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2026.02.12
日本経済
所得・消費
賃金
2026年・春闘賃上げ率の見通し(改定版)
~5.45%と、ほぼ前年並みの高い賃上げが実現する可能性が高い~
新家 義貴
- 要旨
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2026年春闘賃上げ率を、厚労省「民間主要企業」ベースで5.45%(25年春闘:5.52%)、連合集計ベースで5.20%(25年春闘:5.25%)と予測する。歴史的な賃上げと言われた25年春闘とほぼ同等の高い賃上げが実現するとみられる。
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主要産業別組合から、前年並み、もしくは前年をやや上回る要求方針が相次いで打ち出されている。前年より明確にトーンダウンしたケースは見当たらず、賃上げ姿勢が前年から衰えている様子は窺えない。25年春闘でも賃上げは実現したものの、物価高により実質賃金が改善しなかったことに対する問題意識が強く、26年春闘では実質賃金の改善を目指すことが強調されている。
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経営側も賃上げに前向き。経団連から公表された経労委報告は「賃金引上げモメンタムのさらなる定着」を掲げ、ベア検討を賃金交渉のスタンダードと位置付けるなど、月例賃金の底上げと実質賃金の安定的なプラスを志向。
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日程面では、3/18が集中回答日、3/23に連合から第1回回答集計結果が公表される。また、それに先んじて3/5に連合から公表される「要求集計結果」も注目度が高い。「26年春闘は前年並みの高い賃上げ」との見方が増えているが、仮にこの要求集計結果で25年を大きく上回れば、26年度の賃金動向について楽観的な見方が増え、日銀が利上げに前向きになる可能性がある一方、25年から明確に鈍化する場合には、大企業以外の賃上げモメンタムの弱さが改めて注目される可能性も。
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26年春闘では、前年並みの高い賃上げ実現を予想
2026年の春闘賃上げ率を5.45%と予測する(厚生労働省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」ベース)。25年11月14日時点で筆者は5.20%と予測していたが、その後、主要な産業別労働組合組織で前年並み、もしくは前年をやや上回る水準の賃上げ要求方針案が相次いで示されるなど、賃上げ機運が一段と強まっていることを受け、春闘賃上げ率予測を上方修正する。24年春闘では5.33%、25年春闘でも5.52%と歴史的な賃上げが実現したが、26年春闘でもほぼ25年並みの高い賃上げが実現すると予想する。
春闘においては、厚生労働省よりも公表時期が早い、連合による集計値が注目されることが多い。この連合ベースの数字では、26年の春闘賃上げ率を5.20%と予測する(25年春闘:5.25%)。こちらも25年11月14日時点の予想(4.95%)から上方修正している。連合ベースでも3年連続で5%台の賃上げが実現する公算が大きい。

組合からの要求は比較的強気
多くの産業別労働組合組織が高い賃上げ要求方針を打ち出している。25年12月11日作成のレポート(春闘の初動モメンタム・アップデート ~賃上げに前向きな動きが続く~ | 新家 義貴 | 第一生命経済研究所)では、UAゼンセン、基幹労連、JAM、全電線、私鉄総連などで高い要求方針案が打ち出されたことを述べたが、その後、自動車総連、電機連合、情報労連、運輸労連などでも比較的強気の要求方針が決定された。主要な産別ではおおむね前年並みか、前年をやや上回る水準となっている。前年より明確にトーンダウンしたケースは確認されず、賃上げ姿勢が前年から衰えている様子は窺えない。25年春闘でも賃上げは実現したものの、物価高により実質賃金が改善しなかったことに対する問題意識がいずれも強く、26年春闘では実質賃金の改善を目指すことが強調されている。
なかでも自動車総連が、賃上げ要求の目安額を「月1万2000円以上」としたことが注目される。25年春闘の「月1万2000円」から数字自体は変わっていないが、「以上」との言葉が加わり、僅かながらトーンが強まっている。自動車関連企業の要求は春闘の相場観を左右することから元々注目度が高いが、今回はとりわけトランプ関税が賃上げにどの程度ブレーキをかけるのかを見極めるうえでも、例年以上に注目度が高かった。自動車産業はトランプ関税による悪影響を最も受ける業種であり、実際に業績にも下押し圧力がかかっている。そうしたなかでも、物価高に対応するため26年も賃上げを求める姿勢の継続を示したことの意義は大きい。
こうした産業別労働組合組織の方針等も踏まえ、個別企業の労組でも賃上げ要求が次々と打ち出されている。産別が示すベースアップの目安や「実質賃金の押し上げ」という方向性が、各社交渉の土台となっており、とりわけ大企業では、それらを上回る水準を探る動きも少なくない。一方で、業績動向や事業環境によって強弱は分かれており、収益が悪化している企業などでは、前年を下回る賃上げ要求にとどめる組合も一部に見られる。もっとも、そうしたケースであっても賃上げそのものを見送るのではなく、月例賃金の維持・改善や最低賃金水準の引き上げ、非正規労働者の処遇改善といったテーマを通じて、賃上げの流れを途切れさせない姿勢が共有されている。全体としてみれば、要求水準が前年から後退する企業は少数にとどまり、前年並み、もしくは前年からやや要求を積み増す企業が多数を占めていると評価できる。

