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2024.06.20
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ニュージーランド、テクニカル・リセッション脱出も軟調な動きは不変
~中銀は物価抑制へタカ派姿勢を維持し、NZドルは日本円に対して堅調な推移をみせる余地は大きい~
西濵 徹
- 要旨
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- ニュージーランドでは過去3年以上インフレ率が中銀目標を上回るなか、中銀はタカ派姿勢を堅持するなど物価高と金利高の共存が景気の足かせとなる状況が続く。昨年後半の同国経済はテクニカル・リセッションに陥り、年明け以降も不透明要因が山積しているが、1-3月の実質GDP成長率は前期比年率+0.71%と3四半期ぶりのプラス成長に転じた。ただし、在庫積み上がりの動きがプラス成長を促すなどその内容は軟調であり、先行きも力強さを欠く推移が続くと見込まれる。金融市場では早期の利下げ観測が高まる可能性はあるが、中銀は物価抑制を目的に今後もタカ派姿勢を堅持する可能性は高い。NZドルは日銀の「次の手」が見通せないなか、当面は日本円に対して堅調な推移をみせる余地は大きいと予想される。
ニュージーランドでは過去3年以上に亘ってインフレ率が中銀目標を上回る推移が続いており、中銀は物価と為替の安定を目的に累計525bpもの利上げを迫られるとともに先月の定例会合でも『タカ派』姿勢を強調するなど(注1)、物価高と金利高の共存が景気の足かせとなる懸念が高まっている。中銀がこうした姿勢をみせる背景には、一時30年ぶりの水準に達したインフレは頭打ちしているにも拘らず依然として中銀目標を大きく上回る推移が続いている上、足下ではサービス物価を中心に上昇が続くなど粘着度の高さを窺わせる動きをみせていることがある(注2)。昨年後半の同国経済は2四半期連続のマイナス成長となるテクニカル・リセッションに陥るなど急ブレーキが掛かったが、その後も物価高と金利高の共存に加え、世界経済を巡る不透明感の高まりなど景気の不透明要因が山積する状況が続いている。こうした状況ではあるものの、1-3月の実質GDP成長率は前期比年率+0.71%と3四半期ぶりのプラス成長となるなどテクニカル・リセッションを脱するとともに、中期的な基調を示す前年同期比ベースでも+0.3%と3四半期ぶりのプラス成長に転じるなど底打ちが確認されている。インフレ鈍化による実質購買力の押し上げやイースター(復活祭)休暇の時期のズレ、旺盛な移民流入の動きなども影響して家計消費は拡大する一方、世界経済の減速懸念が輸出の重石となるとともに、金利高の長期化が住宅投資や企業部門による設備投資の足かせとなるなど、全体的にみれば勢いを欠く展開が続いている。分野ごとの生産動向を巡っても、鉱業や製造業、建設関連の生産は軒並み下振れする一方、過去1年に亘って調整の動きが続いた農林漁業の生産が底打ちしているほか、金融関連や物流関連などサービス業の堅調さが景気を下支えしている。ただし、当期は在庫投資による成長率寄与度が前期比年率ベースで+2.93ptと成長率を大きく上回るなど在庫の積み上がりが景気を押し上げており、前期については在庫調整の動きが景気の足かせとなるなどその内容を過度に悲観する必要はないと判断されたものの(注3)、当期については真逆の状態にあると捉えられる。よって、足下の景気はテクニカル・リセッションを脱しているものの、軟調な状況が続いている展開は変わらず、先行きの景気も力強さを欠く推移をみせる可能性は高いと見込まれる。こうした状況を勘案すれば、金融市場においては中銀が景気下支えの観点から早期利下げを迫られるとの見方が根強く、先行きもそうした見方がくすぶると見込まれる一方、中銀は先月の定例会合においてもインフレとインフレ期待の抑制には経済成長の鈍化が必要との認識をあらためて示すなど『タカ派』姿勢を強調する考えをみせている。これは昨年の総選挙を経て発足したラクソン現政権の下で中銀法が改正されており、中銀が金融政策を通じて担う責務が物価抑制のみに変更されていることが影響していると判断できる。通貨NZドル相場を巡っては、米ドルに対しては米FRB(連邦準備制度理事会)の政策運営に対する見方を反映して上下双方に動く展開がみられる一方、日本円に対しては金融政策の方向性の違いを反映して強含みする展開をみせてきた。先行きについても日本銀行による『次の手』が見通せず、金利差が意識されやすい環境が続くと見込まれるなかで堅調な推移をみせる可能性は高まっていると判断できる。



注1 5月22日付レポート「ニュージーランド中銀、タカ派姿勢強調でNZドル相場はどうなる」
注2 4月17日付レポート「ニュージーランド、インフレの粘着度は中銀の抑制姿勢の長期化を示唆」
注3 3月21日付レポート「ニュージーランドはテクニカル・リセッションで景気に急ブレーキ」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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