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日米合意に基づく対米投融資1号案件が公表

~中間選挙に向け、トランプ大統領は成果をアピール~

前田 和馬

2月17日、米トランプ大統領は日米貿易合意における対米投融資(総額5,500億ドル)を巡り、第1弾となる3つの案件を公表した。米商務省の公表資料に基づくと、①オハイオ州におけるガス発電所(総費用:330億ドル)、②テキサス州の石油輸出施設(同、21億ドル)、③ジョージア州の人工ダイヤモンド製造施設(6億ドル)であり、事業規模は約360億ドル(5.5兆円;5,500億ドルの6.5%に相当)に達する。

ガス発電所はAIデータセンターを背景に拡大する電力需要に対応するものであり、トランプ政権は電気代高騰への懸念を和らげる取り組みとしてアピールすることが見込まれる。また、事業地であるオハイオ州は共和党寄りの地域であり、11月の中間選挙では連邦上院議席の改選と知事選挙が実施される。次に、原油輸出施設(港湾設備)は年200億~300億ドル相当の輸出を可能とするものであり、米国のエネルギー優位性の確保と貿易赤字の削減(2025年における財貿易赤字[約1.2兆ドル;試算値]の2%程度)に寄与するものとみられる。最後に、半導体製造等に用いられる人工ダイヤモンドは、現時点では中国依存度が高く、経済安全保障としての役割が大きいだろう。なお、ジョージア州は大統領選の激戦州であり、11月の中間選挙では民主党現職と共和党候補の接戦が予想される。

日米合意に基づくと(内閣官房「日米政府の戦略的投資イニシアティブの概要」を参照)、投融資の実施に際しては、国際協力銀行(JBIC)の資金拠出、及び日本貿易保険(NEXI)の保証を付けたうえでの民間融資が予想される。また、事業で生じたキャッシュフローに関しては、日本の拠出金等が返済されるまでは日米で50:50、その後は10:90となる可能性があるものの、詳細な事業スキームは依然不明である。

日米合意に基づくプロジェクトの残存期間は最長20年である。米国における民間設備の平均経過年数(2024年時点)は、電力インフラ(構造物)で23.6年、(鉄道等を含む)輸送インフラで45.5年であり、同設備が長期使用に耐えうることを踏まえると、上記の発電事業と原油輸出事業における投資回収期間は比較的長期に及ぶ可能性がある。一方、産業機器の経過年数は9.8年であり、人工ダイヤモンド事業の回収期間はこれらより短くなるかもしれない。なお、米国における公益(電力やガス等)の事業所閉鎖率は他業種よりも低く、同事業は投資回収期間が長いものの、必ずしも民間事業者の撤退リスク等が高いわけではない。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

以 上

前田 和馬


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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