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- 我が国の研究費は過去最高23.8兆円へ
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1. 2024年度研究費は過去最高23.8兆円~しかし政府目標到達は困難~
総務省が2025年12月に公表した「科学技術研究調査」の最新版によれば、我が国の2024年度の研究費は23.8兆円となり、3年連続で20兆円を超え、4年連続で過去最高額を更新した。

資料1の左図をみると、研究費は2020年度までその伸びは緩慢であったが、2021年度から増加傾向となった。2021年度から2024年度までのCAGR(年平均増加率)は6.5%となった。同右の機関別の研究費の割合の推移をみると、「企業」および「非営利・公的」の割合の増加が認められる。一方、「大学」の研究費の割合は2021年度から減少しており、大学の研究費が伸び悩んでいることがわかる。
2021年に第6期科学技術イノベーション基本計画(以下、基本計画 注1)が閣議決定されたことを背景に、研究費(総額)は、2021年以降足元まで、一見、順調に伸びているように見える。しかし基本計画は、2021年度から2025年度までの5年間で官民併せて120兆円(官:30兆円、民:90兆円)を投資目標額としているところ、2024年度までの累計実績は86兆円に留まる。つまり、目標達成には、2025年度に34兆円と、最高額の24年度23.8兆円の1.4倍の規模が必要であり、達成は困難であろう。足元の順調な伸びはあっても、目標には届かないというのが現実だろう。
2. 大企業での研究開発が伸び悩んでいる
基本計画では、「企業」の研究費についても目標が置かれている(資料2)。

2021年度まで、企業の研究費は約14兆円程度で横ばいであったが、2022年度以降毎年12%の増加により、2021年以降2025年までで合計90兆円とするという目標である。
一方、実際の企業の研究費の推移を資本金規模別にみたものが資料3である。

企業の研究費は、2021年度の14.2兆円から2024年度では17.4兆円まで増加した。しかし、この増加のCAGRは7%であり、目標の12%には大きく足りない。結果、2021年~2024年度までの合計は62.9兆円に留まり、目標達成には、2025年度27.1兆円規模の研究費が必要となる。これも現実的でなく、基本計画には届かないということになる。
資本金規模別にその割合の推移をみると、資本金10億円以上の大企業が研究費の大宗を占めるが、その割合は2011年度で9割以上であったものが、2024年度で86%程度と低下傾向にある。やはり、研究費の総額を大きく伸ばすには、大企業での研究を活性化させることが必要であろう。
3. 研究費は自動車一強が鮮明に~輸送用機械への集中進む~
資料4は、資本金10億円以上の大企業での、2014年度と2024年度の産業別(注2)の研究費の使用状況を比較したものである。研究費は製造業で総額の9割近くが使われている状況である。そこで製造業での両年度の上位10産業の状況を示し、10産業以外は「製造業その他」、製造業以外は「その他の産業」として括った。

まず、ここ10年で製造業内での上位10産業の構成に違いはない。その中で、ここ10年間で著しく研究費を伸ばしたのは、輸送用機械器具製造業、即ち、主として自動車産業であることがわかる。2014年度から2024年度にかけての研究費の伸びは全産業で2.8兆円、製造業で2.5兆円である。輸送用機械器具製造業は2.3兆円増加しており、その伸びは全産業の8割強、製造業の9割強の割合である。逆にいえば、他の製造業を含むその他の産業の研究費は伸び悩んでいるということで、輸送用機械器具製造業に研究費が集中したということになる。確かに輸送用機械器具製造業の中核である自動車産業では、ここ数年でEV化、自動運転等の進展などの大きな変化があり、それに対応するための研究費が増大したということだろう。しかし、他の産業もこの十年でDX、GX化に伴う研究開発が進んでもおかしくはなかったはずである。自動車分野以外でも研究開発を如何に進めていくか。ここに我が国の重要な課題があるといえる。
4. 第7期科学技術イノベーション基本計画への示唆
高市政権は、今般、重点投資対象17分野(注3)を示し、減税措置等を講じてこれら分野での民間投資の後押しをしようとしている。確かにこれらの分野は、今後の我が国において非常に重要な分野であることに間違いはなく、研究開発が進む意義は大きい。しかし、熊野(2025)も指摘しているように、この17分野以外にも重要な分野はあるとも考えられる。
近く策定される第7期科学技術イノベーション基本計画では、重点17分野に加え、DXやサービス産業など新たな成長分野への研究開発支援をどう拡げるかが焦点となろう。偏在から多様化への転換が問われている。
【注釈】
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科学技術イノベーション基本計画は5年毎に改訂される。したがって、2026年に第7期計画が策定される。
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この産業区分は、「科学技術研究調査」で用いられているもので、一般の産業区分(中区分)と若干異なっている(一般の中区分にはない、医薬製造業などが入っている)。
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重点17分野は次のとおり。AI・半導体、造船、量子、バイオ、航空・宇宙、デジタル・情報安全、コンテンツ、フードテック、資源エネルギーGX、防災・国土強靱化、創薬・先端医療、核融合、重要鉱物、港湾ロジスティクス、防衛、情報通信、海洋。
【参考文献】
- 熊野英生(2025) 「日本成長戦略を吟味する~17分野の選定はこれでよいのか?~」
河谷 善夫
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

