米国:政府機関閉鎖で減速も経済の基調は堅調 (25年10-12月期GDP1次推計と予測)

~26年は大規模減税を背景に成長再加速へ~

桂畑 誠治

要旨
  • 25年10-12月期GDPの1次推計は、政府機関閉鎖の影響で公表が遅れていたが、26年2月20日に公表された。10-12月期の実質GDP成長率(1次推計)は、前期比年率+1.4%(7-9月期同+4.4%)と減速した。政府機関閉鎖の影響や貿易赤字の拡大によって、市場予想中央値(同+2.8%)を大幅に下回った。25年の実質GDP成長率は、前年比+2.2%と24年の+2.8%から鈍化したものの、潜在成長率(+1.8%)を上回った。
  • 10-12月期の設備投資は、AI関連投資の拡大を背景に、同+3.7%(同+3.2%)と小幅加速した。輸送機器投資が同▲30.3%(同▲4.2%)と減少幅を拡大したほか、増産投資が同▲4.8%(同+2.1%)と減少に転じた一方、知的財産投資が同+7.4%(同+5.6%)、情報化投資が同+19.5%(同+5.9%)と加速した。建設投資が同▲2.4%(同▲5.0%)と減少幅を縮小した。また、住宅投資は、金利の高止まりや建設業者のマインドの悪化等によって同▲1.5%(同▲7.1%)と4四半期連続で減少したが、減少幅を縮小した。 一方、個人消費は、EV購入支援の9月終了、関税による値上がりを警戒した駆け込みの減退、政府機関の一部閉鎖等を受け、同+2.4%(同+3.5%)と減速した。自動車など耐久財が減少したほか、食品、衣服などの非耐久財は減速した。また、医療、余暇などのサービスが小幅に減速した。 以上より、実質民間国内最終需要は、同+2.4%(同+2.9%)と小幅に鈍化したものの、堅調さを維持した。実質国内最終需要は、政府支出が政府機関の閉鎖によって、同▲5.1%(同+2.2%)とマイナスに転じたため、同+1.1%(同+2.8%)と大幅に減速した。
  • このような中、在庫投資のGDP寄与が、在庫の減少ペースの鈍化で同+0.21%(同▲0.12%)とプラスに転じた一方、純輸出のGDP寄与が、輸出の減少等を背景に、同+0.08%(同+1.62%)とプラス幅を縮小した。この結果、実質GDP成長率は同+1.4%(同+4.4%)と減速した。なお、10-12月期の民間雇用者数は前月差+5.0万人と小幅な増加にとどまった。
  • 前年同期比では、10-12月期の実質GDP成長率(1次推計)は、+2.2%(7-9月期+2.3%)と小幅鈍化した。インフレでは、10-12月期のPCEデフレーターが+2.8%(同+2.7%)、PCEコアデフレーターが+2.9%(同+2.9%)と高止まりし、トランプ関税が物価に徐々に影響していることが確認された。家計負担の実態により近い市場ベースのPCEコアデフレーターは+2.6%(同+2.6%)、PCEデフレーターは+2.6%(同+2.5%)と小幅に加速しており、同期に家計負担の強い状況が続いていることが確認された。
  • 米国の経済成長の基調をみると、3四半期移動平均で10-12月期の実質GDPは前期比年率+3.2%(前期同+2.5%)と伸びが高まり、拡大ペースが加速した。一方、実質国内最終需要は、前期比年率+2.1%(同+2.2%)と小幅に鈍化したものの、堅調さを維持した。
  • 26年には、トランプ関税の一部が相互関税から通商法122条に基づく15%関税に置き換わったが、小幅低下にとどまる。これらは経済成長の押し下げ要因となるものの、減税効果、不確実性の和らぎ、政府機関の再開による押し上げ等によって、経済成長は加速すると見込まれる。 26年の個人消費は、価格上昇等の影響を受けるものの、株や不動産などの資産残高の増加や減税などを背景に堅調さを維持する見込みである。設備投資も、減税効果に加えて、IT需要の拡大、通商合意による不確実性の低下、直接投資の増加等によって伸び率が高まろう。さらに、通商合意を背景とした農作物やエネルギーの輸出拡大も見込まれる。 以上により、26年の米経済は潜在成長率を上回る成長を続け、年間で+2.4%成長に加速する公算が大きい。労働市場では、失業率が4.5%を下回る水準で安定する一方、非農業部門雇用者数は前月差+9万人程度にとどまり、雇用の増え難い経済拡大の様相を呈すると見込まれる。他方、インフレは、住宅関連での低下が続くものの、関税賦課の影響が徐々に顕在化するなかで緩やかに上昇する可能性が高い。このような環境のもと、FRBは26年を通じて利下げに慎重な姿勢を維持すると予想される。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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