経営側は賃上げの「さらなる定着」を強調
経営側も賃上げに対して前向きな姿勢を示している。1月20日に経団連から公表された「経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」では、報告のタイトル自体が「賃金引上げの力強いモメンタムの『さらなる定着』へ」と掲げられ、賃上げを一過性の対応ではなく、経営の中核課題の一つとして継続させていく強い意志が示された。報告では、23年を賃上げの「起点」の年、24年を「加速」の年、25年を「定着」し始めた年と位置付けた上で、26年はその流れを確固たるものとする「さらなる定着」の年になるべきだと強調している。ここ数年の賃上げを例外的な上昇局面として終わらせるのではなく、「賃金は上がっていくもの」という状態を社会に根付かせることを目指すという問題意識が前面に出ている。
また、報告では、月例賃金の引き上げに関して、ベースアップの実施を検討することを賃金交渉におけるスタンダードとして位置付けるなど、賞与などの一時的な収入だけでなく、毎月の賃金水準そのものを底上げしていく姿勢が読み取れる。賃上げの継続を通じて名目賃金の上昇を定着させ、適度な物価上昇とあわせて実質賃金の安定的なプラス化を実現することが社会的にも求められているという認識も示されており、賃上げを「コスト増」ではなく、人材確保・定着や生産性向上につながる「人への投資」として捉える考え方が強調されている。
人手不足、物価高、底堅い企業業績が賃上げの背景に
高い賃上げの背景には、①深刻化する人手不足、②歴史的な物価高の継続と実質賃金減少への対応、③高水準の企業収益がある。まず①について、生産年齢人口の減少が続くなか、人手不足は一時的なものではなく構造的なものであるとの認識が広がっている。若年層を中心に転職も増加しており、企業は人材確保のための賃上げを行わざるを得ない状況だ。24、25年春闘では人手不足感の強まりが賃上げに大きく寄与し5%台の賃上げが実現したが、26年春闘でも新規採用や既存人材のつなぎ止めのための賃上げが実施される可能性が高い。
②の要因も大きい。26年春闘で交渉の材料となる25暦年の物価は、CPI総合が前年比+3.2%、CPIコアが前年比+3.1%とともに+3%台となり、24暦年(総合で同+2.7%、コアで同+2.5%)から加速した。24年、25年の春闘では「歴史的な賃上げ」が実現したが、一方で「歴史的な物価高」が進んだことから実質賃金は減少が続いており、家計は賃上げの実感を持てていない。この点への問題意識は労使ともに強く、春闘基本構想や経労委報告、産別組合の賃上げ要求等、様々な場所で言及が増えており、「実質賃金の増加」が26年春闘のキーワードとなっている。物価高に負けない賃上げは企業の社会的責務との声も強まっており、26年春闘でも物価高への配慮がみられるだろう。
③について、トランプ関税の影響により自動車関連企業の業績は下振れが目立ち、企業業績全体でみても伸びは鈍化している。一方、それ以外の業種、特に非製造業では価格転嫁の進展もあって業績は底堅く推移している。企業収益の水準も高く、労働分配率も大企業では低水準にあることから、企業の賃上げ余力は十分存在するとみて良い。
これらの点を踏まえ、26年の春闘でも5.45%の高い賃上げが実現すると予想する。
賃上げ率は前年を上回るか、下回るか
春闘日程に目を向けると、2026年春闘の集中回答日は3月18日とされており、多くの企業で労使交渉の回答が行われる。また、その結果を受けて、3月23日には連合から春闘賃上げ率の第1回回答集計結果が公表される。24年、25年の春闘では、賃上げ率が事前の予想を大幅に上回るサプライズ(特に24年)となったことから、今年もこれらの結果には大いに注目が集まる。なお、中小企業の交渉は大企業よりも遅いタイミングで実施されるが、交渉に際してこの集中回答日での賃上げ相場を参照することが多いため、中小企業の賃上げという観点からも重要だ。
注目度はこれらよりやや落ちるが、筆者が注目しているのが3月5日に連合から公表される「要求集計結果」である。これは主要労組の賃上げ要求を集計したものだ。これまでも、組合の要求水準と最終的な賃上げ率は連動することが多いことから、集中回答日に先んじて春闘の結果をある程度占うことができる。
現在、「26年春闘は前年並みの高い賃上げ」との見方が増えているが、仮にこの要求集計結果で25年を大きく上回れば、26年度の賃金動向について楽観的な見方が増え、日銀が利上げに前向きになる可能性がある。一方、25年から明確に鈍化する場合には、大企業以外の賃上げモメンタムの弱さが改めて注目される可能性もあるだろう。
新家 義貴
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 新家 義貴
しんけ よしき
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経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測
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