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2022.07.13
アジア経済
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ウクライナ問題
ニュージーランド中銀、金融引き締めの継続をあらためて強調
~「タカ派度合い」がNZドルの対米ドル相場の重石となる一方、日本円に対しては底堅い展開が続こう~
西濵 徹
- 要旨
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- 世界経済は欧米などを中心にコロナ禍からの回復が続く一方、中国の「ゼロ・コロナ」戦略が足かせとなる展開が続く。一方、ウクライナ問題による供給不安は幅広い商品高を通じて世界的なインフレを招き、米FRBなど主要国中銀はタカ派傾斜を強める。ニュージーランド経済は外需に不透明感も、物価高にも拘らず雇用改善が内需を下支えする展開が続く。他方、昨年後半以降は不動産高騰も影響して金融引き締めを進めており、足下では不動産市況に頭打ちの兆候が出る一方、物価高と為替安のリスクがくすぶり、中銀は13日の定例会合で6会合連続の利上げを決定した。現状は5月会合時点の見通しに沿った追加利上げを模索する姿勢を維持したが、景気の頭打ちを示唆する動きがみられるなかで先行きは利上げ幅の縮小も予想される。タカ派度合いの差を理由にNZドルは米ドルに対して調整が進むが、当面も上値の重い展開が続く一方、日本円に対しては底堅い推移が続くと見込まれる。
このところの世界経済を巡っては、欧米など主要国を中心にコロナ禍からの回復が続く一方、中国では当局の『ゼロ・コロナ』戦略への拘泥が経済活動の足を引っ張るとともに、サプライチェーンの混乱は中国経済と関係が深い新興国や資源国景気の足かせとなるなど、好悪双方の材料が混在する動きがみられる。昨年以降における世界経済の回復は原油をはじめとする商品市況の底入れを促したほか、ウクライナ情勢の悪化やそれを受けた欧米などの対ロ制裁強化による供給不安も重なり、足下では幅広く商品市況は上振れするなど、世界的にインフレ圧力が強まっている。これを受けて、米FRB(連邦準備制度理事会)など主要国中銀はタカ派傾斜を強めており、国際金融市場ではコロナ禍対応を目的とする全世界的な金融緩和による『カネ余り』の手仕舞いが進んでいる。さらに、こうした金融市場の環境変化は世界的なマネーフローを変化させており、なかでも経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が脆弱な新興国に資金流出の動きが集中する傾向がある。年明け以降のニュージーランドを巡っては、感染力の強いオミクロン株の流入による新規陽性者数の再拡大のほか、物価上昇の悪影響が懸念されたものの、雇用の改善を追い風に家計消費など内需は堅調な推移をみせる一方、最大の輸出相手である中国の景気減速が街区の重石となる動きが確認された(注1)。他方、幅広い国際商品市況の上振れや内需の堅調さに加え、金融市場における資金流出を反映して通貨NZドル安による輸入物価の押し上げも重なり、1-3月のインフレ率は30年超ぶりの水準に加速し、コアインフレ率も過去に遡って最も高い伸びとなり、ともに中銀(NZ準備銀行)の定めるインフレ目標を大きく上回る水準で推移している。同国ではコロナ禍対応を目的に財政及び金融政策の総動員による景気下支えが図られたが、景気回復が進む一方で金融市場のカネ余りを追い風に不動産市況が上昇してバブルが懸念されるなど『副作用』が顕在化したため、中銀は昨年後半以降量的緩和政策の縮小に動き、その後も断続的な利上げに加えて利上げ幅を拡大させるなどタカ派姿勢を強めてきた(注2)。なお、同国の感染動向を巡っては3月上旬を境に一旦は頭打ちする動きがみられるも、足下では再び底打ちするなど感染収束にはほど遠い状況が続いているものの、同国政府はワクチン接種の進展を理由に経済活動の正常化を図る『ウィズ・コロナ』戦略が維持されている。よって、感染動向の悪化懸念にも拘らず人の移動は緩やかな拡大が続いており、企業マインドは頭打ちする動きをみせるも引き続き好不況の分かれ目となる水準を上回る推移が続いていることを勘案すれば、景気は緩やかな拡大が続いていると判断出来る。他方、昨年以降における断続的な利上げ実施に加え、不動産市況の高騰に対応したローン審査の厳格化や税制改革などを受けて、足下の不動産価格は頭打ちに転じるなど不動産市場を取り巻く状況は変化しつつある。ただし、上述のように足下のインフレは昂進が続いている上、金融市場におけるNZドル安は輸入物価を通じたインフレ増幅を招く懸念があるなか、中銀は13日の定例会合において6会合連続で引き上げるとともに、利上げ幅も3会合連続の50bpとし、政策金利(オフィシャル・キャッシュ・レート)は2.50%と2015年11月以来の水準となる。会合後に公表された声明文では、政策運営について「金融引き締めの継続」とするとともに、今回の決定について「物価安定を維持するとともに持続可能な雇用の最大化を支えるペースで金融引き締めを継続することが依然として適切」との見解を示した。その上で、世界経済について「成長ペースが鈍化している」一方、同国経済について「高い雇用や家計部門のバランスシートの改善、継続的な財政支援、好調な交易条件が家計消費を支えている」一方で「労働力と資源不足が物価上昇を招いている」との見方を示した。また、物価動向について「短期的な上振れリスクがある」一方で経済活動に「中期的な下振れリスクがある」としつつ、先行きの金融政策について「5月会合時点での想定に不安定さをもたらすことはない」との見方を示すなど、政策金利を年末までに3.5%、来年半ばまでに4%前後まで引き上げるとの見通しを維持している模様である。ただし、足下の経済指標については景気の頭打ちを示唆する兆候がうかがえることを勘案すれば、先行きは利上げを維持するも、そのペースは徐々に縮小を余儀なくされる可能性が高まっていると判断出来る。金融市場においては『タカ派度合い』の問題からNZドルは米ドルに対して調整する動きが続いている一方、日本円に対しては底堅い動きをみせているが、当面のNZドル相場については米ドルに対しては上値が重く、日本円に対しては底堅い展開が続くと見込まれる。


注1 6月16日付レポート「ニュージーランド、景気は予想外に躓くも内需の堅調な推移を確認」
注2 5月25日付レポート「ニュージーランド中銀、「より大きく、より早い」金融引き締めを示唆」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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