徹底解剖!アメリカ大統領選2024(4)

~赤い州と青い州~

前田 和馬

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Q.赤い州と青い州とは何か?

A. 共和党の支持基盤が盤石である州を「赤い州」、逆に民主党の支持者が多い州を「青い州」と呼ぶ。赤と青は各党のシンボルカラーであり、こうした色分けは2000年の大統領選以降に定着したといわれる。また、同じ州内においても都市部と郊外など地域ごとに支持政党に違いがある。

共和党支持の赤い州は保守的な傾向の強い西部山岳部や南部に多く、人口に占める白人比率が高い。一方、民主党支持である青い州は西海岸や北東部に集中しており、これらの州では移民が多く政治的にリベラルな傾向にあるほか、人口に占める大卒者の割合が多い(図表1)。

なお、こうした州ごとの区分けは時代とともに変化する。例えば、農業地域のカリフォルニアは1950~80年代にかけて赤い州の傾向が強かったものの、その後は移民流入やIT産業の勃興を背景に政治的にリベラルな青い州へと変化した。他方、アラバマやミシシッピなどの南部州は南北戦争で対立した共和党への嫌悪感が長年強かった。しかし、1960~70年代における民主党政権が公民権法の推進などでリベラル色を強める一方、逆に共和党の大統領候補(ニクソンやレーガン)が選挙戦略として白人保守層の支持獲得に注力した結果、現在では多くの南部州が赤い州として位置づけられている。

Q.赤い州と青い州と大統領選の関係性は?

A. 大統領選は「勝者総取り方式」に基づきより多くの州の選挙人を獲得することが重要であり、勝利した際の得票差や全米での得票率は重要ではない。赤い州と青い州では2大政党のどちらの候補が勝利するのかが選挙前からほぼ確定しており、どちらにも属さない「激戦州」の勝敗が大統領選の結果を左右する。 2016年及び2020年大統領選において2大政党の得票率が平均して±5%pt以上開いた州を集計すると、共和党の勝利がほぼ確実な赤い州が23州(2024年選挙人:189人)、民主党勝利が見込まれる青い州が17州とワシントンDC(計212人)となり、2024年大統領選においても全選挙人538人のうち約400人の行方は現時点でほぼ確定している(注1)。残った激戦州10州(137人)のうち、過去2回の選挙で共に共和党候補(トランプ前大統領)が勝利したのがフロリダ・ノースカロライナ(46人)、共に民主党候補(クリントン氏orバイデン大統領)が勝利したのがミネソタ・ネバダ・ニューハンプシャー(20人)、勝利した政党の候補が入れ替わった(全て共和党→民主党)のがアリゾナ・ジョージア・ミシガン・ペンシルベニア・ウィスコンシン(71人)である。 大統領候補による選挙活動は必然的にこれらの激戦州に集中する。例えば、2016年大統領選における最後1か月の選挙活動期間において、トランプ氏はフロリダに10日(クリントン氏:8日)、ペンシルバニアに7日(5日)、ノースカロライナに6日(4日)それぞれ滞在し大規模集会を実施している(注2)。また、トランプ陣営が選挙キャンペーンを実施したのは45州、クリントン陣営は37州に限られており、両候補とも選挙活動期間中にアイダホ、ワイオミング、ハワイ、アラスカには訪問をしていない。

図表1:州別の政治的傾向と人種・学歴(2022年時点)

図表1:州別の政治的傾向と人種・学歴(2022年時点)
図表1:州別の政治的傾向と人種・学歴(2022年時点)

注:2016年及び20年の大統領選において、両党候補の得票率の差が平均±5%pt以上あった州を赤い州と青い州に分類し、それ以外を激戦州と仮定。人口に占める大卒比率と白人比率(ヒスパニックを除く)は2022年時点。
出所:米センサス局より第一生命経済研究所が作成

図表2:赤い州(共和党)と青い州 (民主党)

注:2016年及び20年大統領選におけるトランプvs.民主党候補の得票率の平均差を基に色分け。ポップアップ上の括弧内数値は2024年大統領選における選挙人数。
出所:Federal Election Commissionより第一生命経済研究所が作成

【注釈】

1)2020年大統領選挙の結果に基づき、メーンは全4人の選挙人のうち3人が民主党候補、1人は共和党候補、ネブラスカは全5人のうち4人が共和党候補、1人は民主党候補がそれぞれ獲得すると仮定。

2)Hillary Clinton's and Donald Trump's Campaigns by the Numbers - ABC News (go.com)

以上

前田 和馬


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前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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