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対米投融資1号案件による日本への影響

~日本製品の採用率に依存するが、輸出を最大5,000億円程度押上げ~

前田 和馬

2月18日、日米両政府は関税合意に基づく5,500億ドルの対米投融資を巡り、第1弾として①オハイオ州におけるガス発電所(総費用:333億ドル)、②テキサス州の石油輸出施設(同、21億ドル)、③ジョージア州の人工ダイヤモンド製造施設(6億ドル)が決定したと公表した。3案件の事業規模は約360億ドル(5.5兆円;5,500億ドルの6.5%に相当)に達する一方、この大半はAIデータセンター向けのガス発電事業(①)が占める。実際、投融資案件の発表後における日本の株式市場では、発電事業に関連する重工業や電線関連の銘柄に買いが集まった。

本稿では、同発電事業による日本経済への影響として、期待される輸出の押上げ額を概算した。米国における関連製品の輸入シェアを前提にすれば、日本からの発電関連設備等の輸出は500億円程度押し上げられるに留まる。一方、日本製品が同事業に優先的に採用される場合、輸出は最大5,000億円程度押し上げられる可能性がある。なお、プロジェクトの工程等は現時点で不明であるほか、日本の重工業設備は足下で受注残の積み上がりと納期の長期化がみられるため、こうした影響が現れるタイミングに関しては不透明感が残る。

・試算方法(日本円換算額は1ドル=155円で試算)

  1. 発電所新設に関わる費用はガスタービンや発電機などの機械・機器、基礎や建屋などの構造物、その他費用等に分けられる。米国における電力業の設備投資構成(2015~24年平均)は機械・機器が40.2%、構造物が53.6%、無形資産が6.3%である。事業費の構成をこれと同一と仮定すると、事業費は機械・機器が134億ドル、構造物が178億ドル、その他が21億ドルとなる。

  2. 2024年における米国の産業連関表に基づくと、(発電設備を含む)一般機械及び電気機器における産出量に占める輸入比率は26.6%である。同比率を用いると、機械・機器の米国内調達は98億ドル、輸入が36億ドルとなる。一方、建設業の総産出量に占めるモノ(建設資材等の製造品)の中間投入は34.3%、このうち輸入品に限ると5.2%と試算される。これに基づくと、構造物支出178億ドルのうち、輸入品に充てられる支出は9億ドルとなる。

  3. 以上をまとめると、ガス発電事業の総事業費333億ドルのうち、輸入品に充てられるのは機械・機器36億ドル、及び建設資材等の9億ドルの合計額、すなわち45億ドル(6,952億円;全事業費の13.5%)と概算できる。これ以外の支出は米国内における人件費や物品購入に充てられることとなる。

  4. 2025年における米国の輸入実績に基づくと、例えばボイラーやタービン、発電機等(HSコード:8402/8406/8411/8501と仮定)の日本シェアは7.8%である。これに上記45億ドルを掛けると、日本の輸出は4億ドル(539億円)押し上げられるに留まる。一方、日米投資案件は日系企業が優先的に製品等を納入すると見込まれ、仮に輸入品の70%を日本製品が占める場合、輸出の押し上げ効果は31億ドル(4,867億円)に達する。なお、日系企業の製品が採用される場合においても、これを米国工場等で製造する場合には、日系企業の連結収益に押し上げ効果があるものの、輸出に対する影響はより限定される。

なお、上記推計は公的データ等に基づいており、同事業の輸入品等の採用率等は業種平均と大きく異なる可能性があるため、結果は幅を持ってみる必要がある。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

以 上

前田 和馬


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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