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2026.02.25
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米国経済マンスリー:2026年2月
~政府閉鎖で成長率が一時的に減速~
前田 和馬
- 要旨
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2025年10~12月期における実質GDP成長率は+1.4%と、市場予想を大幅に下回った。財消費が小幅に減少したほか、同四半期における43日間の政府閉鎖を背景に公的支出が大幅に減少し、全体の成長率を抑制した。
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一方、2026年1~3月期の実質GDP成長率(4月30日公表)を巡っては、昨年成立した減税法案による税還付が個人消費を押し上げると見込まれる。加えて、前期に大幅に減少した政府支出の反動増が現れることを通じて、表面上の成長率は加速する可能性が高い。
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1月の失業率が2か月連続で低下するなか、26年前半に政策金利が据え置かれるとの見方が強まっている。一方、年後半の金融政策運営はウォーシュ新議長の下での政策運営となるため、インフレ加速の兆候が限られる場合、年内に複数回の利下げが実施される可能性がある。
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【経済指標】
2025年10~12月期実質GDP
10~12月期実質GDPは前期比年率+1.4%(7~9月期:+4.4%)と前期から大幅に減速し、市場予想(+2.8%)を下回った。ただ、同四半期のGDPは政府閉鎖による一時的な影響を大きく受けており、米国経済の基調的な動向を捉える最終国内民間需要をみると、前期比年率+2.4%(+2.9%)と堅調さを保っている。内訳をみると、個人消費は+2.4%(7~9月期:+3.5%)と22四半期連続で前期水準を上回った。サービス消費ではヘルスケアや娯楽サービスが増加基調を維持した一方、耐久財では自動車が9月末のEV補助金終了を背景に大幅な減少を続けた。また、設備投資は+3.7%(+3.2%)と情報処理機器やソフトウェアを中心に増加した。これらIT投資のGDP比は4.7%と、ITバブル期のピーク水準である2000年10~12月期の4.5%を上回るなど、AI関連需要の投資押し上げ効果が鮮明となっている。一方、住宅投資は-1.5%(-7.1%)と4四半期連続で減少するなど、住宅ローン金利の高止まりを背景に低調に推移した。他方、控除項目である輸入は-1.3%(-4.4%)と3四半期連続で減少するなど、4月の相互関税導入以降は減少が続いている。この間、コアPCEデフレーターは前年比+2.9%(+2.9%)と横ばい圏で推移するなど、関税引き上げの影響は限定的に留まっているものの高止まりしている(詳細は「米国:政府機関閉鎖で減速も経済の基調は堅調 (25年10-12月期GDP1次推計と予測)」)。

1月全米供給管理協会(ISM)景況感指数
1月ISM製造業PMIは52.6(25年12月:47.9)と上昇し、11か月振りに好不況の節目となる50を上回った。内訳をみると、生産は55.9(50.7)、生産活動に先行する新規受注は57.1(47.4)、入荷遅延が54.4(50.8)とそれぞれ大幅に上昇し、全体を押し上げた。一方、雇用は48.1(44.8)と上昇したものの、低調に推移していることに変化はない。また、業種別のPMIをみると、化学や輸送機器などの9業種が50を上回る拡大圏、電気機器・電化製品・部品や石油・石炭製品の8業種が縮小圏となるなど、業種による区々の動きとなっている(紙製品は横ばい)。企業コメントでは「2025年や26年前半の受注には結びついていないが、26年後半には好転することを期待する声が聞かれる(輸送機器)」や「建設需要やデータセンター、エネルギープロジェクトの拡大により、請負労働者の確保がひっ迫している(飲食料品・タバコ製品)」とのコメントはみられる一方、「混乱かつ情報のない関税政策が中小企業を悩ませ、長期計画を困難にしている(金属加工)」など、引き続き関税政策へのネガティブなコメントが目立つ。
