かの岐路に立たされる状況にある。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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