4-6月期の反発力は鈍いものに

~期待外れの輸出と生産、弱い消費者マインド。4-6月期の回復力に懸念~

新家 義貴

要旨
  • 24年4-6月期のGDP成長率は前期比年率+2%超の高成長となるとの見方が多いが、その実現には疑問符がつく。

  • 自動車生産の持ち直しで4-6月期の鉱工業生産は増加が見込まれるが、1-3月期の落ち込み幅と比較して戻りは限定的とみられる。また、4~5月の輸出も伸び悩んでおり、4-6月期の外需寄与度はマイナスになる可能性が高まりつつある。

  • 消費者マインドは足元で悪化傾向。電気代、ガス代高騰(再エネ賦課金引き上げ、負担軽減策終了)、円安などを受け、物価上昇への懸念が強まっていることが背景にあるとみられる。24年春闘における歴史的な賃上げ実現や6月からの減税実施への期待感から消費意欲が盛り上がることが期待されていたが、現状、そうした動きは確認できない。

  • 4-6月期の反発力はこれまで想定されていたよりも鈍いものになるとみられ、コンセンサスは今後下方修正される可能性がある。なかでも懸念されるのが個人消費の伸び悩みであり、日銀の好循環シナリオ実現の上でも鍵を握る。今後、消費関連統計への注目度が高まる見込み。

4-6月期の高成長予想は実現可能か

24年1-3月期のGDPは前期比年率▲1.8%のマイナス成長となったが、4-6月期についてはプラス成長に転じるとの見方が大勢を占めている。1-3月期の成長率は、認証不正問題をきっかけとした自動車の大幅減産により押し下げられた面が大きいため、自動車生産が正常化に向かうことで4-6月期は反発が見込めることが背景にある。自動車販売の増加による個人消費持ち直し、輸送機器投資の増加による設備投資の回復、自動車輸出の増加といったことが想定されており、4-6月期の成長率は前期比年率で+2%超になるとの見方が多い。

もっとも、こうした4-6月期の高成長予想は裏切られるかもしれない。足元で公表されている経済指標には冴えないものが多く、総じて期待外れの状況である。4-6月期はプラス成長にはなるとみられるが、その反発力については鈍いものにとどまる可能性が高まっているように思える。以下、足元の経済情勢について概観する。

生産は期待にとどかず

期待外れの一つ目は鉱工業生産だ。4月の鉱工業生産は前月比▲0.9%と低下している。3月に同+4.4%と伸びた反動の面はあるにせよ、自動車生産の持ち直しから順調に回復するとの見方が多かったことからすれば物足りない結果と言えるだろう。予測指数を見ても、5月は前月比+6.9%と増産が見込まれている一方、6月は同▲5.6%と減産見込みで、一進一退の域を出ていない。なお、予測指数の上振れバイアスを考慮して経済産業省が試算している補正値でみると5月は前月比+2.3%にとどまっていることからすると、実際の着地は5月に前月比+2~3%程度、6月に▲2%程度といったところだろうか。ここで仮に5月が前月比+2.5%、6月が同▲2%になったとすると、4-6月期の鉱工業生産は前期比+2.8%となる。明確な増産ではあるが、1-3月期に同▲5.2%もの落ち込みとなった後にしては物足りなさが否めない。

足元で自動車生産については正常化に向かっており、4-6月期も大幅増産が確実視されるほか、世界的な在庫調整の進展を受けて電子部品・デバイスも好調さを保っているものの、その他の財がパッとせず、生産回復の頭を押さえている状況だ。

輸送機械の生産(季節調整値)、鉱工業生産(季節調整値)
輸送機械の生産(季節調整値)、鉱工業生産(季節調整値)

輸出も伸び悩み

生産回復の勢いが鈍い要因の一つとして挙げられるのが輸出の伸び悩みである。日本銀行が試算している実質輸出(季節調整値)において、4月は前月比+0.1%にとどまっていたが、6月19日に公表される5月分についても低調な結果に終わる可能性が高い。現時点の5月輸出金額の市場予想は前年比+13.3%(5月上中旬の前年比は+14.8%)だが、仮にこの数字が実現した場合、5月の実質輸出は前月比で▲2.0%程度の落ち込みとなる。この場合、4-5月平均の値は1-3月期対比で+0.3%にとどまる。1-3月期が前期比▲2.6%の減少だったことを考えれば明らかに期待外れといえるだろう。GDPベースの実質輸出では4-6月期に前期比プラスになるとみられるが、1-3月期の同▲5.1%の大幅減少と比べれば反発はかなり控えめなものになる可能性が高い。輸入については4-6月期にそれなりの増加が予想されることを考えると、4-6月期の外需寄与度はマイナスになり、GDP成長率の下押し要因になる可能性が高まっている。