他方、1月ISM非製造業PMIは53.8(53.8)と横ばい圏で推移した。足下のサービス業活動は好不況の節目となる50を上回るなど、底堅く推移している。内訳をみると、事業活動が57.4(55.2)と更に加速した一方、雇用は50.3(51.7)、新規受注は53.1(56.5)と拡大圏を保ちつつも減速した。企業コメントでは「消費者は引き続き裁量的な財を購入している(小売業)」など消費の強さを指摘する声がみられる一方、「AIデータセンターがIT市場の制約を引き起こすことが予想される。現時点ではみられないものの、IT機器の(納入の)遅れが今後数か月で発生すると見込まれる(医療・社会福祉)」との供給制約への懸念が聞かれる(詳細は「米国 11カ月ぶりに拡大圏へ浮上(1月ISM製造業)」及び「米国 26年は良好なスタート(1月ISM非製造業景気指数)」)。
1月雇用統計
1月雇用統計における非農業部門雇用者数は前月差+13.0万人(12月:+4.8万人)と前月から大幅に加速した。3か月移動平均では+7.3万人(-1.7万人)と、10月における政府職員の大量離職(1月に実施した早期退職プログラム応募者の退職時期)の影響剥落を背景に4か月振りに増加へと転じた。1月の雇用者数を業種別にみると、医療・社会福祉は前月差+12.4万人(+4.9万人)と人手不足を背景に48か月連続で増加し全体を押し上げた。加えて、建設業は+3.3万人(-0.4万人)と2か月振り、専門・企業サービスは+3.4万人(+1.5万人)と3か月連続でそれぞれ増加するなど、緩やかな回復基調を示している。一方、製造業は+0.5万人(-0.8万人)と14か月振り、小売業は+0.12万人(-3.54万人)と4か月振りに前月水準を上回ったものの、均してみれば低調に推移している。他方、政府部門は-4.2万人(-1.6万人)と4か月連続で減少するなど、トランプ政権による政府職員削減を背景に減少が続いている。
この間、1月の労働参加率は62.5%(12月:62.4%)と小幅に上昇した一方、失業率は4.3%(4.4%)と2か月連続で低下するなど、2025年半ば以降にみられた上昇傾向が一服している。また、週平均労働時間は前年比+0.6%(0.0%)と9か月振りに上昇した一方、平均時給は+3.7%(+3.7%)と横ばい圏で推移した。この結果、労働所得(=民間雇用者数×平均労働時間×平均時給)は+4.8%(+3.7%)と、賃金上昇を背景に増加基調で推移している。他方、CPI上昇率を控除した実質賃金は時間当たりで+1.2%(+1.0%)、週当たりでは+1.9%(+0.7%)と増加するなど、底堅く推移している(詳細は「米国 26年1月雇用統計は労働市場安定化の兆しを示す」)。
1月消費者物価指数(CPI)
1月消費者物価指数(CPI)は前月比+0.2%(12月:+0.3%)と前月から減速した。足下のトレンドを示す3か月前比年率でみると、総合指数が+2.9%(+2.2%)、コア指数は+2.9%(+1.7%)と政府閉鎖の一時的なかく乱の影響を除くとFRBによる2%目標を上回る推移となっている(10月実績は政府閉鎖を背景に実績が公表されていないため、前月から横ばいと仮定し算出)。
1月の内訳を見ると、食品は前月比+0.2%(12月:+0.7%)と大幅に減速した。生鮮果物・野菜やコーヒー等の価格が低下したほか、外食等も上昇幅を縮小した。一方、エネルギーは-1.5%(+0.3%)とガソリン価格低下を背景に前月から下落した。この間、食品・エネルギーを除くコアベース指数は+0.3%(+0.2%)と前月から加速した。コアCPIの内訳を見ると、住居費が+0.2%(+0.4%)と家賃を中心に騰勢を鈍化した一方、住居費を除くコアCPIは+0.4%(+0.1%)と前月から大幅に加速した。コア財は0.0%(0.0%)と、衣服や家電が高関税等を背景に上昇したものの、中古車の下落がこれを相殺した。他方、サービスでは航空運賃が全体を押し上げたほか、インターネットやその他サービスが高い伸びを示した。 先行きのCPIを巡っては、サービス価格は労働需給緩和による賃金上昇率の安定や家賃の鈍化を背景に減速が続く可能性が高い。一方、財価格は追加関税による輸入物価上昇の影響が時間をかけて波及するとみられ、特にCPI上のウェイトが大きい新車やアパレルへの価格転嫁動向が注目される(詳細は「米国 緩やかな低下傾向(26年1月CPI)」)
12月小売売上高
12月小売売上高は前月比0.0%(11月:+0.6%)と前月から横ばい圏で推移した。11月はセールの前倒し等を背景に年末商戦の好調さがみられたものの、12月はこうした反動が一部に現れたとみられる。内訳をみると、自動車は-0.2%(+1.2%)、家具は-0.9%(-0.1%)、家電が-0.4%(+0.2%)とそれぞれ減少するなど、耐久消費財が軟調に推移した。また、衣料品は-0.7%(+0.5%)と3か月振りに前月水準を下回った。一方、無店舗小売は+0.1%(0.0%)と僅かながら増加したほか、ガソリンが+0.3%(+1.7%)と価格上昇を背景に2か月連続で増加した。この結果、GDP算出に用いられるコア小売売上高(自動車・ガソリン・建設材・飲食サービスを除くコントロール・グループ)は-0.1%(+0.2%)と3か月振りに減少した結果、10~12月期では前期比+0.6%(7~9月期:+1.6%)と7四半期連続で増加した。株高を背景とした高所得者消費の牽引もあり、2025年の個人消費は減速しながらも底堅く推移した(詳細は「米国 12月小売売上高は前月の反動で鈍化」)。ただ、クレジットカード利用実績や人流データを用いた「シカゴ連銀小売速報(CARTS)」において、1月の小売売上高(外食を含み自動車を除く)は名目ベースで前月比-0.1%(12月:0.0%)、インフレ調整後の実質ベースでは-0.1%(-0.3%)と共に減少したと試算されるなど、2026年に入ってやや弱含みの兆しがみられる。
1月鉱工業生産
1月鉱工業生産は前月比+0.7%(12月:+0.2%)と3か月連続で上昇し、市場予想(+0.4%)を上回った。1月の内訳を見ると、鉱業は-0.2%(12月:-0.9%)と2か月連続で低下した一方、公益は+2.1%(+3.0%)と1月下旬の北東部における寒波を背景に2か月連続で大幅な上昇を示した。一方、製造業は+0.6%(0.0%)と上昇するなど、緩やかに回復している。製造業の内訳を見ると、一般機械は+1.2%(-0.3%)、コンピュータ・電子製品は+1.0%(0.0%)、電気機器・部品は+0.4%(+1.6%)と、耐久財が堅調に推移した。また、自動車・同部品は+1.3%(0.0%)と5か月振りに上昇するなど、EV補助金終了による生産低迷から反発した。先行きに関して、トランプ関税によるサプライチェーンの混乱や価格上昇を背景とした需要減少、及び半導体等の供給不足による生産下押しに警戒が必要だろう(詳細は「米国 26年1月鉱工業生産は上振れ、製造業が牽引」)。
12月住宅着工件数
12月住宅着工件数は年率140.4万戸(11月:132.2戸)と2か月連続で増加し、市場予想(130.4万戸)を大幅に上回った(前月比+6.2%;11月:同+3.9%)。住宅着工は高金利政策を背景に低調に推移していたものの、足下で底打ちの兆しがみられる。12月の内訳を見ると、戸建住宅が前月比+4.1%(11月:+5.4%)と3か月連続、集合住宅は+11.3%(+0.5%)と2か月連続でそれぞれ前月水準を上回った。地域別にみると、西部や北東部が集合住宅を中心に増加した一方、最大市場の南部は在庫積み上がりを背景に減少した。この間、住宅着工に先行する住宅建設許可件数は年率144.8万戸(138.8万戸)と3か月振りに増加するなど、緩やかな回復の兆しを示している。先行きの住宅市場に関して、2026年はこれまでの買い控えからの反動が現れる可能性が高いものの、移民抑制による労働力不足(供給不足)等が回復を抑制する懸念に警戒が必要だろう。また、住宅ローン金利はFRBによる累積的な利下げを通じて、ピーク時からは低下しているものの、中長期的には依然高水準に留まっているため、需要刺激効果は緩やかに留まると見込まれる(詳細は「米国:25年12月住宅着工は西部地域主導で大幅増」)。
【経済見通し】
先行きの米国経済を巡っては、利下げによる住宅投資の下支え、或いは7月に成立した減税法案の効果発現などを背景に、緩やかな成長を続ける可能性が高い。特に米国の確定申告は2026年4月15日が期限であり、この前後に家計への税還付が集中すると個人消費への刺激効果が期待される。例年、こうした税還付は借入金やクレカローンの返済に使われてきた一方、今回は減税法案で還付金額が大きいため、こうした資金は耐久消費財等の購入に充てられる期待がある。
一方、移民抑制による労働供給減の影響は割り引いてみる必要があるものの、足下では雇用者数の伸びが緩やかに留まっている。新規の求人や採用が鈍化するなか、今後企業による人員削減の動きが積極化する場合、失業率が急騰するリスクに警戒が必要だ。12月の有効求人倍率(=求人数÷失業者数)は0.87(11月:0.89)と3か月連続で1倍割れに陥っており、大幅な失業者の増加を吸収する十分な雇用は存在しない。