実質輸出(季節調整値)
実質輸出(季節調整値)

弱い消費者マインド

もう一つの懸念材料は個人消費の動向だ。24年春闘における歴史的な賃上げ実現や6月からの減税実施への期待感から消費意欲が盛り上がることが期待されていたのだが、足元の消費者マインドはむしろ悪化に転じている。

背景にあるのは物価上昇への懸念だ。円安の進展によりこの先値上げが加速するとの見方が広がったことに加え、5月からの再生可能エネルギー発電促進賦課金単価の引き上げや、6月からの電気・ガス代負担軽減策の半減・縮小に伴って電気代・ガス代が高騰するとの報道が増えたことなどが消費者マインドを冷やしたものと思われる。実際、消費動向調査で家計が感じている物価上昇度合いを確認すると、23年初をピークとして徐々に落ち着きを見せつつあったが、ここにきて再び物価認識が悪化している。

供給サイドのマインドを捉えた景気ウォッチャー調査もこのところ悪化傾向にある。現状判断DI、先行き判断DIとも3ヶ月連続の低下であり、好不調の判断基準である50を割り込んでいる。特に家計動向関連の弱さが目立ち、期待されたサービス関連も足元で悪化傾向にあることが気がかりだ。景気ウォッチャー調査では、実際の客足や売り上げ動向を元に企業が回答しており、実際の消費動向との連動性も高い。少なくとも5月までの個人消費は冴えない動きに終わったと見て良いのではないだろうか。

このように、家計サイド、供給サイドとも足元でマインドは冷え込みつつある。この先、春闘での歴史的な賃上げが実際の給与に反映されてくることや、6月からの減税実施によって実質所得は増加することが見込まれるが、増えた所得をどの程度消費に回すかは消費者心理に依存するところが大きい。だが、現時点では円安による値上げ懸念や電気代・ガス代高騰など負担増に関する報道が多いことに加え、減税についても事務負担の増加等のネガティブな面がクローズアップされることが多く、所得の増加期待が消費意欲を盛り上げる状況にはなっていない。

消費者態度指数の推移、家計が感じる物価上昇、景気ウォッチャー調査
消費者態度指数の推移、家計が感じる物価上昇、景気ウォッチャー調査

家計はこれまで、物価の急上昇による実質所得の大幅減少に直面するなか、生活レベルを落とさないよう、できるだけ実質消費の水準を維持するよう努めてきた。実質所得の減少に比べて消費の減少幅が小さくなった結果、貯蓄率は低下し、足元ではマイナス圏に突入している。この先、仮にマイナスとなった貯蓄率を平常の状態に戻すことを家計が優先させれば、所得の増加が貯蓄に回ってしまい、消費が思うように増加しないという展開もあり得る。足元における消費者マインドの悪化は、こうした懸念を強める材料と言えるだろう。

このように、先行きの消費には不透明感が大きい。自動車販売台数は大幅に増加していることから耐久財消費主導で4-6月期の個人消費は増加に転じるとみられるが、その他の財、サービス消費は伸び悩むことが予想される。1-3月期の大幅な落ち込み(前期比▲0.7%)と比べて、4-6月期の戻りは小さなものにとどまる可能性が高まっていると思われる。

4-6月期の反発力は鈍い

以上のとおり、4-6月期の反発度合いについては期待外れに終わる可能性が高まりつつある。自動車生産は持ち直しているためマイナス成長になることはないだろうが、これまで期待されていたような高成長シナリオの実現は難しい。4-6月期成長率のコンセンサスは前期比年率で+2%超とみられるが、この先、徐々に下方修正される可能性が高いのではないだろうか。

なお、本稿で述べたなかでも特に気になるのが消費の伸び悩みである。消費の回復は日銀が目指す好循環シナリオ実現の肝だ。消費が弱い状態が続くなかでの物価上昇には持続性がなく、その場合、いずれ物価は鈍化していくだろう。賃上げと減税で消費持ち直しというシナリオが維持できるかどうかを見る上で、今後公表される消費関連統計に注目したい。

新家 義貴


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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