この間、2月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は91.2(1月:89.0)と2か月振りに上昇したもの、消費者間での雇用に関する不安は続いているようにみえる。また、同月のミシガン大学消費者信頼感指数は56.6(56.4)と小幅ながら3か月連続で上昇したものの、消費者マインドが低水準に留まっていることに変化はない。減税法案の恩恵が富裕層に集中する一方、オバマケア補助金の打ち切りを中心とした社会保障制度の変更、及び高関税を通じた財価格の値上がり等による負担は低中所得者層に集中する可能性が高く、足下における消費の二極化が持続する懸念は残る。
【金融政策】
ウォーシュ氏を次期FRB議長に指名
1月30日、トランプ大統領は5月に任期を迎えるパウエルFRB議長の後任に、2006~11年にFRB理事を務めたケビン・ウォーシュ氏を指名した。2025年11月のWall Street Journalへの寄稿において、同氏は「AIによる生産性上昇がディスインフレ圧力となること」や「大企業に恩恵をもたらすFRBの肥大化したバランスシートを縮小する代わりに、家計や中小企業のために金利を引き下げること」などを主張しており、今後の利下げに前向きな人物とみられている。とはいえ、前者の利下げペースを巡っては、1月FOMC議事要旨(後述)において参加者の多くが様子見スタンスを示しており、ウォーシュ新議長が各メンバーを説得し、積極的な利下げに踏み切れるかはその際の経済・物価動向にも依存するだろう。また、後者の資産圧縮を急速に進める場合、短期金融市場の混乱や米国債売却による長期金利の上昇懸念が浮上するため、その実現性には不透明感が残る。
1月FOMC議事要旨
1月FOMC議事要旨(1月27~28日開催)では一部の参加者が利上げに前向きなスタンスを示していたことがわかった。同会合にてFRBは4会合振りに政策金利を据え置いたものの、ミラン・ウォラー両理事が0.25%ptの利下げを主張して反対票を投じていた。議事要旨では複数(some)のメンバーが今後のデータを評価するために当面の間は政策を据え置くことが適切と述べた一方、数人(several:一般的にsomeより少ない)は「インフレが2%目標を上回り続ける場合には利上げが適切となる可能性があるため、今後のFOMCにおける政策判断を巡り、両面的な記載を主張することもできた」と指摘した。なお、1月FOMCの声明文では「更なる政策調整の程度と時期を巡り、FOMCは今後のデータ、見通しの展開、リスクバランスを注視する」と記載されるなど、更なる政策変更は利下げであることが示唆されている。加えて、パウエル議長は同FOMC後の記者会見において「利上げは基本シナリオではない」と否定的な見解を示していた。
また、先行きの経済・物価情勢を巡って、FOMC参加者は2026年の堅調な経済成長と、関税による財インフレの鈍化を予想するものの、両者に不確実性があることを指摘した。何人(a few)かの参加者は企業による自動化がインフレ圧力を緩和していると主張する一方、数人(several)は強い需要がインフレを高止まりさせるリスクを主張した。

【トランプ政権】
IEEPA関税に違憲判決
2月20日、米連邦最高裁はトランプ政権による国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税措置を違憲と判断した。同判決ではIEEPAが規定する「輸入制限」に関税は含まれず、関税を含む課税権限は議会にあることを指摘した(多数意見は賛成6、反対3)。これを受けトランプ政権は相互関税やフェンタニル関税の徴収を24日に終了した一方、同日には代替措置として通商法122条に基づく10%の輸入課徴金を課した。また、トランプ大統領は同関税率を15%に引き上げる可能性に言及している。同法は巨額の経常赤字に対処するため、150日間に限り最大15%の関税を課す権限を大統領に与えている。
判決以前の2月20日時点における米国の実効関税率は12.8%だった(2024年実績の2.4%と比べると+10.4%pt)。一連のIEEPA関税が撤廃され、各国・各地域に15%関税が課される場合、実効関税率は11.0%と従来から1.8%pt低下する。高関税はインフレ率を押し上げ、経済成長率を抑制するとみられるものの、従来と比較すると、こうした関税率の低下はインフレの押し上げ効果を0.2%pt、GDPへの負の影響を0.1%ptそれぞれ緩和する。また、国別にみると、10%関税を課されていた英国や豪州などは関税率が上昇する一方、中国(フェンタニル関税10%+相互関税10%→122条関税15%)やカナダ、ベトナムなどは関税率が下がるだろう(詳細は2026年2月24日付け「最高裁がトランプ関税に違憲判決」)。


前田 和馬
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

